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みんなの想い、天空へ H3ロケット試験機2号機 打ち上げ見学旅行記(4)

前回(3)はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

旅行記(1)はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

 

新潟在住の宇宙機ファンがH3ロケット試験機2号機の打ち上げを見に行ったお話。

 


みんなの想い、天空へ

H3ロケット試験機2号機 打ち上げ見学旅行記(4)


 

前回はH3ロケット試験機2号機(H3TF2)の機体移動の模様と、種子島各所で撮影したロケット写真を紹介しました。

今回はいよいよ打ち上げ編。

 

H3TF2の打ち上げ日は2024年2月17日。奇しくもH3ロケット試験機1号機の幻のリフトオフと同じ日になりました。

この1年で多くの人々がH3ロケットについて思いを巡らせたことでしょう。打ち上げ中止の原因や、打ち上げ失敗の悲しみ、再発防止策、H3の今後、そしてH3TF2の打ち上げ。

 

2024年のこの日。1年前と同じ日、同じ場所にH3ロケットが居る。H3ロケットの打ち上げを実証するために。衛星を宇宙へ送り届けるために。日本の宇宙開発の未来を繋ぐために。

これから行われるのはH3ロケットのRTF(Return To Flight)。


約3000通の応援メッセージが記されたフェアリング

みんなが待ち望んだRTF。

H3ロケットの関係者はもちろん、搭載衛星の関係者や、地元の方々、H3で打ち上げ予定の宇宙機の関係者、宇宙ファン、打ち上げ見学者etc...

 

今日、H3TF2はみんなの想いを載せて打ち上がる。

 


みんなの想い、天空へ 打ち上げ当日(2024年2月17日)


 

夜明けとともに起床し、私はIさんと共に打ち上げ見学場所の長谷展望公園へ移動。

打ち上げ時刻は午前9時22分55秒だ。

 

6時半に長谷展望公園に到着。射点の見える芝生エリアへ行くと、打ち上げの3時間前ということもあって思いのほか見物人がいた。


暗くて見えづらいが、最前列には三脚がズラリ並んでいる

 

我々も三脚を立てて明け方H3ロケットを撮影。


6:44 長谷展望公園から EOS90D 450mm F6.3 1/80s ISO800

第一射点(VABの左側)から打ち上がるH-IIAロケットと違い、H3ロケットは第2射点なので機体の上半分が遮られることなく見られる。良い場所だ。

 

撮影後、私は宇宙ヶ丘公園にカメラをセットするため、Iさんに場所取りを任せて長谷を離脱する。離脱時間は30分程度。

本来であれば打ち上げ2時間前から見学場所で待機しているべきである、なぜなら打ち上げの2時間前に長谷展望公園を離脱するのは①駐車場の満車の危険がある②打ち上げの心の準備の妨げとなるためあまり褒められたことではないからだ。

だが、宇宙ヶ丘公園からの映像を収めるため、やるしかない。

 

宇宙ヶ丘公園に到着後、H-IIAF48の時と同様にカメラをセット。

宇宙ヶ丘のテレメータ施設をチラリみると、意外なことにアンテナはロケットの方を向いていなかった。このアンテナはH3の打ち上げには使われないのだろう。とすれば、H-IIAロケットの引退後、このアンテナは解体されるかも…?

 

さて、早く長谷展望公園に戻らないと駐車場が満車になってしまう。

とはいえせっかくなので宇宙ヶ丘公園からH3ロケットを撮影。これを見た人の打ち上げ見学場所検討の参考になれば幸いだ。

←157mm F8.0 1/500s ISO160  600mm F6.3 1/2000s ISO200→
7:27 宇宙ヶ丘公園から EOS90D 

 

打ち上げ1時間40分前に長谷展望公園へ帰還。幸い駐車場には空きがあり、無事駐車することができた。

ところが、ここから状況は予想外の方向へ進んでゆく。

 

なんと昨日会ったテント泊の学生さんが「上里にビデオカメラを置きに行きたい」と言ってきたのだ。おいおい、こちとら超焦りながら戻ってきたというのにまた車を出さないといけないのか。上里への往復は15分かかる。最悪の場合駐車場が満車になってしまうぞ。路駐なんて嫌だぞ。勘弁してくれ!

