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宇宙関係の趣味記事をたまに書きます

宙へ、願い届けて H-IIAロケット48号機 打ち上げ見学旅行記(3)

 

新潟在住の社会人宇宙ファンがH-IIAロケット48号機の打ち上げを見に種子島へ行ってきたお話。

 

旅行記(1)はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

旅行記(2)はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

 


宙へ、願い届けて

H-IIAロケット 48号機 打ち上げ見学旅行記(3)


 

前回のあらすじ

1月11日(木)、翌日の打ち上げを前に種子島へ上陸。
打ち上げ見学場(長谷・宇宙ヶ丘)の下見をし、種子島宇宙センターのショップでH-IIAロケット48号機のグッズを購入しました。

 

今夜はH-IIAロケット48号機の機体移動見学&撮影します。私にとって2018年2月のH-IIAロケット38号機以来、6年ぶりのH-IIAロケットとの対面がはじまります。

 


機体移動を見よう! 打ち上げ1日前(2024年1月11日)


 

機体移動見学&撮影の候補地の1つ、竹崎射点へ行ってみると、そこにあったのは「これより先立入禁止」の看板でした。

 

この向こうに見学できるスペースがあるのだが…
6年前は難なく立ち入れたはず。状況が変わっておりしばし困惑。

左側にあるクレーン風の構造物はTR-1Aロケットのランチャー

 

後で知りましたが、どうも機体移動の数時間前になれば写真右端の通路が解放されて奥の見学スペースへ行けるようでした。普段立ち入り禁止なのはランチャーが潮風で錆びていて危険だからでしょうね。

竹崎射点から機体移動は見られそうである。とはいえ竹崎射点からの機体移動撮影はH-IIA 38号機で実施済みなので、今回は別のところにしよう。

 

ということで「ロケットの丘」へ。

種子島宇宙センターの敷地内にあるここは文字通り、ロケットを見渡せる小高い丘にある。良い眺めだ。よし、機体移動はここから撮ろう。

 

と、ここで見知らぬ誰かさんから声をかけられた。「機体移動は何時からありますか?」と。良い質問ですね。

「だいたい打ち上げの13時間から15時間前なので、23時ごろだと思います。」と伝える。機体移動に興味があるらしい。感謝の言葉が心に沁みる。伝えた情報が役立てばうれしいな。

 

案内ボードの比較。よく見るとH-IIBロケットの絵がH3ロケットに変わっている

左:2018年2月   右:2024年1月

 

私は趣味で宇宙機を擬人化しているので、種子島から旅立った宇宙機がこの美しい発射場を背景に記念撮影を撮るところを想像しちゃいます。

この後は中型射点まで行ってみた。さて機体移動までまだ6時間以上ある。

 

機体移動の時刻だが、前述のとおりおおよそ打ち上げ13~15時間前である。ただし例外もあり、商業衛星の打ち上げや探査機の打ち上げの場合、宇宙機側の都合で数時間前倒しになる可能性がある。

48号機の打ち上げは13時44分26秒なので、機体移動の予想時刻は22時44分~0時44分となる。ちなみに38号機の"打ち上げ時刻"は48号機とほぼ同じ(13:30すぎ)で、機体移動は23時30分スタートだった。今回も同じ時刻になると考えられる。

と思いきや、Twitter(現X)のフォロワーさんから「39号機(※13:20打ち上げ)の時は23時に機体移動があったよ」と教えてもらう。早まる可能性もありそうだ

 

余裕を持って、22時前にカメラをセットすることにしよう。
機体移動、そして明日に備えて一度南種子町ファミマへ行き、当座の食料と飲み物を買う。

「↑上空100km 宇宙」 南種子町の1コマ

 

さて、明日の打ち上げ撮影について考える。一筋縄ではいかないな、と思った。

私は新幹線撮影も趣味である。
高速で走り去る新幹線を撮影するときは、お目当ての新幹線、例えばALFA-Xを撮る前には同じ線路を走るE5系撮影の練習をしたり、撮影設定を確認したりしていたものだった。

 

左:練習のE5系。          右:本番のALFA-X!

 

だが明日の相手は違う。


打ち上げは1回だけ。撮影設定がおかしくてもやり直しはできない。有休を取って交通機関を予約し、少なくないお金をかけてここまでやってきて、本番1発勝負。

私はなんてものを撮ろうとしているんだろう…。

 

そんなことを考えながら、機体移動の時間まで光学8号機擬人化イラストの最終仕上げを行った。イラストが完成したのは日没から数時間も経った20時49分。

 

車の外へ出て一息つく。空を見上げると、夜空に満天の星が浮かんでいた。
驚いたことに、オリオン座の明るい星々の周りに小さな無数の光が輝いている。星ってこんなにたくさんあったんだね。

 

ロケットの丘からVABと射点を眺めていると、日中にロケットの丘で会った見知らぬ誰かさんと再会。なんと!一緒に星空を見上げて談笑する。旅先で見ず知らずの人と談笑するの大好き。
その方は東京から、私は新潟から来た。どちらも種子島から遠く離れたところから同じ地にきている事実がなんだか不思議だ。新幹線から見る富士山、私も好きです。

九州の北の方から来た子供連れとも談笑し、気が付けば時刻は22時前。

 

21時49分 三脚にカメラをセットし、撮影体制へ。ここ数年は新幹線ばかり撮っていたカメラだが、今回は違う。宇宙へ行く乗り物を撮るのだ。

ビデオカメラと一眼レフカメラ(EOS90D)

38号機の時は小さな一眼レフカメラ1台だけだったけど、今回は一回り大きい一眼レフカメラに2kgもある望遠レンズを装着しているし、ビデオカメラもある。成長を実感して嬉しい。

 

周りを見ると、写真館みたいなごっつい一眼レフカメラやら、ケーブルテレビが持ってそうなデカいテレビカメラやら、長砲身レンズをつけたミラーレスカメラなどがずらり並んでいた。新幹線撮影でもこんな光景みたことないぞ!

 

ここで機体移動(夜)の注意事項を。

種子島宇宙センターの敷地に街灯はほぼありません。
★見学スポットの駐車場に限り、機体移動の数時間前に職員が照明を設置します。
★路上駐車は厳禁です。
★見学スポットも暗いため、機材の運搬や撮影・見学の際は周りに注意しましょう。
★職員の指示に従い、安全に機体移動を楽しみましょう。

 

21時56分、カメラでVAB(大型ロケット組立棟)を撮影。既にVABの扉は開いているみたいだ。

ロケットの丘から EOS90D 221mm F5.6 1.0s ISO400

 

正直この時まで、H-IIAロケットがあのVABの中にいるとは認識していなかった。でも扉が開いているということは、あの中にいるはH-IIAロケットがいて、これから出てくるということ。 緊張してきた。

 

22時30分 VABの方角から「ただいまより機体移動を開始します」との放送が聞こえた。いよいよだ。

ちなみに機体移動は約25分かかる。

 

ここからはロケットの写真を設定付きで公開します。特筆ない限りトリミングは無し。カメラのセンサはAPS-Cサイズ。焦点距離の換算はしていませんのでご注意ください。

22:30 ロケットの丘から EOS90D 361mm F5.6 1/3s ISO2500

移動発射台が現れた。発射台には「H-IIA F48」の文字。F38じゃないぞ、F48だ。本物だ!!

 

22:32 ロケットの丘から EOS90D 361mm F5.6 1/4s ISO800

H-IIAロケットキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 

VAB内の明かりに照らされ、ロケットが静かにゆっくりと移動してゆく。まるでエヴァの世界だ!!

 

22:34 ロケットの丘から EOS90D 361mm F5.6 1/4s ISO800

 

おおお・・・


ホワイトバランスを手動から自動に切り替え、撮影を続ける。肉眼だとややオレンジがかって見えるのだが、フェアリングの色がちゃんと白い方がロケットとしては美しい。

なお二段目の燃料タンク(白いフェアリングと黒い段間部の間)はオレンジ色だ。

 

ロケットがVABから出だ後の数分間はVABの明かりに照らされているため、撮影しやすい。

だがVABから離れるにつれてロケットは暗くなっていき、撮影が困難となる。シャッター速度を遅くしたいがロケットはゆっくりとはいえ動いているので難しい。ISO感度を上げつつ撮影を続ける。

 

22:37 ロケットの丘から EOS90D 347mm F5.6 1/4s ISO5000

 

暗闇を纏うH-IIAロケット。美しい…

 

それにしても、カメラの性能の高さも相まって良く撮れている。

左:38号機(KissX5 F5.6  0.6s 214mm ISO3200) 右:48号機(90D F5.6 1/4s 347mm ISO5000)

 

38号機の時と比べて違いは一目瞭然だ。ちなみに38/48号機は積み荷が情報収集衛星ということもあり、ロケットはミッションデカールのないシンプルなデザインをしている。

 

22:41 ロケットの丘から EOS90D 347mm F5.6 1/8s ISO8000

 

機体移動開始から10分~15分の間はロケットはうんと暗くなってしまう。シャッター速度とISO感度を変えつつ撮影。

 

22:46 ロケットの丘から EOS90D 347mm F5.6 1/8s ISO3200

 

第2射点を過ぎてH-IIA用の第1射点に近づくと、また明るく照らされる
※↑ 22:46の画像の左端にある赤いライトが第2射点で、右に見える赤白の鉄塔が第1射点。

 

22:48 ロケットの丘から EOS90D 347mm F6.3 1/8s ISO800

 

22:52 ロケットの丘から EOS90D 403mm F6.3 1/8s ISO800

 

22:52、H-IIAロケットは射点に到着。経過時間は22分。意外と早い!
ロケットの丘からみるとH-IIAロケットは紅白の多目的鉄塔に隠れてしまう。後で別の場所でも撮ろう。

 

しばし撮影した写真を見返す。好きなロケットの本物を撮影でき、とても嬉しい。

Twitterに上げた写真は多くの人に見てもらえたのでさらに嬉しい!

 

一緒に星空を見上げた見学者の方々とお別れし、私は竹崎射点へ。

 

竹崎射点へ行くと、ランチャーの右側の通路が解放されている。宇宙センターの職員が照明で照らしくれているおかげで、闇夜でも安全にアクセスできる。

 

23:27 竹崎射点から EOS90D 600mm F6.3 1/60s ISO4000

 

大望遠の600mmで撮影。この日は風がクッソ強く、シャッター速度を遅くするとブレてしまうのでやむなくシャッター速度を上げてISO感度を犠牲にした。それでもいい写真が撮れた。

 

待って、三菱重工まで読める!スリーダイヤもクッキリ、F48の8だけ色が違うのも分かる!8だけ変えたんだね!良い写真が撮れたものだ。

 

せっかくなので38号機の写真と比較。

左:38号機(EOS KissX5 トリミング済み)  右:48号機(EOS 90D トリミングなし)

 

48号機のほうがクッキリ鮮明に撮れている。2kgもする望遠レンズを持ってきて良かった。

 

 

このロケットの先端、白いフェアリングの中に光学8号機がいる。

打ち上げは明日だ。

 

さて、長谷展望公園で車中泊する前に、上里地区でも撮影を敢行する。ここはロケットをほぼ正面から撮れるスポット。ロケット撮影ファンならここを撮らずして夜は越せんよな。

 

左:EOS90D 150mm F5.6 1/8s ISO640  右:EOS 90D 600mm F6.3 1/8s ISO640

上里地区から H-IIAロケット 48号機

 

H-IIAロケット 48号機 2024/1/12 0:16」(トリミング・微修正後)

 

H-IIA」と「NIPPON」の文字がちゃんと読める。素晴らしい。感無量だ。
このために種子島へ来たと言っても過言ではない。

 

長谷展望公園の駐車場に車を停め、寝袋に入る。

 

さあ、明日は打ち上げだ。願いはただ一つ。光学8号機が無事に宇宙へたどり着く事。

 

 

 

次回、「打ち上げを見よう」

sado-kouta.hatenablog.com

 

宙へ、願い届けて H-IIAロケット48号機 打ち上げ見学旅行記(2)

 

前回はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

 

新潟在住の社会人がH-IIAロケット48号機の打ち上げを見に種子島へ行ってきたお話。

 


宙へ、願い届けて

H-IIAロケット 48号機 打ち上げ見学旅行記(2)


 

前回はロケットの打ち上げスケジュールを確認し、旅の準備を進めたところまでを書き連ねました。

勤め先の予定と新潟空港の天候によっては行く前に旅を断念する可能性もありましたが、なんとかなりました。

 

打ち上げ見学旅行、GOします。

 


鹿児島へ行こう! 打ち上げ2日前(2024年1月10日)


 

1月10日(水)、いつもどおりお勤め先で仕事をする。今から24時間後には種子島にいるというのに、その実感は湧かなかった。

定時まで仕事をしたのち、今日中に鹿児島へ移動する。なお、新潟→鹿児島の直行便はない。

 

まずは新潟空港19:20発のIBX88便で福岡空港へ行く。

チェックインカウンターで「本日は空いておりますので窓側の席に移動できます」との提案があったので席を窓側にしてもらった。ラッキー!