…だが、ビデオカメラを設置したいという気持ちはよく分かる。私自身、カメラを6台持ってきて、ついさっき宇宙ヶ丘公園に1台セットしてきたのだから。

 

内心行きたくは無かったが、ビデオカメラを設置するだけならそう時間はかかるまい。やむなく学生さんを載せて上里へ。8時に上里の某所に到着するとそこには私と相互フォロワー(X)のOさんが。

Oさん謹製の宇推くりあボード。かわいい!!

 

そして学生さんはビデオカメラを設置し…OさんのPCに接続し始めた。

 

ん 、 な に を し て い る ?

 

どうやらビデオカメラをOさんのPCにつないで映像を配信するつもりのようだ。置くだけじゃないのか…

8:04 上里某所から EOS90D 600mm F6.3 1/1250s ISO100

 

しかし待つこと5分、10分…作業は一向に終わらず。時刻は8時12分…打ち上げの70分前になった。もう限界だ。急かして長谷へ帰還する。

 

しかし、時すでに遅し。

 

私たちを待っていたのは、長谷展望公園「満車」の看板と渋滞であった。

この時、打ち上げ65分前。絶望が思考を埋め尽くし、胸が締め付けられる。本来であればカメラ5台のセッティングで忙しいはずなのに、私は何をやっているのだろう。

もはやできることといえば誘導員の指示通りに車を走らせることだけ。

 

すると、車が空き地にどんどん入っていく。

どうやら空き地は駐車場のようだ。公園の駐車場が満車の時は臨時駐車場が解放されるのか!

なんとか車を停めることができたものの、しかし長谷展望公園まで1km、学生さんとカメラを抱えて徒歩で向かう。

 

息切れしながらIさんの元に帰還したのは打ち上げ50分前のこと。大急ぎでカメラ5台を立ち上げる。

あたりを見回すと、公園後方の屋台に向かって長蛇の列が伸びている。Iさん曰くH3ロケットのクリアファイル・バッジの配布をやっているのだそうだ。誇らしげにクリアファイルを見せてきた。

 

私も欲しい気持ちもあったが、カメラのセッティングでそれどころではない。

 

1か月前のH-IIAF48の時は4台のカメラを使ったが、今回は1台増えた。その1台は長谷展望公園の手ごろな場所にセット。残る4台は私のそばで使う。


カメラ群の集合写真

今回のカメラ構成は次の通り。上記の写真に写る機材は1~4だ。

1:超望遠静止画:Canon「EOS 90D」+SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM Contemporary
2:超望遠動画:Panasonic 4Kビデオカメラ「HC-VX985M」
3:中望遠動画:CanonEOS Kiss X5」+Canon EF-S 55-250mm 
4:広角動画:スマホ
5:広角動画:パノラマカメラ
6:広角動画:パノラマカメラ@宇宙ヶ丘公園

 

9:02。打ち上げ20分前にやっとセッティングが終わり、射点を撮影できた。打ち上げ前恒例の散水が行われている。

よし、なんとか間に合った。

 

9:12 公園の仮設スピーカーが打ち上げ10分前の最終GO/NOGO判断が「GO」となったことを告げる。

次いでカウントダウン音声が流れ始めた。

480, 79, 78, 77…

H-IIAロケットの時とは異なる機械音声お姉さんだ。そうだ、私はH3ロケットの打ち上げを撮るのだ。H-IIAではない。ただ私はこの時点でも"打ち上がらないかもしれない"と思っていた。ちょうど1年前がそうだったように、何か異常が起きれば、メインエンジンに点火したとしてもH3はリフトオフしないのだ。

リフトオフの瞬間まで打ち上がるか分からない、そんな不確定要素を撮りに、私はここに来た。

 

280, 79, 78…

深呼吸をし、H3TF2に向き合う。ようやく落ち着いて精神統一できるようになった。

今日の打ち上げはただの打ち上げではない。H3ロケットのRTFだ。この成功によって、H3ロケットで打ち上げ予定の宇宙機が宇宙への切符を手にすると言っていい。

MMXALOS-4、HTV-X、ETS-9。LUPEXに、LiteBIRD。H3に乗る宇宙機たちの名前が脳裏をよぎる。

MMXALOS-4、HTV-X

ETS-9、LUPEX、LiteBIRD

 

そう、あのH3ロケットで、数多くの宇宙機が宇宙へ行くのだ。

 

30, 29, 28…

 

「頼むぜ。」私はシャッターボタンに指を添えた。

 

2/17 9:22:55 LIFT OFF


9:22 長谷展望公園から EOS90D 421mm F9.0 1/1250s ISO100

 


9:22 長谷展望公園から EOS90D 421mm F9.0 1/1250s ISO100

 


H3ロケット、氷解(トリミング画像)

打ち上げ時の振動で機体を覆っていた氷が剥離している。まるでアニメ映画「王立宇宙軍」の打ち上げシーンのようだ。

 


みんなのH3ロケット、天空へ
9:22 長谷展望公園から EOS90D 238mm F9.0 1/1250s ISO100(画像修正済み)

 

H3ロケットは上昇を開始。H-IIAよりもゆっくりめに感じたが、動画を見返しても大きな速度差はなかった。


9:23 長谷展望公園から EOS90D 275mm F9.0 1/1250s ISO100

 


9:23 長谷展望公園から EOS90D 600mm F9.0 1/1250s ISO100

 

上昇するH3ロケットを撮影していると、ロケットの爆音が聞こえてきた。H-IIAF48よりも音量は控えめだが、「バリバリ」という音はH3の方がハッキリ聞こえた。

 


光に包まれて
9:23 長谷展望公園から EOS90D 516mm F9.0 1/1250s ISO100

太陽に近づいたのか、H3ロケットの周りが光に包まれた!

まるで現実とは思えない光景だ。後で見返してわかったことだが、H3TF2は太陽の真ん前を突っ切っていた。


太陽を射抜く (スマホ広角動画切り抜き)

 

さらに上昇するH3TF2。背景を流れる雲が次第に速くなっていく。

とその時、──H3ロケットが虹色に包まれた。

 

 

静止画でも撮影できていた。なんと幻想的な光景であろうか。

 

その後もH3は飛行を続け、みるみるうちに小さくなっていく。

打ち上げから116秒後のタイミングでSRB3の分離が行われる。無事に分離できるか、緊張の瞬間だ。


SBR-3分離 2024/2/17 9:24」

 

SRB3分離キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

お見事!2基のSRB3が整然と分離。白い航跡が分かれるのが見えたのであろう、見物客が「分離した!」「みえる!」と歓声を上げる。

 

ちなみに写真のトリミング前後はこんな感じ。

←9:24 長谷展望公園から EOS90D 600mm F9.0 1/1250s ISO100  トリミング後→

600mmのレンズでもこの小ささ。

 

続いて真ん中のコア機体が姿勢を変える「ドッグレッグターン」を撮影。

←SRB-A分離後 ドッグレッグターン後の機体→

10数秒のあいだにロケットはぐいーんと姿勢を変える。

ちなみに「ドッグレッグターン」は必ず行われるものではない。今回は「地球の南北を通る極軌道衛星」の打ち上げなのでドッグレッグターンが行われるが、静止衛星宇宙ステーション補給機の打ち上げの場合、軌道が異なるためドッグレッグターンは行われない。

また、天気が良くないとドッグレッグターンを見ることはできない。条件が揃った時だけに見られるレアシーンなのだ。

 

さて、撮るものを撮ったのでカメラを三脚に戻す。H-IIAよりも長い打ち上げだった気がする。撮った写真をスマホに送り、Twitterでみんなに共有。


H3ロケット試験機2号機 2024/2/17 9:22」(トリミング・修正後)

 

ロケットの方は第2段の燃焼が開始。あとは衛星分離まで正常にいけばいいが…

打ち上げから何分経ったかは覚えていない。しかしその時は来た。

公園の仮設スピーカーが告げる。「CE-SAT-IE分離」

 

うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!

その後もH3TF2は飛行中だが、1つ大きな役目を成し遂げたのだ。キヤノンの衛星は宇宙へ行った。H3ロケット試験機2号機は成功したのだ。

もう心の底から叫んだ。「よっしゃー!!」

全身が喜びに震える。1年間のモヤモヤが吹き飛んだ思いだ。

私はぴょんぴょん飛び跳ねて喜んだ。

・・・

衛星分離後、私はIさんとテント泊の学生さんを連れて宇宙センターへ向かった。彼らは移動発射台を撮影しに行くが、私は別のことをする。…打ち上げ記念アートの作成だ。

 