 

手荷物を預けた後はラウンジで飲み物でも飲もうと思ったのだが、ラウンジの受付が18:30まででギリ間に合わず、断念。IBX88便は新潟空港の最終便。ラウンジが閉まるのも無理もない。

気を取り直していざ九州へ。CRJ700はふわりと飛び立った。

機内から新潟市中心部を撮影。夜のフライトは夜景が美しい

 

フライト時間は130分とまあまあ長いので、年末からせっせこ描き進めていた光学8号機の擬人化イラストの色塗りを行った


太陽電池パドルを塗る図

 

宇宙機擬人化にとって太陽電池パドルは天使の羽だと思う。

 

定刻より14分早く、CRJ700の翼は福岡空港に舞い降りた。Suicaで地下鉄に乗り、博多駅へ。博多駅から22:01発のさくら571号に乗る。


E4系Maxときデザインのパスケース。

九州新幹線さくら571号はN700系8両編成。この系列は発車時の加速度(起動加速度)が飛びぬけて高く(2.6km/h/s)、JR東日本の新幹線(~1.71km/h/s)にはない「座席に押し付けられる感覚」を味わうことができた。

 

九州新幹線の車内でJR九州の社歌である「浪漫鉄道」を聴く。一度やってみたかった。
♪~ 夢の列車がひた走る 人それぞれの 願いを載せて

 

www.nicovideo.jp

23時25分、鹿児島中央駅に到着。漆黒に浮かぶ観覧車とヤシの木が出迎えてくれた。

この日は鹿児島市内で一泊。明日は始発の高速船で種子島へ渡る。

 


種子島へ行こう! 打ち上げ1日前(2024年1月11日)


 

朝。食パンをオレンジジュースで流し込み、いざ出発。

高速船ターミナルへの道中、あかつきの空に金星が浮かんでいました。

高速船ターミナルの三角屋根と金星(右上)

 

東の空に見える金星、明けの明星というやつです。
天気晴朗。絶好の種子島日和になりそうだ。

 

トッピー3と桜島 山頂の右側に噴煙が見える

ターミナルの受付で予約番号を伝え、チケットを発行。席の希望を聞かれたので、2階席の窓側にしてもらった。眺めがいいといいな。

 

思えば、最後の船旅は(軍港巡り等を除けば)2018年9月のH2Bロケット7号機見学の帰路でした。
この時は打ち上げ数時間前にロケットに異常が見つかり、打ち上げは中止に。失意の極みの帰りでした。あれから5年半も経ったのか…

 

7:30 トッピー3出港。鹿児島湾内を時速80kmで飛ばします。波もなくおだやかで快適な船旅…と思っていましたが、湾外に出たとたんに波が。揺られる。

 

やばい、気分が悪くなってきた…

 

5年半ぶりの船旅なので、酔い止めを買っておくなんてアタマはなく、こともあろうに乗船前にオレンジジュースを飲む体たらく。完全に油断してました。

(説明しよう!オレンジジュースなどの柑橘系飲料は胃酸の分泌を促進させ、乗り物酔いを加速させるのである。みんなは間違っても乗船前にオレンジジュースを飲まないように!)

 

幸い窓の外に西之表港赤い灯台が見えました。陸だ!
空と同じくらい青い顔をして種子島に上陸。やれやれ

 

桟橋を進むとレンタカーの看板を持った方々が並んでいたので、そこから自分が予約したレンタカーの看板を見つけ、担当者から鍵を受領。書類に免許証番号を書いたり支払いをしたりして、無事レンタカーにありつけました。

 

せっかくなので港の周りを歩き、ロケットのモニュメントを撮影。

左:2018年2月撮影      右:2024年1月撮影

来たよ。

また、ここに。

 

この時の感情は言葉に言い表せません。懐かしさと高揚感が混ぜこぜになった感じ。
酔いもすっかり醒めました。

 

さて本日の目的は ①ロケット撮影場所の下見 ②機体移動見学 の2つ。

早速、①ロケット撮影場所の下見として

・長谷展望公園 (射点から6.3km)

・宇宙ヶ丘公園 (射点から7.1km)

へ行きます。

 

ロケット見学場の中には射点に一番近い(3.0km)「恵美之江公園」もあるのですが、38号機で下見&見学済みなので今回はパス。

 

恵美之江の様子はこちらを見てね。

sado-kouta.hatenablog.com

 

あと今回、私は長谷展望公園でH-IIA F48の打ち上げを撮影します。理由は3つ。

①前回(H-IIA F38/恵美之江)とは違ったアングルから撮影したい

②恵美之江は事前抽選制で見られるかわからない

③大勢の観客と歓声を楽しみたい(長谷が一番大勢で見られる)

 

数少ないH-IIAの撮影機会を前回と同じアングルで撮るのはもったいない。H-IIAのいろんな表情を収めたいのと、打ち上げ見学場の中で最も多くの観客が訪れる長谷展望公園で、みんなで打ち上げを楽しみたい。

 

そんな想いがあり、今回は長谷に決めた。

 

車を走らせ、種子島の南北の港を結ぶ二桁国道の58号線を南へ。ちなみに二桁国道は58号線が最後で、59~99号(100号線も)は欠番
最後の二桁国道を走っていると考えると、ずいぶん遠くまで来た気がします。

 

長谷展望公園への道中、西の沖合にピンク色の船が見えました。
望遠レンズの試写を兼ねて撮影。

あれは密航船…もとい、鹿児島~種子島屋久島を結ぶカーフェリーの「はいびすかす」でした。

きっとあの船には種子島で打ち上げを見ようとする酔狂な旅行者が乗っていることでしょう。
それにしても…貨物船みたいな、というか元貨物船の見た目が旅心を誘う。いつか乗ってみたいものだ。

 

そんなこんなで長谷展望公園に到着。やっぱり広い!公園の向こうには宇宙センターが見える。

本来であれば1月11日の今日打ち上がるはずだったのだが、今はだれもおらず。
雲一つない青空も相まって、なんだか寂しい明日(打ち上げ日)の天気は曇りの予報だからなおさらね。

 

生垣近くの芝生に三脚を立てる。一眼レフカメラに望遠レンズ(150-600mm)をセットし、射点を撮影。

長谷展望公園から射点方向を望む

左:APS-C 150mm 右:APS-C 600mm どちらもトリミング無し

 

ああ、VAB(白い四角い建物)がある。VABを見て、やっと種子島に来た実感が湧いた。
ここは宇宙への玄関口。数々の宇宙機が旅立った場所。

 

明日、情報収集衛星 光学8号機も此処から・・・

 

感傷に浸りつつ撮影画像を見る。…600mmのズーム力すごいな!!
150mmでも打ち上げ撮影には十分なくらいなのだが、600mmだと紅白の鉄塔までハッキリと写る。
これなら十分、H-IIAの雄姿を撮れそうだ。機体に書かれた「NIPPON」の文字まで読めたりして?

 

期待を胸にお次は宇宙ヶ丘公園へ。H-IIA 38号機で下見した時は雨で視界が超絶悪かったので、晴れの時にここに来たかったのだ。


宇宙ヶ丘公園から射点方向を望む (APS-C 135mm)

 


宇宙ヶ丘公園から見えるテレメータ設備

 

あたたかな日差しを浴びながらシャッターを切る。現実離れした、まるで夢のような光景だ。

つい24時間前は雲と雪の里(新潟)にいたのだ。それが今や海と青空の島にいる。頭と身体がやっと理解してきたよ。

 

さて打ち上げ見学場の下見はできたので、次にH-IIA 48号機のグッズ探しといこう。ミュージアムショップのある種子島宇宙センター「宇宙科学技術館へ移動開始。

 

宇宙センターへの道中、町のあちこちに「打ち上げ成功祈願」の看板やのぼりがが立っていた。

打ち上げ成功を願っているよ、私も!

H-IIAロケット48号機には、私にとっても特別な、大事な衛星が載っているのだから。
光学6号機の待つ宇宙へ、無事に光学8号機が辿りついてほしい。そう願わずにはいられない。

 

南種子町にて。街の人の暖かい心遣いに胸が熱くなる。


宇宙ヶ丘公園から15分ほどで種子島宇宙センター(TNSC)へ。TNSCには守衛とか駐車証とかそういうのはないので、そのまま敷地内を走って駐車場へ。

 

宇宙科学技術館に到着。受付で名前を書き早速ミュージアムショップへ直行。

あった!グッズだ!

H-IIA 48号機のTシャツとピンバッジ!


さて、買うべきだろうか?
今ここで買ったとしても、明日打ち上げを見られるかは分からない。

 

H-IIB 7号機みたいに打ち上げ数時間前に中止になるかもしれないし(実体験)、

H-IIA 47号機みたいに打ち上げ26分前に強風で中止になるかもしれないし、

H3試験機1号機のようにメインエンジンが点火しても打ち上がらないかもしれないんだ!!

中止になった時の悲しみは計り知れない。

 

買いました。

打ち上げ後に買いに来て売り切れになっていたら悲しいし、なにより光学8号機の擬人化ちゃんイラストまで準備してきたのだ。覚悟決めろ.

 

その後、宇宙科学技術館のメッセージボードに打ち上げ成功祈願のメッセージを書いた。

「祈成功 H-IIA F48 IGS K8」

IGS K8:情報収集衛星(Information Gathering Satellite)光学8号機の略称。

 

「光学8号機が無事に宇宙へ行く」。これこそが私の願い。宙の向こうに届きますように。

 

そのあとは宇宙科学技術館を駆け足で見て回った。日が出ているうちに機体移動の見学場所の下見をしたいからね。

そう、今夜H-IIAロケットの機体移動がある。
もし打ち上げが延期になっていなかったら、私は機体移動を見ることはできなかった。機体移動の時間帯は新幹線に乗っていたことだろう。延期のおかげで得られた機体移動見学の機会、絶対無駄にはできない!

前回のH-IIA38号機の機体移動は竹崎のロケットランチャー付近(竹崎射点)から見た。今回もそこで見ようかと考えましたが、前回と同じ視点と言うのはやはり勿体ないと感じ、別の場所にすることに決定。

 

とはいえ竹崎射点も下見しておきましょうか。
竹崎射点へ向かう道には駐車場を示す看板もアリ。機体移動見学の定番スポット感が漂います。

6年ぶりの竹崎射点へ、行くぞーー!

 

地図上部の「見学・撮影ポイント」へ向かう

地図はH-IIA 38号機 打ち上げ見学旅行記(3)より抜粋

 

さあ見学・撮影スポットへ向かうと

 

 

「これより先 立入禁止」

 

…閉ざされている!?