2週間かけて描いた推しのイラストと、今日撮れたての打ち上げ写真を組み合わせて一つのアートにするのだ。

もしも打ち上げが見られなかったり、打ち上げが失敗していたら?考えるだけでも恐ろしいが、私は暗澹たる気持ちになっていただろう。そのリスクを覚悟していた分、喜びもひとしおだ。

 


打ち上げ成功記念アートの作成

お祝いの言葉を記すたびに、心が喜びで満たされるのを感じる。

ああ、なんて幸せなんだろう。

 

アートを完成させて投稿。ご本人にも見ていただけて、配信でも紹介いただきました!

https://twitter.com/clearusui/status/1758863417455366535

【#H3】#くりあH3 H3ロケット試験機2号機記者会見!#宇推くりあ - YouTube

 

最高に嬉しかった!!

打ち上げ後も笑顔に過ごすことができて、本当に良かった。

 

みんな、みんな、おめでとう!!

 

さて、このあとは打ち上げ後ならではのお楽しみへ。

次回「余韻を楽しもう」

みんなの想い、天空へ H3ロケット試験機2号機 打ち上げ見学旅行記(3)

 

前回はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

旅行記(1)はコチラ

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新潟在住の宇宙機ファンがH3ロケット試験機2号機の打ち上げを見に行ったお話。

 


みんなの想い、天空へ

H3ロケット試験機2号機 打ち上げ見学旅行記(3)


 

前回は種子島上陸1,2日目の様子をまとめました。

 

今回はH3ロケット試験機2号機(H3TF2)の機体移動を見学&撮影します。

初めて見るH3ロケットは果たしてどんな姿なのだろう!

 


機体移動を見よう! 打ち上げ1日前(2024年2月16日)


 

大型ロケット組立棟(VAB)で組み立てられたロケットが、打ち上げ前にVABから射点へ移動する。それが「機体移動」だ。


ロケットの丘から見たVAB(左の建物)と射点(赤白の鉄塔)

 

H-IIA/IIBロケットの場合、機体移動は一般的に打ち上げの13~15時間前に行われる。しかしH3ロケットはその常識が通用しない。

H3TF1:打ち上げは「午前10時37分55秒」機体移動は「前日16時00分~」
機体移動は打ち上げの約18時間前 ※2月17日及び3月7日の打ち上げ共通。

H3TF2:打ち上げは「午前9時22分55秒」機体移動は「前日15時00分~」
機体移動は打ち上げの約18時間前

 

理由は不明だが、H3ロケットの機体移動は今のところ打ち上げの18時間前に行われるようだ。

 

なお機体移動の時間帯は記者説明会で事前に公表される。ただし政府のひみつ衛星(例:情報収集衛星)の打ち上げの場合、機体移動の時間帯は公表されないので注意が必要だ。

 

機体移動の見学場所はいくつかあるが、今回も(H-IIA F48の時と同じく)見晴らしのいい「ロケットの丘」に決定。場所を確保し、後はイラストの色塗りをしながら機体移動の時間を待った。


くりあちゃんの色塗りの様子

色塗りは数時間かかる作業なので、休憩がてらロケットの丘に顔を出す。アメリカ帰りのプロカメラマンの人とお話したり、VABを眺めたりしていると、ロケットの丘に青い服を着た男性が現れた。どこかで見た顔だな…

 

えっ、岡田PM!?

 

なんとH3ロケットのプロジェクトマネージャーの岡田さんロケットの丘に来訪されたのです。岡田PM曰く、お昼休みに顔を出しに来たとのこと。

ロケットの丘にいた見学者はみんな大興奮。さらに岡田PMは快く記念撮影&サインに応じてくれました。

私はアメリカ帰りのプロカメラマンさんのカメラで岡田PMとプロカメラマンさんの2ショットを撮影。シャッター速度が遅く、白飛びしたのでシャッター速度を調整してさらに撮影。良い写真が撮れたと思う。これがカメラに詳しくない人だったら白飛び写真のままになってたかもしれない。自分のスキルが役立ってうれしかった。


ロケットの丘でサインを頂いた見学者の1枚。(撮影許可済み)

それにしても、岡田PMにお会いできるとは…私は手短に「応援しています。」と伝え、岡田PMと記念撮影&握手をしました。とても力強い握手でした。


岡田PMと私。H3TF2のいるVABを背景に。

岡田PMは見学者の方々に「みんなの応援が推進力です」「タイムスケジュールは順調です」と伝えると、風のように去っていきました。打ち上げまで24時間を切った中、こうして見学者にあいさつに来てくれるとは…暖かい心遣いに胸が熱くなりました。

 

その後ロケットの丘にいると、若い男性が私に声をかけてくれました。おや…どこかで見た顔だな。

なんとH-IIA F48の打ち上げ見学でお会いした「テント泊の学生さん」ではないか!さらには長谷展望公園で一緒に打ち上げを見た「打ち上げの常連っぽいおっちゃん」もいた!

驚くべきことに、学生さんもおっちゃんも私も本州に住む人間である。種子島在住の人ではない。なのにH-IIA F48の打ち上げから1ヶ月後、こうして種子島で再び相まみえるとは…物好き連中にもほどがあるだろう(笑)

 

そうこうしているうちに時は流れ、機体移動1時間前となった。くりあちゃんのイラストは無事完成。お昼ご飯は食べ逃した。

あとはH3ロケットの機体移動撮影に全力を尽くすだけだ。

 


撮影準備OK

私が持ってきた2台のキヤノン製カメラがVABを見つめる。

感慨深い光景だ。というのも、H3TF2にはキヤノン電子の衛星「CE-SAT-IE」が搭載されている。つまりキヤノンの衛星を載せたロケットを、キヤノンのカメラで撮るのだ。

私はカメラに「頑張ろうな」と声をかけた。

ずらりと並ぶ、見学者のカメラたち。

 

14:25 VABの扉が開いているのを確認。

←14時ごろのVAB →14:26ごろのVAB

上の2枚の写真、VABの右側を見比べると、扉が移動しているのが分かる。
(余談:VAB内では手前と奥側でロケットを2基組み立て可能。しかしH3ロケットは今のところ写真奥側のVAB-2のみで組み立てられる。)

 

14:58 機体移動開始まであと2分になった。

事ここに至っても、VABの中にH3ロケットがいるとの現実感は無かった。

 

さあ、機体移動が始まる。

 

ここからはロケットの写真を設定付きで公開します。特筆ない限りトリミングは無し。カメラのセンサはAPS-Cサイズ。焦点距離の換算はしていませんのでご注意ください。

15:00 機体移動スタート。

15:01 ゆっくりと、まずはH3ロケットを載せた移動発射台「ML5(Movable Launcher 5)」が姿を現す。


15:25 ロケットの丘から EOS90D 283mm F6.3 1/400s ISO200


白と青の鮮やかな柱が目に飛び込む。H-IIAロケットの移動発射台ではない。ありゃH3の移動発射台だ!

 


15:03 ロケットの丘から EOS90D 335mm F6.3 1/400s ISO200

おお…

H-IIAより太いコア機体、黄色い段間部、なめらかな曲面で構成されたフェアリング

あれはH-IIAロケットではない──

 


15:05 ロケットの丘から EOS90D 347mm F6.3 1/400s ISO200

あれは─

H3ロケットだ!

 


移動発射台の把持機構がみえる
15:06 ロケットの丘から EOS90D 347mm F6.3 1/400s ISO200

移動発射台の2本の柱の間に、鉄骨でできた構造物が見える。あれは今回(H3TF2)からML5に初めて搭載された新機構「機体把持(はじ)装置」(把持機構とも)だ。写真では垂れ下がっている2本のアームが、使用時は「前ならえ」の状態になり、円形の空洞にH3ロケットを抱え込むのだ。ただし把持機構は主にH3ロケットにSRB3が4本ついた「H3-24L」形態の時に使用されるので、今回のH3-22S形態では使用されない

いつか使用されているところを撮りたいものだ。

 


15:09 ロケットの丘から EOS90D 600mm F6.3 1/400s ISO200

 

フェアリングには「RTF」の文字。ああ、この機体はH3TF2なのだな、と認識させられる。

RTFは「Return To Flight(飛行再開フライト)」の意味がある。これが見られるのはRTFであるH3TF2限定だ。

ちなみにRTFの文字にはH3TF2の応援キャンペーンに寄せられた約3000件の応援メッセージが印字されている。私のメッセージもそこにある。

 

みんなの想いを載せて、H3ロケットは明日打ち上げられる。

15:15 ロケットの丘から EOS90D 347mm F6.3 1/400s ISO200

 