 

次回、「機体移動を見よう」

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宙へ、願い届けて H-IIAロケット48号機 打ち上げ見学旅行記(1)

みなさまこんにちは。やまごんです。

 

先日、私はH-IIAロケット48号機の打ち上げを見に種子島へ行ってきました。

その時の体験と写真が何かの役に立てばと思い、旅行記にまとめました。

私の経験や打ち上げ見学&撮影のお役立ち情報をいくつも盛り込んでいますので、種子島で打ち上げを見たいと考えている方々の参考になれば幸いです。

 


宙へ、願い届けて

H-IIAロケット 48号機 打ち上げ見学旅行記(1)


 

前提条件

今回の旅は次のような特徴があります。
・3度目の種子島旅行
・4泊4日の社会人一人旅
・旅の起点&終点は新潟
・主目的は「H-IIAロケットの撮影」
種子島でレンタカー使用
・宿なし、寝袋あり、車中泊

まず、種子島に行くのはこれが3度目となります。打ち上げを見られたのは1度目のH-IIA38号機のみで、2度目(H-IIB 7号機)は打ち上げの1週間延期で見られず仕舞い。1度目で得た経験をフル活用して旅支度および行動をします。

 

打ち上げ予定日が木曜日でしたので、木曜・金曜に有休を取り、水曜日夜に行動開始。木~日の4日間が行動日で、打ち上げ延期に備えた予備日は金・土・日の3日間を設定。

 

新潟から出発し、撮影用のカメラ機材を抱えて種子島へ。スーツケースの中身の半分がカメラ用機材でした。島ではレンタカーを借りて行動しますが、宿はありません。種子島は新潟と比べたら天国みたいに暖かいので、冬でも車中泊で夜を越せるため。

 

以上を踏まえた上で旅行記を参考にしてくださいね。

 


打ち上げ4ヶ月前(2023年9月)


 

私は思った。

H-IIAロケットを撮りたい」

と。

 

私は12年来の宇宙開発ファンである。宇宙機が特に好きだが、ロケットも好き。中でもH-IIAロケットは私の大好きなロケットの1つ。
しずく、はやぶさ2、Telstar 12 VANTAGE、ひとみ、つばめ etc.
H-IIAはいくつもの名宇宙機を宇宙へ送り出してくれた。そして私はその光景をネット中継で何度も見てきた。

 

私は1度だけ、種子島H-IIAの打ち上げを見たことがある。2018年2月。…もう6年も前のことだ。私はH-IIAロケット38号機が青空に吸い込まれていくのを現地で見て、感じて、撮影した。

 

その時の見学旅行記はコチラに詳細を載せています。ぜひご覧ください。

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その時撮った写真がこちら。

H-IIAロケット38号機の打ち上げ 2018年2月27日、恵美之江展望公園から

あれから5年が経った。

今、私の手元には5年前には無かった高性能のカメラ・三脚がある。
これでもう一度、もう一度だけでいい。H-IIAの雄姿を写真に収めたい。

 

思いと共に焦りも募る。というのも、H-IIAの引退まであと1年しかないのだ。

なぜあと1年だと分かるのか。
実は内閣府が公開している「宇宙基本計画工程表」にロケットの打ち上げスケジュールが書かれており、H-IIAの運用が2024年度で終了することが見てとれるのだ。

宇宙基本計画工程表 (令和5年度改訂案)

リンク:宇宙基本計画工程表 (令和5年度改訂案)

つまり、宇宙基本計画工程表を見れば、いつ、何が、何のロケットで打ち上げられるかがざっくり分かる。なお工程表は毎年改訂されるので、常に最新の工程表を確認することをお勧めします。(宇宙計画は延期しない方が珍しいので。)

 

さて表の左下には「X線分光撮像衛星/小型月着陸実証機」とあるが、これは2023年9月にH-IIAロケット47号機で打ち上げられた。

とすると、残るH-IIAの打ち上げは「情報収集衛星光学8号機」「同レーダ8号機」「温室効果ガス・水循環観測技術衛星」の3機だ。

そして打ち上げ時刻についてだが、38号機の見学旅行記に書いた通り、情報収集衛星の打ち上げ時間帯は推測できる。2024年現在は10時半前後か13時半すぎの二択だが、光学/レーダ8号機は13時半すぎに打ち上げられた光学/レーダ6号機の後継機。なので打ち上げ時間帯も同じ13時半すぎと考えられる

 

さらに温室効果ガス・水循環観測技術衛星ことGOSAT-GWは衛星いぶき(GOSAT)と同様の軌道をとることから、打ち上げもGOSATと同じ13時前後になると予想できる。

 

よって、推測は下記の通りとなる。

H-IIA 47号機:2023年9月 XRISM/SLIM ★打上済
H-IIA 48号機:2023年度後半 情報収集衛星光学8号機 13時半すぎ打ち上げ?
H-IIA 49号機:2024年度前半 情報収集衛星レーダ8号機 13時半すぎ打ち上げ?
H-IIA 50号機:2024年度後半 温室(略)衛星GOSAT-GW 13時前後打ち上げ?? ★ラストフライト

 

2023年9月時点で、H-IIAロケットの引退まであと1年、残り3機。

次の打ち上げは今年度後半にある48号機だ。打ち上げ実施の発表があった時にすぐ動けるよう、私は種子島見学旅行の行程表を準備した。

 


打ち上げ2ヶ月前(2023年11月13日)


 

ロケットの打ち上げ実施は、打ち上げ2か月前に発表される。

11月13日、H-IIAロケットの打ち上げを担う三菱重工H-IIAロケット48号機を打ち上げると発表

 

打ち上げる衛星は「情報収集衛星 光学8号機」
打ち上げ日時は「2024年1月11日(木) 13時00分~15時00分」

 

私はTwitterでその報せを見て身体中に電流が走った。ついに来た!

すぐ打ち上げ見学に行くか否かの判断をする。機体移動(後述)は水曜の夜に行われるから、水~金で有休をとれば日曜まで島に居られる。見学可能性は大。行くしかあるまい。

 

私はH-IIA 38号機でレンタカー確保に遅れた戒め反省から、その日のうちにレンタカーの確保に動いた。レンタカーを借りる期間を仮設定し、レンタカー会社に電話をかける。担当者への取次ぎの待ち時間でさえもどかしい。緊張で心臓がバクバクしている。

ふと窓の外を見ると、雨上がりの空に虹がかかっていた。…その後無事にレンタカーの予約に成功。よっしゃー!

 

お次は行程表の具体化だ。事前準備していた行程表に日付を入れる。

1月09日(火):往路日1(新潟→京都)
1月10日(水):往路日2(京都→種子島)深夜に機体移動を見学
1月11日(木):打ち上げ予定日
1月12~14日(金~日):予備日・復路日

 

1月9日に夜行バスで京都まで移動し、1月10日の早朝に新幹線で鹿児島中央まで移動したのち、港から高速船で種子島へ行く計画だ。10日夜にH-IIAの機体移動を見学し、11日昼に打ち上げを見学する。打ち上げ延期を考慮して予備日を3日間確保した。

※機体移動とは

大型ロケット組立棟(VAB)から射点までロケットを移動させる作業のこと。打ち上げの13~15時間前に行われる。

H-IIAロケット38号機の機体移動の様子 2018年2月26日

 

有休も申請したので一安心。いけるぞ!

 

ちなみに宿の予約だが、私は種子島がお隣の馬毛島の基地工事とやらで深刻な宿不足であることを知っていたので、何もしなかった。
寝袋と車中泊で2月の種子島の夜を越せることは38号機で実証済みだしね。宿があるに越したことはないが、車中泊でも全然いける。

 

 


打ち上げ40日前(2023年12月5日)


 

なんてこった・・・
勤め先の都合で、1月10日(機体移動見学日)が仕事日になった。
社会人はこれがつらい。

 

スマホを叩き、往路のプランを再検討する。幸いにも1月10日夜に新潟空港発の福岡便に乗って新幹線で鹿児島へ行けば、1月11日朝に種子島入りできることが分かった。お昼の打ち上げは見られそうだが、10日夜の機体移動見学&撮影は諦めるしかない。残念だ…

しかも冬に新潟空港を使うというのは、大雪による欠航のリスクを背負い込むということ。不安だ…

 

 


打ち上げ2週間前(2024年12月28日)


 

ここでH-IIA 48号機で宇宙へ行く情報収集衛星衛星「光学8号機」について触れておく。

情報収集衛星はカメラやレーダーで宇宙から地表を撮影し、隣国や被災地の情報収集を担う衛星である。「光学8号機」は光学6号機の後継機という位置づけ。そして光学6号機は私が初めて種子島で打ち上げを見た、H-IIA38号機で宇宙へ行った。

 

つまり私は光学6号機の旅立ちのあと、後継機の旅立ちにも立ち会おうとしている。…なんという運命のめぐりあわせだろうか。

 

前述のとおり私は宇宙機のことが好きな宇宙ファンで、宇宙機を解説したり、擬人化イラストを描いたりするのが趣味。

光学8号機の打ち上げ成功した暁には、盛大にお祝いしたい。
私は情報収集衛星 光学8号機」の擬人化イラストを制作することにした。

 

画像

光学8号機の擬人化ちゃんの線画

光学8号機はNEC製らしいので、NEC製衛星であるGCOM衛星と同じ衛星バス(NX-1500L)にWorld View衛星のような大型の光学センサを載せたデザインにしてみた。

願わくば…宙(そら)へ打ち上がるロケットを見てみたい。打ち上げに成功してほしい。

もし打ち上げを見られたら、ロケットの写真を背景に光学8号機ちゃんの打ち上げ記念イラストを投稿しよう!!と心に誓った。

 

ただ打ち上げを見に行けない&見られない可能性もある中でのイラスト制作は心理的に大変でした。無駄に終わる可能性もあるわけで…

そこはもう"宇宙機愛"で頑張りました。

 

 


打ち上げ10日前(2024年1月1日)


 

元日の北陸を烈震が襲った。
私が居た新潟も震度5以上の揺れに見舞われた。幸いにして家に被害は無かったが、普段通りの日常に戻ろうとする心に追い打ちをかける報せが届いた。

 

新潟空港が終日欠航になった。

 

やめてくれ・・・

翌日には運航を再開するも、もし1月10日に大きな余震が起これば、私の旅は始まる前にご破算になるだろう。

余震が極めて多い地震だっただだけに、私の心はひどく動揺した。

 

さらに不安要素として、新潟空港のある新潟市の天候が気になる。天気予報を確認すると1月10日の新潟市の天候は「雪時々曇り」。雲行きが怪しくなってきた…

 

 


打ち上げ9日前(2024年1月2日)


 

ロケットの打ち上げは毎回ドキドキの時間である。38号機の打ち上げの時も心臓バックバクだったのは今でも覚えている。

そこで、正月のセールをしていた家電量販店でスマートウォッチを購入。
これで打ち上げ時の心拍数を測ってみるのだ。

 

平常時の心拍数は70~100。さてどうなるだろうか

 


打ち上げ3日前(2024年1月8日)


 

打ち上げ一週間前になると、種子島宇宙センターの週間天気情報で打ち上げ日の予報が見られるようになる。
リンク:種子島宇宙センター 気象情報

 

ここで問題です。この天候で1月11日13:00~15:00の打ち上げは予定通り行われるでしょうか!?