フェアリングには「JAXA」のロゴと「H3 JAPAN」の文字もある。

JAXAのロゴが撮れてホッとする。というのも、私はJAXAのロゴは今後H3ロケットから無くなってしまうと予想しているからだ。見学記(1)にも書いたが、H3ロケットは現在JAXAが打ち上げ業務を行っているものの、将来的には三菱重工に移管される。H-IIA/Bでは三菱重工への移管とともにロケットからJAXAのロゴはなくなり、代わりにスリーダイヤが貼られるようになった。

つまりH3ロケットもいずれJAXAのロゴがなくなり、機体のどこかに三菱重工のスリーダイヤが記される可能性が高い、というわけだ。

 


15:13 ロケットの丘から EOS90D 150mm F6.3 1/400s ISO400

H3ロケットの旅立ちの舞台、第2射点が近づいてきた。

ゆっくり、しかし着実に機体移動は進む。


15:15 ロケットの丘から EOS90D 347mm F6.3 1/400s ISO200

丘の切れ目から移動発射台の全容が見えるようになった。

移動発射台の下では2台の運搬車「ドーリー」が移動発射台とH3TF2を運んでいる。


地上をめいいっぱいズーム+トリミング。運搬車には「DOLLY-2」と書かれている

 

地上では30人近い人たちがロケットに寄り添っている。人と比べてH3ロケットのなんと巨大なことよ…

 

機体移動開始から20分。H3TF2は赤白の鉄塔の間に進入。


15:21 ロケットの丘から EOS90D 293mm F6.3 1/400s ISO200

そして、機体移動開始から25分。H3ロケットは射点に到着した。


射点に到着したH3ロケット
15:25 ロケットの丘から EOS90D 302mm F6.3 1/250s ISO200

 

機体移動にかかった時間はH-IIAロケットもH3ロケットも25分だった。

 

私はカメラを片付けた後、呆然と射点を見つめる。

撮影に夢中で今まで意識していなかったが、私がH3ロケットを見るのはこれが初めてだ。これまでCC画像や写真、動画でしか見てこなかった、かつて「新型基幹ロケット」と呼んでいたものが今「そこにいる」。

しかも機体移動を終えて明日のフライトを待っている。

現実とは思えない光景に思わず「やべぇな、機体移動しちゃったよ」と声が漏れる。

 

この後は宇宙センターや南種子町の各所でH3ロケットを撮影した。以下に作例として紹介する。

①ロケットの丘

上記。

②中型射点(へ続く坂道)


16:15 中型射点の坂道 EOS90D 150mm F6.3 1/400s ISO200

 


16:15 中型射点の坂道 EOS90D 600mm F6.3 1/400s ISO200

中型射点は種子島のロケットを一番近くで見られる場所。コア機体(中央の太いやつ)の「JAPAN」の文字がよく見える。ちなみにH-IIA/Bロケットまでは「NIPPON」表記だったが、H3ロケットからは「世界を舞台にして活躍し、世界中の⼈たちに使ってもらいたい」という思いを込めて「JAPAN」に変わっている。

 


宇推くりあ氏のネップリ(デビュー1ヶ月記念)とH3ロケットの2ショット


中型射点からくりあ氏(リスペクト呼び)とH3を一緒に撮影。くりあ氏は現在H3ロケットの応援サポーターをしている。3年前には想像もしなかったことだ。

 

③第4光学入口


16:44 第4光学入口 EOS90D 275mm F7.1 1/800s ISO200

 

ロケットの丘からだとH3ロケットの機体の一部が赤白の鉄塔に隠れてしまうが、ここなら隠れることなく機体が見られる。ここは射点の南南西に位置している為光線状態は良好。

 

④竹崎射点


17:08 竹崎射点 EOS90D 211mm F7.1 1/400s ISO200

 


17:04 竹崎射点 EOS90D 516mm F7.1 1/500s ISO200

竹崎射点はH3ロケットを真横から見られる場所。駐車場も撮影可能エリアも広く、機体移動見学におすすめの場所だ。

なおこれまで紹介した撮影場所は全てロケットから3km圏内にあるので、打ち上げ時には例外なく立ち入り禁止になります。

ファインダー越しに見るH3ロケット

 

⑤上里地区


17:36 上里地区路上 EOS90D 150mm F7.1 1/250s ISO200

 