1月8日時点の種子島宇宙センターの週間気象情報

 

 

 

 

答えはNO。

打ち上げ時間帯の天候は曇りで打ち上げに支障は無いが、打ち上げ13時間~15時間前に行われる機体移動の時間が雷と強風の予報になっているため、機体移動ができず打ち上げは延期となる。

 

翌日。翌々日の天候は良好なので、打ち上げは1日延期になるだろう。

 


打ち上げ2→3日前(2024年1月9日)


 

打ち上げ2日前になると、天候事情も踏まえた打ち上げの正確な日時が発表される。
この日、三菱重工が発表した打ち上げ日時は当初予定から1日延期の1月12日

 

まあ、そうなるな。延期は想定の範囲内なのでショックはさほど大きくはなかった。

 

1月9日時点の種子島宇宙センターの週間気象情報

 

なお1月12日の天候は曇り。ロケットが雲に突っ込む、いわゆる「雲ズボ」になると予想される。打ち上げを見られないよりはいい。

 

運命の打ち上げ時間は13:44:26。カウントダウンが止まらない限り、この時間に光学8号機を載せたH-IIAロケット48号機が宇宙へと旅立つ

 

スーツケースにデジタル一眼レフカメラ2台、ビデオカメラ1台、パノラマカメラ1台、三脚2台、そしてレンタルした超望遠レンズ(150-600mm)と寝袋を詰めて、荷造りは万端。

 

私は1月10日の夜に出発する。気になる新潟空港の天候は曇り。欠航の可能性は無い。
打ち上げ見学旅行、GOします。

 

次回、種子島上陸&見学場下見へ。

旅行記(2)へ続く

sado-kouta.hatenablog.com

【見学レポ】JAXA相模原キャンパス特別公開2019(後編)

前編は→コチラから
中編は→コチラから

2019年11月2日(土)に行われたJAXA相模原キャンパスの特別公開の見学レポの後編です。

後編では中編の続き、私自身が行った質問と回答、見学したブースの写真と雑感を紹介します。


見てきたもの


1:火星衛星探査計画(MMX)
2:超小型探査機OMOTENASHI
3:「はやぶさ2」のリュウグウ探査
4:木星探査: ひさき から JUICE へ (ミニ講演会を聴講)
5:深宇宙探査技術実証機DESTINY+
6:天文衛星と新しい衛星計画
7:エネルギーから宇宙を拓く
8:人工衛星の熱制御技術
9:小型月着陸機SLIM

中編・後編ではざっくり9種類のブースについて紹介。後編では上記6~9について取り上げます。


6:天文衛星と新しい衛星計画


X線天文衛星ひとみASTRO-H

星ひとみは2016年に、打ち上げから1ヶ月あまりで事故により失われた。本格的な運用前ではあったものの、目玉の観測装置である軟X線分光検出器SXSは、事故前にペルセウス座銀河団の観測を行っていた。その観測では、SXSが予想以上の分解能を達成していたことがわかっている。SXSによるペルセウス銀河団の観測結果についてのポスターがありました。


ひとみが観測した、ペルセウス銀河団の高温プラズマの観測結果について。

素晴らしい分解能でX線を分光し、わずかな観測でありながらその凄さを示したひとみのSXS。
ひとみの展示を見るととうしても悲しみと寂しさを感じてしまう。後続の代替衛星「XRISM」の開発がすぐに立ち上がり、2021年の打ち上げを目指しているのがせめてもの救いだ。

X線天文衛星ブースのスタッフに質問してみました。

Q:ひとみの代替機がすぐに立ち上がったのはどうしてですか?
A:ひとみは元々世界中から期待された衛星だった。そして事故を起こす前に、わずかながら観測ができて、いろんなことがわかった。ならば、もっと観測すればもっとわかる。だからあげましょう。というのがあったと思う。

代替のX線天文衛星XRISM(クリズム)は、2021年度打ち上げの予定。(小型月着陸実証機SLIMとの相乗り)

ひとみのポスターの向かいを見ると、これまでのX線天文衛星たちに搭載されていた機器がずらりと並んでいました。
どれも初めて見るものばかり。これはあすか、そしてぎんがの!こんなものが現存していたとは…興味深い。


過去の日本のX線天文衛星に搭載されていた機器

左から
・ぎんが(ASTRO-C)の大面積比例計数管LAC
・あすか(ASTRO-D)の撮像型蛍光比例計数管GIS
・あすかのスタートラッカー
・ひとみのプリコリメータ
・ひとみのフィルターホイール


ひとみのプリコリメータ(左)とSXS用フィルターホイール(右)


ひとみのプリコリメータの断面。この多層構造が肉眼で見られるとは!
アルミニウムの薄板が、バウムクーヘンのように同心円状の多層構造になっている。

プリコリメータは、視野外からのX線(迷光)を除去するために反射鏡のさらに外側に配置されてる遮光用レンズフードだそう。衛星すざくから採用され、ひとみにも搭載された。

ひとみの代替機、XRISM(クリズム)にもひとみのSXSの改良版、そしておそらくプリコリメータが搭載される。
XRISMにはひとみが見るはずだった星たちをたくさん見てほしいと思う。

赤外線天文衛星あかりASTRO-F

全天の赤外線地図の作成を主目的とした、日本初の本格的な赤外線天文衛星。
恒星や銀河、星雲の観測や、太陽系の小惑星の観測も行った衛星なのだが…

あかりが撮影した観測画像をまとめたポスターがありました。おー特別公開って感じ…ん?


あかりが見た宇宙。独特の美しさがある観測画像の数々が紹介されている。中でも驚いたのは右下に紹介されている"彗星"。

右下に、あかりが観測した…彗星の画像がある!?!?!!えっ…あかりちゃんって彗星も撮ってたんですか!?


あかりが見た"彗星"。綺麗に撮れている…感動です。

あかりが撮った銀河や星雲、小惑星の画像は見たことがありましたが、まさか彗星も撮っていたとは…初めて見ました。

あかりの後継機計画には日欧共同のSPICAがあり、現在は欧州宇宙機関(ESA)のMクラスミッション5号機の3つの候補の1つとして選定中。2021年にミッションの最終的な選定が行われる。

・赤外線位置天文観測衛星JASMINE(ジャスミン)

私にとって、突如現れた謎の天文衛星計画。今年に公募型小型3号機として選定されたのですが、それを知ったときは驚きました。Nano-JASMINEはどうした


小型JASMINEのポスター。

小型衛星JASMINEは、銀河系中心領域(バルジ)の星の位置や運動を正確に観測することを目的とした衛星。赤外線は塵に吸収されにくいので、銀河系中心の星を高精度で観測できるそうだ。
イプシロンロケットで打ち上げられるサイズの衛星で、打ち上げは2020年代の中ごろを予定。以下、質疑応答で出てくるJASMINEは小型(衛星)JASMINEについて。

Q:小型衛星JASMINEはどんなミッション?
A:可視光に近い赤外線の波長の観測装置で、銀河系中心を撮り続けるのがミッション。全天サーベイではない。地球は太陽の周りを回っているので、銀河系中心の(年周視差の)観測に適している期間が春と秋だけ(半年くらい)。夏と冬はぼーっと生きている。これだと、チコちゃんに叱られてしまう。なのでその間は何かしようということで、今話題の系外惑星の探査をする計画もある

小型の位置天文衛星ということですが、なんとJASMINEは、「系外惑星の探査」も行えるそうです。

Q:系外惑星の探査ってどういうことですか?
A(系外惑星探査分野の研究者の方でした): JASMINEは新しい系外惑星を発見しようとしている。ただやみくもに探すのではなく、JASMINEが狙うのは、複数惑星系。既に惑星が見つかっている系(恒星)を詳しく調べて、もう1つか2つ惑星がないかを調べる。そして発見したら終わりではなく、アメリカがそろそろJWST(NASAが開発中の大型宇宙望遠鏡)を打ち上げるので、JWSTでより精密な観測ができる。流れとしては、JASMINEで系外惑星や候補を見つけて、NASAJWSTで超詳しく調べる。バイオマーカー、生命がいるかもしれない証拠をJWSTで調べる。実際にできるかはわからないが、これから準備をしていく。
JWSTは口径が大きいので暗い星まで見えるが、分光観測ができるのは明るい星に限られる。JASMINEが系外惑星を見つけても、JWSTでは見えないかもしれない。なのでJWSTで見えるギリギリの明るい星周りの星をJASMINEで探す

系外惑星の分光観測ができるとかJWST凄すぎる…小さな衛星JASMINEと大きな衛星JWSTの協力が見られそうで楽しみです。)

また、JWSTのほかにもWFIRST(ダブリューファースト)という衛星との協力があるかもしれない。
JASMINEの打ち上げは2024年を予定。そして、アメリカのWFIRST(NASAが開発中の赤外線サーベイ宇宙望遠鏡)は、2025年に打ち上げを予定している。WFIRSTは打ち上げ後、JASMINEのように銀河系中心をめっちゃ調べて、重力マイクロレンズ法で系外惑星を探す。なので2機が同時期に銀河系中心を観測できる可能性がある。
JASMINEとWFIRSTが共同で観測すれば、1つの衛星ではわからない発見があるかも。


系外惑星探査に関わる方から興味深いお話を聞けました。小型JASMINEはメインの観測のほかに系外惑星の探査を行う計画があるということで、個人的に非常に興味がわくミッションだと感じました。日本も系外惑星の探査を行えるってすごく嬉しいです。
NASAJWSTとWFIRSTミッションによるフォローアップ観測も期待しちゃいます。


日本はWFIRSTへの参加を目指しているそうです。

 


7:人工衛星の熱制御技術


宇宙機の表面の"色の違い"についてのパネル展示が目に入ったので、「人工衛星の熱制御技術」の展示をみてきました。なかなか面白い発見がありました。


宇宙機の表面の色の違い。金色の宇宙機、黒色、銀色など。

Q:宇宙機の色の違いはなんですか?
A:はや2やあかつきの金色は、断熱材で、外側のフィルムが金色をしている。銀色の部分は熱を外へ逃がすラジエータ。一方のぞみ(PLANET-B)やかぐや(SELENE)の黒色は、塗料。ただの塗料じゃなくて、電気を通す塗料。機体が帯電してしまう軌道にいる衛星から、電気を外へ逃がす役目がある。断熱材で外部との熱の出入りを小さくし、内部の熱を出す機器は、ラジエータを使って排熱する。という役割がある。
探査機はやぶさには、ラジエータの進化版が搭載されている。

Q:進化版?
A:一般的な銀色のラジエータは、低い温度の時も熱を放射してしまうので宇宙機内部が冷えてしまう。低い温度(熱を外へ逃がしたくない時)でも熱を放射しようとする性質がある。そこでこのSRD(Smart Radiation Device)は、温度が低くなると放射率が小さくなる性質を持っている。この画期的なラジエータはやぶさは積んでいる。(これは初耳)さらに、SRDに薄膜を付けることでSRDによりも放射率の高い、ラジエータと同じくらいの放射率を持ったラジエータが実現できている。今後はいろんな課題を解決していって性能を高めていく。

Q:はやぶさはSRDを積んでいたんですか?
A:はい。はやぶさの写真のこの黒いところがSRD

放射率可変素子SRDについて。はやぶさの機体側面の黒い部分がSRD。

話を聞いて、はやぶさの黒いラジエータの謎が解けました。今まで知らなかったことを知ることができて大変うれしかったです。

ちなみにはやぶさ2にSRDが搭載されたのか、気になったので調べたところ、こちらの記事が見つかりました。

冷暖房不要、省エネの建材に 「はやぶさ」技術応用:朝日新聞デジタル(2014年11月17日)
https://www.asahi.com/articles/ASGC80RR5GC7UEHF01H.html
“この材料は特殊なマンガン酸化物でできており、SRDと呼ばれる。工学実験の一環として1号機の送信機に付けられた。同社によると「はやぶさ2」は1号機ほど温度差が激しくない軌道を通るので、はやぶさ2」への搭載は見送られたという。

SRDははやぶさ2には無いんですね。これはこれで新発見。

 


8:エネルギーから宇宙を拓く


展示を見たわけではありませんが、リーフレットに興味深いことが書かれていたので紹介。

相模原キャンパス特別公開2019 リーフレット
1-8 エネルギーから宇宙を拓く [PDF: 632KB]
http://www.isas.jaxa.jp/outreach/events/opencampus2019/leaflet/1-8.pdf


上記リーフレットの左下の写真とそのキャプション(画像:JAXA)

パンフレット左下に、衛星れいめい(INDEX 小型高機能科学衛星)の写真が写っていますよね。その写真のキャプションを読んでびっくり。

“打ち上げ前の「れいめい」衛星と搭載されたバッテリ -アシスト自転車用の電池を改良して使用-“

れいめいのバッテリーはアシスト自転車の民生品だった?!

小型科学「れいめい」衛星の開発と小型実用衛星の展望 齋藤 宏文, 平原 聖文, INDEX プロジェクトチーム
http://www.isas.jaxa.jp/home/saito_hirobumi_lab/_src/sc1012/8Dq8BF389F92888Aw89EF8BZ8Fp8FDC8EF38FDC98_95B6.pdf

調べてみると、“れいめいでは,将来にわたり小型衛星で使用可能な軽量バッテリを目指し,電動付自転車用の民生品薄型リチウムイオン二次電池を使用した.”
とあるように、れいめいのバッテリーは本当に電動アシスト自転車のものを使っているようです。(真空対策など、軌道上で使えるように改良が施されている。)

そういえば今年はれいめいの運用設備見学がありませんでした。2017年の運用設備見学では、相模原のアンテナによるれいめい衛星との通信の様子が見学でき、その時は「れいめいは現在、搭載リチウムイオンバッテリーのデータを取得して、バッテリの劣化の評価を継続して行っている」と説明がありましたが、まさか電動アシスト自転車のバッテリーだったとは。

れいめいの意外な一面を知ることができました。

ちなみにれいめいにもはやぶさと同じくSRDが搭載されています。


9:小型月着陸機SLIM


現在開発中の小型月着陸実証機「SLIM」。

特別公開の閉場まであと30分近くになったころ、SLIMのブースで特別公開最後の情報収集を実施しました。
SLIMの基本情報については、こちらの画像をご覧ください。

2019年9月に作成した際、SLIMに小型プローブの搭載が検討されていることを知りました。

ブースの真ん中にはSLIMの模型が鎮座していました。

SLIMの模型。2017年に見たのとはまた違っていて、新しい設計が反映されているようだ。

エンジン側から見たSLIM。2つのメインスラスタが印象的なデザインになっている。

よく見ると、着陸脚がある面と太陽電池が貼ってある面が平行になっておらず、若干の傾斜がある。(現地で会ったフォロワーさんからの情報。太陽電池の発電のためらしい)これは驚き!!機体のデザインは昨年8月の資料で見たのと同じのようだ。

ちなみに2017年に撮影したSLIMの模型はこんな感じ。

2017年の特別公開で撮影したSLIMの模型1 スケールは1/10

2017年の特別公開で撮影したSLIMの模型2

模型を見比べてみると全然違いますね…。
着陸レーダアンテナ(八角形の灰色のパネル)の形と数、着陸脚についている半球状の衝撃吸収材などは同じようですが、メインエンジンが1基から2基に増強され、併せて補助スラスタも8基から12基になっています。機体形状もガラッと変わった印象。

SLIMブースにはなんと、SLIMのプロジェクトマネージャーの坂井先生がいらっしゃっていたので、気になっていたSLIMの小型プローブの搭載の検討について質問してみました。

Q:これが現在のSLIMの姿ですか?(模型を見ながら)
A(以下、回答は坂井PM):
はい。もうここから変わらないと思う。これまでに打ち上げロケットの変更で大きな設計の見直しがあった。今はH-IIAロケットでXRISM(衛星ひとみの代替衛星)との相乗りで打ち上げる予定になっている。

Q:SLIMの開発は順調ですか?
A:おかげさまで。今は、JAXAことばでいうと「詳細設計」の段階。図面を引いて、開発モデルの試験を並行してやっている。フライトモデルの開発を来年度くらいから始めたいと思う。

Q:SLIMの関連資料に「小型プローブの搭載を検討」という記述があるのですが、こちらは今どんな状況ですか?
A:小型プローブは搭載できるかまだ見極められていない。結局のところ、SLIMの重量で決まる。最終的なSLIMの重量に余裕があれば載せられるし、余裕がなければ載せらない。ちょうどギリギリのところ。模型で言うと、ここにくっついている(丸いところ)。載せられるように設計はしているが、搭載の最終判断は、重量の見極めがついたところで決める。持っていきたいとは思う。


SLIMの機体についているこれが小型プローブ。

Q:丸いのはこれはカバーですか?
A:金色はMLIのカバー。ここにホッピングローバーみたいなのを載せたい。

少し調べてみたところ、こちらの資料を見つけたので、紹介します。
小惑星含む月惑星表面探査ローバに関する研究
http://www.isas.jaxa.jp/home/kougaku/03_report/30_senryaku/11_otsuki_senryaku30.pdf


SLIM搭載小型プローブの研究資料。小型プローブは外側の衝撃吸収材と内側のホッピング機構などで構成されるようだ。

Q:小型プローブはカメラを積む?
A:カメラを搭載する。小型プローブを開発しているチームはJAXAの中のSLIMとは別のチームで、我々としてすごく期待しているのは、あわよくば、着陸したSLIMを外から撮ってくれたらと思っている。

小型プローブに関する貴重な情報が得られました。感謝です。


SLIMの特に興味深い展示として、「画像照合航法」があったのでここで紹介。


画像照合航法の展示映像。左上のSLIMにも小型プローブがついているのが分かりますね。

SLIMは月面の撮影画像からクレーターを検出し、クレーターの地図と照合して「自身の位置」を割り出すことができる。さらに、撮影画像に写る月面の範囲から、「高度」もわかるとのこと。カメラ撮影で高度がわかる、確かに理屈はわかるが本当にできるとは。変態技術だなあ(褒めてる)

実際に撮影画像から地図上の位置を割り出す様子を、デモンストレーションで見せてくれました。

写真右側に掲げられている壁掛け月面地図を、カメラでリアルタイムに撮影したのが画面左の「撮影画像」。それを基に月面上の位置を示したのが画面右の「月面地図」。月面地図上に撮影画像の位置と範囲が映し出されている。撮影画像が動くと、それに応じて月面地図上の範囲も動く。

カメラの前に手を出して視界の一部をふさいでも、きちんと位置検出ができていました。クレーター数が10個検出できればギリギリ位置検出が可能とのことで、ロバスト性にも優れているようです。

そのほか、SLIMで気になったポスターを撮影。


SLIMの図解。新しい技術がたくさん盛り込まれています。




月を調べるSLIMのカメラについて。

SLIMは元々イプシロンロケットでの打ち上げの計画でしたが、X線天文衛星XRISMとの相乗りでH-IIAロケットによる打ち上げになりました。この変更により、SLIMの重量に余裕が生まれ、月を調べる観測装置にしっかり重量が割り当てられました。その観測装置の名はマルチバンドカメラMBC(←覚えて帰って!)
好きな方向を向けられて、いろんな場所でピントが合う、これまでになかったカメラとのこと。期待が膨らみます。

SLIMの打ち上げは2021年度を予定。



今回のJAXA相模原キャンパス特別公開は、1日開催ということもあって、気になるブースや講演会のすべてを見ることはできませんでしたが、新しい発見と新鮮な展示物の数々に出会うことができました。先生方を含むたくさんの方に質問することができ、またTwitterのフォロワーさんと会って交流できる機会にもなり、とても楽しかったです。次の開催があればまた参加したいです。

その時はまた。

前編は コチラから
中編はコチラから

【見学レポ】JAXA相模原キャンパス特別公開2019(中編)

前編は→コチラから
後編は→コチラから


10時に開場。第4会場の研究・管理棟(1)へレッツゴー。

2019年11月2日(土)に行われたJAXA相模原キャンパスの特別公開の見学レポの中編です。

まとめたらとても長くなってしまったので、前・中・後編になりました。3分割です。
中・後編では私自身が行った質問と回答、見学したブースの写真と雑感を紹介します。


今年、2019年のJAXA相模原キャンパスの特別公開は、例年の夏開催ではなく11月開催でした。春になっても開催のアナウンスがなかったので、今年は無いかもしれないと不安でした。

 

昨年(2018年)夏の特別公開は残念ながら、私が唯一行ける日が台風12号で中止になってしまったので、今年の開催が無かったら3年間もおあずけを食らうとこでした。おのれジョンダリ

例年の2日間開催から1日だけの開催だったものの、開催してくれただけでもありがたいです。関係者の皆様に感謝を。

 


見てきたもの一覧

1:火星衛星探査計画(MMX)
2:超小型探査機OMOTENASHI
3:「はやぶさ2」のリュウグウ探査
4:木星探査: ひさき から JUICE へ (ミニ講演会を聴講)
5:深宇宙探査技術実証機DESTINY+
6:天文衛星と新しい衛星計画
7:エネルギーから宇宙を拓く
8:人工衛星の熱制御技術
9:小型月着陸機SLIM

ざっくり9種類のブースについて紹介。中編では上記1~5を取り上げます。


2019年11月2日10時、私にとっては2年2ヶ月ぶりの相模原キャンパス特別公開がスタート。

開幕直後、まずは火星衛星探査計画MMXのブースへ直行。

MMXについて初めて知る人は、こちらの動画をぜひご覧ください。

MMX私の推しの探査計画でもあります。MMXの深い情報は、以下のブロマガ記事にも書いているので、MMXのことをより深く知りたい方はご覧ください。

【講演会レポ】火星衛星サンプルリターン計画(JAXA MMX計画)―はやぶさ2の次にくるもの―(前編)
https://ch.nicovideo.jp/yamagon/blomaga/ar1772998
【講演会レポ】火星衛星サンプルリターン計画(JAXA MMX計画)―はやぶさ2の次にくるもの―(後編)
https://ch.nicovideo.jp/yamagon/blomaga/ar1777184


1:火星衛星探査計画(MMX)


MMXのブースには、MMXについての事がまとめられたポスターや、MMX探査機のレゴブロック(機体色が黒の古いデザイン)などが展示されていました。最初にスタッフの方から紙を手渡され、パンフレットかなと見てみると、パンフレットと一緒にMMXについてのクイズ用紙がありました。「100点満点で素敵な景品がもらえるよ」とのこと。
待ってましたこの時を!!さっそく回答へ。

全部で10つある問題のうち、8つは答えがすぐ浮かび、一応ポスターで合ってるか確認。残り2つはポスターを見て答えを探しました。

MMX推しの一人として、間違えるわけにはいかないと使命感を勝手に感じながらスタッフの方に答え合わせをしてもらいました。答え合わせ第一号でした。
結果は…全問正解キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!


まあまあ手ごたえのあるクイズでした。



特別公開でもらったパンフレットとステッカー。こうした配布物は嬉しいですね。使うのが少々もったいない

景品はMMXのステッカー(↑写真右下)。これは嬉しい!!最高の記念品になりました。

多幸感に包まれながら、気になるMMXのポスターを撮影。


2019年のMMXポスター。MMX探査機の画像はMLIが金色の新しいデザインになっている。

この後はしばらくの間、Twitterで募集していた質問の回答を集めに行き、午後になり再びMMXのブースへ。その時にはブース中に人だかりができていました。


午後2時ごろのMMXブース。打ち上げ前の探査機でありながらこの大盛況!しかし…

大盛況でとても嬉しかったのですが、よく観察してみると、クイズの回答を集めるために人々がポスター前に群がっている状態。なるほどクイズの問題の大半は、ポスターを見ないと普通の人は知らないようなことばかり。ポスターに書かれている答えも見つけやすいとはいえず、(答えの位置を表すシールはあった)結果としてクイズを解くのに時間がかかり、いつまでたってもポスター前に人がいるという状態。本当に混んでいました。
クイズと景品は非常に面白いやり方だとは思うのですが、お世辞にも回転率が良いとはいえないなと。
MMXのスタッフに探査についての質問をしに行ってみましたが、人込みのおかげで動くのが大変でした。

MMXについての質問と回答を以下に記します。

Q:MMX探査機の色が、黒色から金色に変わったのはなぜ?
A:金色はまだ確定ではない。金色と黒色は導電性が違うので、まだ判断はしてないと思う。現在はどちらともありえる。
機体内部の色は黒。発熱機器があるので、ふく射率を上げるために黒色になる。外側が黒にしろ金色にしろ、役割は同じ。断熱の機能を持っている。それが導電性があるかどうかの違い。黒が電気を通す。

Q:着陸の時に塵が舞い上がると思うんですけど、それの影響を考えた時、導電性はあったほうが、それともないほうが良い?
A:静電誘導で付く場合、どっちにしろ付く。黒か金色のどちらがいいかはわからない。塵が付くことは前提で考える。今後どこかのタイミングで、外装の判断をする。早めに。4年後の直前ギリギリの判断はない。


黒い姿だったMMX探査機が、今年になると金色の姿になっていたのでびっくりしました。その理由について聞いてみましたが、まだ金色の姿は確定ではないとのこと。続報を待ちたいところです。