17:36 上里地区路上 EOS90D 600mm F6.3 1/320s ISO200

 

ここら辺はH3ロケットを正面から撮影できるスポット。駐車スペースが限られているので見学の際は注意。なお各所への撮影はH-IIAF48で出会った学生さんと一緒に行った。

 

⑥長谷展望公園


18:24 長谷展望公園 EOS90D 600mm F6.3 1/20s ISO3200

 

日が暮れてきたので、長谷展望公園で今日のラストショットを撮影。学生さんを長谷の滞在場所に送り、私とIさんは西之表の宿へ帰還。お腹空いた~

 

20時過ぎに宿に到着したが、車の後部座席に見慣れぬスマホがあった。Iさんのものではないという。とすれば…学生さんの忘れ物だ

 

すぐに送り届けねば!

 

急きょお使いミッションが発生。Iさんを宿に残し、私はお昼も夕飯も食べずに急いで車を走らせ、片道30分かけて学生さんの滞在場所へ向かう。私は忘れ物をしたときの辛さ、心細さはよく知っている。

 

その後無事に学生さんと再会し、スマホを手渡しできた時は心底ホッとした。

 

時刻は20時40分。明日の打ち上げを前に早く寝たかったのだが、予定通りにはいかないものである。とはいえ学生さんを責める気は全くない。忘れ物は辛いからね。

 

ただ、もっと早く、忘れ物に気がついてあげられたらと思う…心細かったろう。後悔が頭の中を支配する。くそっ。くそっ!くそっ!!

 

もうヤケだ。早寝プランは放棄して、夜のH3ロケットを撮影してやろう。これくらいの役得がなくちゃね!

空腹とふがいなさで若干キレつつロケットを撮影。

 

○上里地区

 ←150mm F5.0 1/4s ISO400  600mm F6.3 1/20s ISO3200→
18:24 上里地区 EOS90D 

 


H3ロケット 試験機2号機 2024/2/16 22:41」(トリミング・微修正後)

 

闇に包まれるH3ロケットはとても美しかった。

これが撮れたのは学生さんの忘れ物のおかげと考えよう。

それにしても今日は岡田PMに会い、機体移動を撮り、あちこちでロケットを撮影し、種子島を何度も縦断…てんやわんやの1日だった。

 

さあ、明日は打ち上げだ。

次回「みんなの想い、天空へ」

 

みんなの想い、天空へ H3ロケット試験機2号機 打ち上げ見学旅行記(2)

前回はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

 

新潟在住の宇宙機ファンがH3ロケット試験機2号機の打ち上げを見に行ったお話。

 


みんなの想い、天空へ

H3ロケット試験機2号機 打ち上げ見学旅行記(2)


 

前回はH3ロケット試験機2号機(H3TF2)の見学旅行に行くまでの背景をまとめました。

 

今回は種子島への往路と、上陸1・2日目のまとめです。それではどうぞ。

 


種子島へ行こう 打ち上げ3日前(2024年2月14日)


 

羽田空港、朝7時。

夜行バスから降り、空港カウンターで搭乗手続きを済ませる。今回はスカイマークを初めて使う。チケットにピカチュウの絵柄があるけど、コラボでもしているのかな?

搭乗待合室から搭乗機を撮る。今回の翼はB737だ。

鹿児島行きの翼、スカイマークB737(JA73NT)と富士山

 

尾翼の向こうにはなんと…富士山が見える!/(^o^)\フッジサーン

これは嬉しい!澄んだ冬の空気に感謝だ。さらには右手から見慣れぬ黄色い飛行機が現れて…

ピカチュウジェット(BC1・JA73AB)

 

あれは…なんとスカイマークピカチュウジェットではないか!本当にコラボしていたとは!黄色と青のコントラストが最高に美しい。新幹線ファンにとって黄色は幸運の色。なんとも心明るくなる出会いでした。

 

午前8時50分、私を載せた無印のスカイマーク機は羽田D滑走路より離陸。D滑走路は埋立地と桟橋を組み合わせた世界でも珍しい滑走路。リフトオフ間際、窓の外に疾走するジェットフォイルの姿が見えた。

東海汽船ジェットフォイル「セブンアイランド友」

 