2:超小型探査機OMOTENASHI


アメリカの超大型ロケット「SLS」で打ち上げられる日本の超小型探査機「OMETENASHI」と「EQUULEUS」(オモテナシとエクレウス)。OMOTENASHIのポスターを紹介。


SLSの打ち上げが何年も遅延しているのがなんとももどかしい。

OMOTENASHIは、月への着陸を目指す超小型探査機。着陸といっても、軟着陸と思いきやそんなことはなく、セミハードランディングで月面にたたきつけられる探査機。なので電装品は衝撃で壊れないようにエポキシで隙間なく固めて搭載するとのこと。

現在の打ち上げ予定は2020年11月。


3:「はやぶさ2」のリュウグウ探査


はやぶさ2の探査成果をまとめたポスターが展示されていました。


はやぶさ2のSCI運用時の観測写真。今まで見たことの無い光景の数々…。

ポスターを見ながら(こんなことがあったなぁ)としみじみ思いながら振り返ると、なんと、はやぶさ2SCI(衝突装置)担当の佐伯先生がいらっしゃるではありませんか!
私は若干上ずった声で、SCIのライナが見事良い位置に命中してホッとしたことを伝え、さらにいくつかの質問をしました。快く答えてくださり、とても嬉しかったです。

・SCI(衝突装置)担当の佐伯先生への質問
Q:SCIを今後のミッションで使用する、といったことは検討しています?
A:まだ直接の検討などはない。海外の方からは引き合いがあったりはする。何分物騒な物なので。(笑い)これでやり方が確立されたので、似たようなミッションがあればそのまま積んでもいいかなと思う。

Q:佐伯先生はMMXに携わったりしますか?
A:今のところはわからない。まだはや2が1年残っているので。

(この後、帰還後のはや2について質問。その質問内容と回答は前編に。)

イオンエンジンを研究している学生さんへの質問

Q:改良が進んだ現在のμ10の推力はどのくらいですか?
A:もう論文が出ているので大丈夫なので申し上げると、今は12mNくらい。はやぶさの時は8mNで、はや2のときは10mNだった。

Q:改良型μ10の寿命はいかほど?
A:寿命の評価は難しいところ。数万時間稼働するので、連続耐久試験をするだけで何年もかかってしまう。なのではやぶさ・はや2のイオンエンジンから抜本的に変えられないというところがある。過去の遺産を引き継いで、変えられるところは変えてやっている。
はやぶさで壊れた中和器は、故障への対策を加えた改良版がはや2に載っている。中和器の耐久試験は打ち上げ前から今も続けている。

Q:はやぶさ2が地球に帰還した後、イオンエンジンはあと何年動かせそう?
A:地球についたらはやぶさ2ごと燃え尽きちゃうかも…

Q:もしそのまま飛び続けるとしたら?
A:ほかの機器にもよるので未知数。イオンエンジンとしては全く問題ないと思う。

リュウグウでのミッションを終えたはやぶさ2。あとは帰るのみになりましたね。

復路もイオンエンジンが完走するよう、応援しています。ありがとうございました。

 


4:木星探査: ひさき から JUICE へ (ミニ講演会を聴講)


・「ひさき」からJUICEに続く木星圏探査~ミニ太陽系の探査~ 山崎 敦ひさきPM(プロジェクトマネージャー)

講演を聴講。内容をざっくりと紹介します。



木星と「ひさき
木星には磁気圏がある。木星磁気圏は強力かつ巨大。木星に一番近いところを周るガリレオ衛星イオは、ずっと強い木星磁気圏の中をくるくるくるくる回っていて木星磁気圏の外に出ることはない。木星から遠くを周るカリストは、木星磁気圏のしっぽの中に出たり入ったりしており、常時磁気圏内にいるわけではない。

木星磁気圏の中を周るイオを現在観測しているのが、衛星「ひさき地球周回軌道から木星とイオを見ている。さらにNASA木星探査機「ジュノー」木星の周回軌道から磁気圏やプラズマなどの観測などを行っている。
ひさき」のチームは、ひさきとジュノーの観測結果を使って木星近傍の観測を行っている。

ガリレオ衛星について
エウロパは表面が氷で覆われていて、地下には海が存在すると考えられている。その地下の水は間欠泉のように噴き出すことがある。地下海には生命が存在する可能性もある。イオの火山と噴火もエウロパの地下海と間欠泉も同じ潮汐力によるもの。


イオやエウロパと比較すると影が薄い気がする衛星、ガニメデ。磁場の存在が特徴的とのこと。

で、木星衛星ガニメデは、エウロパのように地下海の存在が確認されている衛星だが、一番重要なのが、「磁場が存在する」ということ。地球のように、内部に液体鉄のコアがあるので、磁場か形成されている。磁場を取り巻きながら、木星の周りを回っている。これを観測したいのが、JUICE(木星氷衛星探査機ジュース)
ところで、なぜ磁場があると良いのか。磁場があると、オーロラがある。ガニメデのオーロラは地球よりも低緯度で観測できる。
磁場の関係を調べていって、木星系の中で磁場とプラズマの相互作用を調べるのがJUICEの目的の一つになっている。

JUICEは2022年6月に打ち上げられ、2029年、今から10年後に木星に到着し、探査を行う。2032年には磁場がある衛星ガニメデを周回する。


探査機JUICEは磁力計やプラズマ粒子計測機を搭載して木星、ガニメデへ向かう。そして木星磁気圏とガニメデのオーロラの関係を解き明かそうというわけだ!!

講演を聴いて、木星氷衛星探査機JUICEがなぜガニメデを周回して詳細な探査を行うのか、理由がわかった気がしました。
講演では、打ち上げから6年になるひさき木星圏の観測成果も見ることができました。ひさきの活躍を知れて嬉しかったです。

講演終了後、質問コーナーがあったので、ふと気になったことについて、質問してみました。

Q:JUICEが木星に到着したとき、一緒にひさきも観測できればいいなと思ったのですが、ひさきは今後、どれくらい運用が可能ですか?
A(山崎PM):ひさきの設計寿命は、実は1年でした。そこから頑張って今6歳。小学1年生くらい。
ひさきの軌道は特殊で、高度1000kmを周回している。ひさきの軌道はISS地球観測衛星などに比べて高度が高いため、放射線の影響を受けやすい。ひさきのCCD(観測装置ではなく、スタートラッカーと、視野ガイドカメラ)が放射線に弱いので、ダメージを受けて使用できなくなってしまう。このCCDは姿勢制御に必要なものなので、劣化が進むと惑星に観測装置の視野を向けることが難しくなり、最終的に衛星の寿命になる。JUICEが到着する2029年、あと10年は、さすがにもたないだろう。
ひさきの観測装置のディテクターは、CCDよりも放射線による影響は小さい。なので、ひさきがコントロールを失わないところまで観測を行いたい。

とのことでした。ひさきの高度は1000kmで、大気による軌道減衰がないため長期の運用が可能かなと思っていましたが、高度が高い分、放射線による影響でCCDの劣化が進み、運用寿命を迎えてしまうようです。


宇宙科学探査交流棟に浮かぶ衛星「ひさき」の模型(中央)。ひさきは後ろの「はやぶさ2」よりもずっと軽い小柄な衛星だ。

講演のタイトルにひさき」からJUICEに続く木星圏探査とあるように、ひさきはJUICEと一緒に観測するというよりは、ひさきがもたらした成果や謎が、JUICEに繋がっていくということなんですね。JUICEとのひさきの関わりを知ることができて、ひさきのことをもっと好きになりました。


5:深宇宙探査技術実証機DESTINY+


個人的にすごく気になっている探査機「DESTINY+」。ブースで直撃質問をたくさんしてきました。

DESTINY+については、こちらの情報スライドをご覧ください。

2019年9月に作成したもの。


展示されてあったDESTINY+の模型。機体上部についている双眼鏡のようなものがダストアナライザ(DDA)

イオンエンジンの研究を行っている方への質問
Q:この模型は探査機デザインの最終版?
A:最新版ではあるが、確定ではない。まだ設計を検討しているので、どこに何が配置されるかは変わる可能性がある。


DESTINY+の構想と実証する工学技術について。

Q:開発で一番難しそうなところはなんですか?
A:工学的ミッションで言うと、太陽電池と熱制御とイオンエンジンが新しく挑戦しようとしている技術。なぜ熱制御が入っているかというと、まずイオンエンジンがものすごい熱を出す装置で、はやぶさ2の場合はイオンエンジンのノズルの中に太陽光が入らない姿勢なのに対し、DESTINY+はスパイラル軌道上昇の際、イオンエンジンのノズルの中に太陽光が入ってしまい、熱がさらに増えてしまう問題がある。そのために、熱をより強く逃がす展開式のラジエーターを搭載する。宇宙空間で熱を逃がすというのが工学的に難しい。
実はスパイラル軌道上昇もチャレンジングで、イオンエンジンはやぶさはやぶさ2よりも長い時間噴射しないといけないのが難しい。

Q:イオンエンジンについてはどうか?
A:DESTINY+に搭載するイオンエンジンはやぶさ2の改良型で、推力がアップしているのでより早く速度が上がるし、比推力はそのまま据え置き。

イプシロンで低い軌道にしか投入できなくても、深宇宙探査ができるという意味で、ある意味イオンエンジンの新しい可能性を実証するのがDESTINY+H-IIAH3ロケットを使わなくても、小型で安いイプシロンロケットでも、イオンエンジンを使えば深宇宙探査ができるっていうのを実証する。DESTINY+が成功すればこういった探査機がどんどん上がる可能性が出てくるのが魅力の一つ。



DESTINY+のフェートンフライバイ観測について。このポスターは流れがわかりやすいですね。

・DESTINY+の探査機システムを担当している方への質問

Q:DESTINY+がフェートンをフライバイするときは、 通信しながら観測を行い、撮った写真をすぐ送ってくるのか、それともフライバイの時は観測に集中して、写真をメモリに記録しておいてフライバイ後に写真を地球へ送信するのか、これは?
A:鋭い(笑い)。残念ながら、観測データを通信するには、指向性のある大きなアンテナ(HGA)が必要になる。通信レートの早い大きいアンテナを使えればいいが、DESTINY+が撮像するときは姿勢をフェートンに集中したいので、アンテナを地球に向けるのは難しい。
実際にフライバイ撮像を開始する時間、ポスターにあるように最接近7.2時間前が通信の限界。これ以降になると細いレートでしか通信できないので、画像を下ろすことは原則しない。撮像し終わった後に、姿勢を変えて(アンテナを地球に向けて)、画像を下ろしていく。

Q:7.2時間前だとフェートンの画像はどんな感じになりますか?
A:この時点だと1ピクセルくらいだといわれている。

Q:フェートンの形がわかるのは、フライバイが完了した後?
A:そうなると思う。ただフライバイ前にピクセルくらいの画像は見ておきたい。DESTINY+が誤った方向を見ているかもしれないから。カメラを向けた星が別の星やゴミだったら大変なことになる。可能な限り人目で確認はしたいが、シーケンスには限界がある。数ピクセルくらいの画像を下ろした後は、あとは探査機が自動で。おまかせになる。


DESTENY+のカメラ、TCAPとMCAPについて。TCAPは内部に駆動鏡を備えており、フライバイ時に小惑星の姿を捉え続けることができる。

Q:
観測装置の開発状況はどうですか?
A:駆動鏡(TCAP)の試作をしている最中だと聞いている。

Q:過去の探査機のヘリテージを活かしている観測装置はありますか?
A:TCAP(小惑星追尾望遠カメラ)については新規開発だったと聞いている。

Q:探査機の開発で一番難しいところは?
A:探査機システムを担当する視点でいうと、やはり質量イプシロンで打ち上げられるのも"売り"の一つだが、ロケットの能力が低いので、イオンエンジンを使うといっても電力が必要になり、大きな発生電力が必要でSAPも大きくなり、観測機器も載せるとなると質量にどうしても響いてくる。
打ち上げ能力の中に探査機の質量を収めるのが大変。今は入っている。
もちろんフライバイ撮像も難しい技術だと思う。自動でやらねばいけない。一番の悩みはやはり質量。


DESTINY+について、資料には載ってない貴重な生の情報を得ることができました。固体ロケットとイオンエンジンの組み合わせの探査機は、あの「はやぶさ」以来ということで、私はDESTINY+に特別な視線を向けています。ぜひとも探査が実現してほしいと思っています。


中編はここまで。

後編は近日公開予定。もうしばらくお待ちください。

前編は→コチラから
後編は→コチラから

【見学レポ】JAXA相模原キャンパス特別公開2019(前編)

中編は→コチラから
後編は→コチラから

2019年11月2日(土)に行われたJAXA相模原キャンパスの特別公開を見学してきました。特別公開で見たこと聞いたことを、事後レポとしてこの記事にまとめました。例によって前後編です。

2019年の特別公開は11月開催、それも1日のみ。暑さのない過ごしやすい特別公開でした。

前編では事前にTwitterで募集した質問とその回答を紹介し、
中編・後編では私自身が行った質問と回答、見学した各ブースの雑感をまとめます。


募集した質問と回答


Q1 はやぶさ2の姿勢制御のエンジン系統について →質問できず

Q2 日本のX線天文衛星へのこだわりについて

Q3 はやぶさ2搭載カメラ「InCAM」について →質問し忘れ

Q4, Q5 太陽発電衛星について

Q6 月惑星の縦孔・地下空洞探査UZUME計画について

Q7 深宇宙探査技術実証機 DESTINY+について

Q8, Q9 はやぶさ2の帰還後の予定について


全部で9種類の質問を受け、そのうち7つの質問を各出展ブースの関係者に質問することができました。残る2つの質問は、聞くべき関係者に合えなかったことと、単純に内容をど忘れしてしまったため、質問できませんでした。申し訳ない…。


各質問とその回答について、以下に詳細をまとめていきます。



Q1:はやぶさ2の姿勢制御のエンジン系統について →質問できず

往復の航路中での姿勢制御やリュウグウでの降下、上昇などを含めて、どのくらいの化学燃料を搭載すればいいのか、どうやって計算しているのか。計算によって燃料タンクのサイズも決まると思われるがどうなのか。

はやぶさ2のブースで質問するつもりでしたが、姿勢制御や化学推進に携わっていると思われる方が見当たらなかったので、質問できませんでした。今思えば、はや2の化学推進系担当の森先生を探しに行くべきでした。



Q2:日本のX線天文衛星へのこだわりについて

日本はX線天文衛星が有名なのですが、何かしら「X線天文衛星」へのこだわりがある?

A:日本はX線天文衛星を(赤外線天文衛星などと比べて)昔から継続してこれた。というのも、X線天文学は、衛星を上げないとできない。赤外線や電波は、地上でもある程度の観測ができてしまう。一方X線は、衛星を打ち上げないと何も観測できないから、X線をやる人はしゃかりきになって頑張ったっていうのがあるのと、X線天文衛星を上げるたびに、世界的な成果が上がったこと。これは当時のたちの先見の明と、天体自体が魅力的な現象を起こしたことも大きい。
衛星を上げると成果が出るから継続できるというのと、なにより、宇宙研だけじゃなく大学や海外の皆が協力したこと。などいろんな要素が含まれている。あとは衛星を上げると、良い成果はもちろん、新しい謎も生まれる。その謎を解くために新たな衛星を上げ、さらに新しい謎が生まれる、の繰り返し。

日本のX線天文衛星の歴史のポスター。今年は衛星はくちょうの打ち上げ40周年にあたる。



Q3:「はやぶさ2」搭載カメラInCAMについて

「InCAM」という謎のカメラはいったい何なのか

質問し忘れていたため回答はありません。(申し訳ない…)

質問者による回答のリンクを載せます。https://twitter.com/TransTerraScape/status/1190616211991621633



Q4, Q5:太陽発電衛星について

Q4:「太陽発電衛星」で太陽発電衛星では大型建造物を宇宙に作る技術が重要となる。

先日発表されたHTV-Xの構想では「大型展開構造物の運用実験」というのがあったが、この利用は考えているか?

https://fanfun.jaxa.jp/jaxatv/files/20191031_htv-x.pdf

A:実用の前に、小型の太陽発電衛星を宇宙にもっていって実証実験を行う必要はある。

Q:HTV-Xの利用は?

A:しない。

太陽発電衛星と受電装置(レクテナ)の概念模型。衛星の太陽電池とレクテナはそれぞれ2km近いサイズがある。

Q:太陽発電衛星ってどれくらいの大きさ?

A:2km四方。ものすごい大面積で発電し、電気を電波に変えて地上へ送信する。地上でキャッチした電波を電気に変換して使用する。そのままの大きさだと当然ロケットに入らないので、100m四方の太陽発電衛星を正方形状に折り畳んだものを多数打ち上げて、それを軌道上で組み合わせて2km四方にする。折りたたむ構造は形状記憶合金を使用。太陽発電衛星は静止軌道上(3万6000km)に打ち上げる。地上の受電スポットも2km級のサイズで羽田空港くらい大きいが、宇宙から見ると小さい。そこに正確に狙える技術が必要。地上に送信するときの電波は、大気による減衰のない周波数を選ぶ。

エネルギー密度を低くして送信するので、鳥が電波を浴びても焼き鳥にはならないみたい。


Q5:関連して、太陽発電衛星では作られた電力を無線送電するが、これは主に衛星から地上の受電設備に行う形であると理解している。

もしも発電衛星から他の宇宙衛星に送電できれば太陽光パネルが不要となる他イオンエンジンなどの大電力設備の運用が楽になると思うが、そういった検討は行なっているのか?

A:そのアイデアは魅力的で、将来絶対やると思う。ただ今の段階で考えているのは、衛星ではなくドローン。飛んでいるドローンに電波を送って充電をするというのを考えている。充電が足りなくなったらドローンがやってきて、空中で充電する。これが大規模になったのが人工衛星になると思う。ドローンへの電波による給電は地上から空中に向けて電波を発射する。

まずはドローンで実用化して、今後衛星への給電へ。ただ距離が問題で、ドローンなら数十mだが、衛星になると数千、数万kmの距離に電波を正確に飛ばす必要がある。

太陽発電衛星の実現のカギとなる3つの技術分野について。発電所を宇宙に作ることの大変さが伺える。

 



Q6:月惑星の縦孔・地下空洞探査UZUME計画について

月の縦孔は溶岩チューブの天井が破壊されたものと理解している。
探査方法はすでにある孔に降りる方法以外にも溶岩チューブは月面に多数あるので任意の点で穴を掘る方法もあると思う、後者の方が探査の自由度は高いように思えるが検討は如何に?

A:かぐやが見つけた月の縦穴の層の厚さが、マリウス丘のだと20mくらいある。縦穴の直径は50mほど。20mも掘るのはなかなか難しいのと、溶岩チューブがあるのはわかっているが、どこまで広がっているかがわからないということがある。一応50kmくらいの規模があるかもしれない。
かぐや(SELENE)が最初に発見した縦穴、「マリウス丘の縦穴」の解説ポスター。


Q:
かぐやのレーダサウンダーで地下空洞の場所は特定できない?

A:レーダサウンダーも信用はできるが、レーダサウンダーは月面地下空洞からの反射を捉えるのと、層からの反射も捉えてしまう。地球の地層のように含まれている物質が層ごとに異なっていた時、例えば地中の真ん中くらいの層にレーダーを反射する物質の層があったとき、レーダサウンダーは層からの反射を捉えてしまう。地下空洞による反射と思っていたのが、実は地層による反射であった可能性もある。その判別がわからない。

 なので、正確に地下空洞の位置を特定するのが難しいのと、穴をあけるのが難しいこと、あとは近くに穴を掘ると天井が崩れちゃうかもしれないというのがあるので、穴をあけるというよりかは今あるもの(縦穴)を活用してゆく。

月面の縦穴と溶岩チューブを再現した模型。2017年の特別公開で見たかも。



Q7:深宇宙探査技術実証機 DESTINY+について

いくつかの資料で2018年度に設計開始で2021年には打ち上げとなっているが、現在でもこの日程で進んでいるのか?もしもトラブル等で遅れてしまった場合は探査対象小惑星の変更、あるいは数年に及ぶ軌道設計の変更で対応できるのか?

A:打ち上げの予定は2022年度。フェートンに到着するまでに3年、4年かかる。

もし打ち上げの予定が遅れた場合、フェートンとの位置関係によって変わってくる。

Q:フェートンの軌道周期くらいずれる?

A:そこまではわからないが、打ち上げ時期がズレると年単位で遅れちゃう。

DESTINY+の軌道設計ポスター。書かれている文章は2018年特別公開のものと同じ。


さらっとブースのお兄さん(イオンエンジンの研究をしている方)が、打ち上げ予定を「2022年度」と言っていましたね。

D+に関する論文には2022年10月の打ち上げの例が載っているので、こちらのスケジュールでいくのかも?
こちらの資料も参考になれば。
Modelling DESTINY+ interplanetary and interstellar dust measurements en route to the active asteroid (3200) Phaethon
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0032063318303647

DESTINY+ Trajectory Design to (3200) Phaethon
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs40295-017-0117-5



Q8, Q9:はやぶさ2の帰還後の予定について

Q8:はやぶさ2が地球に帰還してカプセルを投下した後、どこへ何しに行くなどの予定は決まっている?

A(SCI担当の佐伯先生に伺いました):今まさに検討中。どこへいけるのか検討中。

Q9:地球に向けてカプセルを分離した後に地球スイングバイで加減速が可能なのか?

A(佐伯先生):カプセルを地球に降ろす軌道に入れるので、自由には選べない。カプセルを放出した後の軌道は決まってしまう。地球帰還はスイングバイという形にはなるが、なかなか良い軌道ではないのて、次どこかへ行くには時間がかかってしまう。何年も、数年、10年単位でかかる可能性もある。

Q:ちなみに帰還後のはや2の予算は?

A:まだついてない。予算的な意味でもできないかもしれない。

はやぶさ2のミッションロゴシール(リュウグウ探査Ver.)最近になり帰還フェーズVer.のロゴも公開された。帰還後のミッションが決まれば、延長ミッションVer.のロゴが出るのかもしれない。

 

以上、Twitterで募集した質問とその回答でした。
特別公開という貴重な場で興味深い質問をいくつもすることができ、なかなか知ることのできないコアな情報を得ることができました。と同時に自身の勉強にもなりました。


見学レポの中編・後編では、私自身が質問した内容とその回答、あとは特別公開で撮影した写真などを多数紹介しようと思います。

中編は→コチラから
後編は→コチラから

【講演会レポ】はやぶさ2から探る地球の水の起源(後編)

前編は→コチラから

 はやぶさ2から探る地球の水の起源」講演会レポの後編です。

 前編では地球の水の起源と、はやぶさ2の探査の科学的な目的について触れていきました。後編ではNIRS3による小惑星リュウグウの観測成果を中心に、質疑応答の内容を紹介します。帰還後についてのプチ情報も。


NIRS3の観測成果




はやぶさ2には、近赤外分光計「NIRS3(ニルススリー)」が搭載されている。放射冷却で機器を-80度まで冷やすために表面が鏡のようになっている。この装置は、小惑星表面の組成や水分を含む鉱物の存在を調べることができる。

写真の右のグラフは、NIRS3と”似たような装置”で測定した、隕石の反射スペクトル。赤い線は含水率の少ない隕石を、青い線は含水率の多い隕石の反射率を示している。両者の違いは、青い線が3μm周辺の波長で下がっている。これは隕石に水分(含水鉱物)があり、含水鉱物によって3μmの光が吸収されていることを示している。




はやぶさ2はNIRS3を用いてリュウグウ表面の観測を実施。リュウグウの含水鉱物について、まずはその場観測でデータを得る。



観測結果がこのグラフ。この結果からわかることは2つ。1つは、反射率が非常に低い(約2%)ということ。リュウグウはものすごく黒い。もう1つは、2.72μmのところに吸収が見られたこと。含水鉱物の存在が示された。




グラフの黒い線がNIRS3で測定したリュウグウの反射スペクトルで、ほかのカラフルな色の線は炭素質隕石のもの。先生たちはリュウグウに到達するまで炭素質隕石のようなスペクトルがNIRS3の観測で得られるだろうと思っていた。結果、ふたを開けてみれば全然吸収が無いスペクトルが得られた。衝撃的だった。リュウグウは予想していたよりもかなり水分が少なかった。しかしながら、リュウグウは一般的な炭素質隕石とは違っているものの、水色・赤い線のような隕石とは似ていた。その隕石は500℃程度の加熱やある程度大きい衝撃といった変性を受けた炭素質隕石なので、リュウグウは加熱や衝撃を受けた物質でできていると考えられる。

 実はもう一つ可能性として考えられるものがあって、隕石で考えると"変質している物質"だと考えられるが、"我々がまだ隕石として持っていない物質"である可能性もある。2020年にサンプルが地球に届いたら、その謎が解ける。


前半で触れた小惑星リュウグウの表面が均質かどうかについて。これもNIRS3の活躍によりわかってきた。

上の図は、リュウグウ表面の含水鉱物の量のムラを表している。一見表面には地域差があるようにも見えるが、この差は非常に小さくて、誤差を考慮すると有意な差ではないと考えられることから、リュウグウの表面組成は均質であるといえる。また、はやぶさ2が持つ別の観測装置(LIDAR)を利用して測定したリュウグウの重力から求めたリュウグウの密度は1.2 g/cm^3。この値は中身がスカスカ(空隙)であることを示している。岩石と比べると半分かそれ以下。これらのことを考えると、我々の仮説(リュウグウ内部に水が閉じ込められている)はおそらく正しいといえる。ただしはやぶさ2持ち帰ったサンプルのデータも調べて、その結果とリュウグウの観測結果を最終的に統合して結論を出していく必要がある。

 

最後に、来年の12月にはやぶさ2は地球に帰還し、カプセルをオーストラリアのウーメラ砂漠に届ける。はやぶさ2が持ち帰ったサンプルの情報とNIRS3の観測結果を統合して、さらに結果を出していきたい。引き続きはやぶさ2に注目していただけたらと思う。ご清聴ありがとうございました。




質疑応答

ここから、質疑応答の時間に入りました。今回の講演会は質疑応答の時間に私も質問することができました。なんと2回も!その質問と回答を紹介します。

まずは質疑応答開始直後に手を挙げて、ここでしか聞けない質問をしてみました。

Q1:先生ははやぶさ2の近赤外分光計に携わったということで、装置の開発とリュウグウの観測全体を含めて一番大変だったことは何ですか?

A:大変だったことは山のようにあった。正直なことを申し上げると、NIRS3は開発が難航して、もしかしたら載せられない…くらい大きな問題があった。というのも、設計はしてみたものの、組み立ててみたら予想していた性能が出ないということが開発の途中で起こった。その時は本当に大変だった。最終的には問題をクリアできて搭載することができた。この問題を解決できたのは、いろんな人たちの協力を受けることができたから。NIRS3が大きな問題を抱えているということで、いろんな人たちが、それぞれの仕事があるにも関わらず、かけもちでNIRS3の開発に加わっていただいて、問題を解決することができた。この事が一番大変だった。

 

この答えを聞いたときは驚きました。開発が難航していたことは知っていたものの、リュウグウでのNIRS3の観測運用が一番大変だと思っていました。(当初は水がないという観測結果だったので)

実際、NIRS3の問題は「はやぶさ2計画を実施する意義すら薄れる」という声が上がったと記述している文献(はやぶさ2の真実/松浦晋也)もありますし、2014年というタイムリミットが設定されている以上、後がない状態での開発は想像以上に大変であったようです。多くの人たちの協力によって、NIRS3の問題が解決し、リュウグウ観測で活躍しているのは、なんとも心温まるお話です。

 

他の聴講者からの質問もありましたので、主なものを紹介します。

Q:北里先生のリュウグウ想像図は、赤道の尾根など実物にそっくりでびっくりした。この形はどのように予想されたのですか?

A:タネを明かすと、小惑星の専門家は、私に限らずこういう絵を描くと思う。それはなぜかというと、地上の望遠鏡・レーダー観測で形が分かっている小惑星の形は、大きく2つに分けられる。イトカワのような長細い形と、もう1つは丸っこい形。丸っこい小惑星はリッジがよく見つかっている。リュウグウは地上からの観測で丸っこい形であることが到着前に分かっていたので、リッジがあると推測して描いた。なので、小惑星を研究している人ならこれに行き着く。

 

Q:リュウグウ表面は水があまり含まれていないという観測結果はどういうことですか?

A:この(水があんまり含まれていないという)観測結果について、今年の3月くらいに論文が出たことに合わせて記者説明会をしたが、それよりも割と早い段階、最初の観測(リュウグウの初期観測)が終わったくらいに記者説明会をしたときには、「リュウグウ表面に水はない」と発表した。それは新聞の記事にもなった。これは初期に観測で得たグラフを見たときは、我々が吸収と言っているもの(2.72μm付近の凹み)は本当に正しいのか自信を持って言えなかった。元々想定していたものよりもだいぶ暗かったので、ノイズが非常に大きかった。最初の段階ではこれはノイズだろうと思っていたけれど、チーム内の人たちと協力して、ノイズを減らすための観測をちゃんとやって、その結果、ベストな計算としてグラフにした。誤差を考えても吸収は有意であることが確認できたので、最終的に我々は含水鉱物の発見を発表した。ただ予想していた(炭素質隕石のような)吸収よりはだいぶ小さかった。


リュウグウの初期観測結果から一転、今年のリュウグウに水があったとする発表の裏側には、このようなことがあったんですね。

Q:2回目のタッチダウンの新聞記事を見て疑問に思ったんですが、人工クレーターで吹き飛ばした地下の物質を採取すると思ったら、記事には周辺に吹き飛ばされた破片を採取すると書かれていた。2回目のタッチダウンはどのような所を狙って行ったのか、教えてください。

A:おっしゃるとおり、2回目のタッチダウンは人工クレーターから10mくらい離れたところに着地してサンプルを採取した。そこには飛び散った破片、つまり地下物質が積もっていると考えられたから。なぜもっと近くにタッチダウンしなかったかというと、衝突装置でできたクレーターが我々の予想以上に大きくて、深かったから。近くへタッチダウンすると、間違って穴の中に入ってしまう危険性があった。なので、より安全を考えて、大きなボルダー(岩)が少ない安全な所へタッチダウンを行った。

質疑応答の時間がまだ残っていたので、せっかくなので2回目の質問をしてみました。

Q2:今年の終わりにはやぶさ2は地球に帰還を始めるということで、帰還開始までにリュウグウに水はあるのか、詳しく調べるといった予定はありますか?

A:今回の説明にはなかったが、小惑星リュウグウのほとんどの場所は観測できている状態。で、今回お見せできなかったが、人工クレーターの中の観測も行っていて、その結果は、実は表面と差が見えない。つまり表面も内部も似たような水分量おそらくこれ以上くまなく探しても、新しいことは見つからないだろうと考えている。できるだけの観測はしようと思うが、これ以上目新しいことは出てこないだろう。

で、これはまだ決まった話ではないが、また別の議論をしていて、はやぶさ2は来年地球に戻ってきた後、探査機自体は宇宙空間を飛び続ける。幸いなことにわりと推進剤が残っている。もしかしたら、もう一つリュウグウとは違う天体に行ける可能性があるので、そっちの検討をこれからしたいと思っている。

 

 既に人工クレーター内の観測は終えていて、表面との大きな違いは見られなかったとのこと。予想外の答えでした。これからあと数ヶ月、NIRS3の観測で大きな発見はなさそうとのことですが、帰還後の検討が進められるとのことなので、そちらも注目していきたいですね。てか帰還後は別の天体に向かうって!! 今、関係者からこの言葉を聞けたのはうれしい!(少なくともラグランジュ点行きはなさそう)まだ決まった話ではないですが、水が豊富な小惑星へ向かうのだろうか、推進剤の材料はいかほどだろうか、スイングバイはするのだろうか等々、いろいろ想像が膨らむ話です。楽しみです。

 

ここでまた司会者からの質問が。

Q:はやぶさ2の後の探査機の計画などはありますか?はやぶさ3などはありますか?

A:はやぶさ3という計画はないが、次は火星の衛星からのサンプルリターンを計画している。これはMMXと呼ばれている。火星の衛星のフォボスダイモスという天体のどちらかに着陸して、地球に帰ってくる計画が立てられている。打ち上げの予定が2023…4年にある。

 

Q:なぜ宇宙を志そうと思ったのか、きっかけはなんですか?

A:きっかけは学生時代。大学に入って隕石を顕微鏡で観察する授業があって、隕石の顕微鏡画像がすごいキレイだった。隕石はコンドリュートという丸い物質があって、それがきれいに光って見える。なんでこんなものができるんだろうと不思議になって、そういう研究の道に進んだ。隕石の研究をやるうちに、はやぶさのことを知って、はやぶさの研究をやったら、その次ははやぶさ2に関わることになった。

 

Q:地球の水の起源を探る研究は日本が先導しているものなのか、各国が競い合っているのか、どうなんでしょうか?

A:実は地球の水の起源を解明しようという流れは日本が"うり"としてやっていこうとしている。もちろん海外も注目はしているが、日本の場合はやぶさ2があるし、MMXも地球の水の起源の解明につながる。なので地球の水の起源は、日本がリードしてやっていく分野ではある。



講演会後の+α



講演終了後、司会者の方に「お話していかなくていいですか?まだお時間あるので」と呼び止められ、北里先生とお話しすることにしました。(はい喜んでー!)講演会の後はこうして講演者に直撃質問できると今更ながら知りました。これはありがたい!!!

まず北里先生にはやぶさ2のサイエンスについて勉強になったことを伝え、それから質疑応答では聞かなかった+αの質問をしてみました。

Q+1:今後行われるMMX(火星衛星探査計画)に、北里先生は協力されるといったことはありますか?

A:まだはやぶさ2が忙しかったのもあって、声はかけていただいたがお断りしていた。だんだん落ち着いてきたので、一緒にやれたらなと思っている。

 

Q+2:今ははやぶさ2に集中?

A:そう。エクステンデッド(EXTENDED)という、還ってきた後のミッションをぜひやりたいと考えている。

 

Q+3:別の天体にそろそろ行こうと皆さん考えている感じ?

A:そうです。


直撃質問に答えていただけて、至極感激でありました。ありがとうございました。

はやぶさ2帰還後のミッションは「エクステンデッド」と呼ばれているそうです…!カッコいい…!文字通り延長ミッションというわけですね!エクステンデッド、良い響きです!

トラブルに見舞われた初代とは違い、はやぶさ2は地球帰還後も太陽系の航海を続ける。はやぶさ2が別の天体へ行くとなれば、誰も見たことのない景色を、またはやぶさ2が見せてくれることでしょう。はやぶさ2のその後の航海も楽しみにしたいと思います!!

 


関連資料


講演レポを読んでもっと詳しく知りたくなった人向けに、関連する資料を紹介します。

火の鳥はやぶさ」未来編 その7 ~NIRS3とC型小惑星の水~ 北里 宏平,はやぶさ2 NIRS3チーム

https://www.wakusei.jp/book/pp/2014/2014-3/2014-3-288.pdf
↑今回の講演における、リュウグウ観測以外の情報はこちらにあります。講演内容を追体験したい方は是非チェック!


予想外、水が枯渇しているリュウグウ - アストロアーツ
https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/10089_ryugu
↑2018年8月のはやぶさ2の記者説明会で発表された「リュウグウ表面に水がほとんど存在しない」件に関する記事。


C型小惑星に水分子を求めるNIRS3:日経デジタルヘルス
https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/article/COLUMN/20141125/390666/?ST=health
↑近赤外分光計NIRS3に関する記事。NIRS3開発難航についての記述があります。