羽田空港鹿児島空港のフライト時間は125分。冬の昼間、かつ快晴に恵まれたため、眼下に見える富士山をたっぷり堪能できた。席は右の窓側がオススメだ。


雪を纏う富岳

 

鹿児島空港に到着。種子島行きの飛行機便まで4時間あったので、ラーメンを食べたり航空展示室「SORA STAGE」を見たりして時間をつぶす。展示館には有料のフライトシミュレーターが2種類あった。展示もどれもとても見ごたえがあったので、今度また来たいものだ。

展示見学は無料。夢中になって飛行機に乗り遅れないようにしたい。

展示室を堪能した後は種子島行きの飛行機に搭乗。機内から種子島の宿不足の諸悪の根源 基地化工事の進む馬毛島を撮影。

この光景がどう変わるか、密かな楽しみだ。

 

35分の短いフライトを経て翼は種子島空港に到着。Twitter(現X)のフォロワーIさんと合流し、空港カウンターにてレンタカーを受領。レンタカーは4日間(2/14-18)で24,200円だ

空港到着時は夕方だったので、寄り道せず西之表市の民宿へ。民宿のお母様に挨拶してお茶請けをいただいていると、宿のもう一人の宿泊客がやってきた。彼も打ち上げを見に我々と同じく関東甲信越からやってきたのだそう。ただ彼は仕事の関係で明日で帰るという。残念…。

打ち上げを見に遠くからやってきた若い男3人。せっかくなので3人で飲みに行った。


「魚匠 一条」にて1人2500円のおまかせコース。

思えば種子島4回目にして初めて海産物をいただいた。お刺身の味がすごく濃くてびっくり。どの料理も大変美味でした。

 

お会計時に猫の募金箱に小銭を入れる。そのおかげか、帰り際に猫ちゃんがお見送りしてくれました。


猫ちゃん。

 


暇をつぶそう 打ち上げ2日前(2024年2月15日)


 

2月15日は当初の打ち上げ予定日。打ち上げが延期になったので種子島宇宙センターへ行ってみることにした。Iさんをレンタカーに載せ、種子島を北から南へ縦断。

 

宇宙センターへの道中には「H3 成功祈願」ののぼりが掲げられていた。おや、H3用ののぼりがあるんだね!?

 
←H3成功祈願ののぼり(H3TF2) 打ち上げ成功祈願ののぼり(H-IIAF48)→

H-IIAF48とは異なるシンプルながら洗練されたデザインだ。

ちなみにH3TF"1"の打ち上げを見に行ったフォロワーさんによると、TF1ののぼりは今回とはまた違ったデザインだったことがわかる。 どのデザインも成功祈願の想いが伝わってきて素敵です。

 

西之表から車を走らせ50分。宇宙センターに到着!しかし駐車場が満杯だったので、竹崎展望所方面にある別の駐車場へ行く。


修学旅行生の記念撮影

センター内の実物大H-IIロケットの前で記念撮影をしている学生さんがいた。本来であれば打ち上げを見られたのだろうな…

 

気を取り直して1か月前にほとんど見て回れなかった「宇宙科学技術館へ。
受付でSLIMの栞を頂いた。あらかわいい!H-IIAロケットの模型と記念撮影。


小型月着陸実証機SLIMの栞。
SLIMは1月20日に「SHIOLIクレーター」の近くに着陸した。

前回来た時はSLIMは着陸前だった。

宇宙科学技術館でじっくり見たかった展示の1つに、人工衛星インフォボード」がある。この展示はスタッフによって随時更新されており、人工衛星の「旬な話題」を見ることができる。

ちなみに6年前(2018年2月)↓は前年12月に打ち上げられたばかりの衛星「しきさい(GCOM-C)」と「つばめ(SLATS)」の情報が載っていた。


2018年2月のインフォボード

 

あれから6年。人工衛星インフォボードにはぎっしりと衛星の情報が!

2024年2月の人工衛星インフォボード。

おおお!「HTV-X」、「技術試験衛星9号機」に「だいち4号」、「みちびきシリーズ」。これらはH3ロケットで打ち上げ予定の衛星たちだ。

この衛星たちが予定通り宇宙へ行けるかどうかは、H3TF2の打ち上げにかかっている。

 

お昼はせっかくなので宇宙センターの食堂「宙飯屋」へ。平日なので食堂が開いているのだ。


食堂案内とH3TF2のポスター
打ち上げ日がちゃんと「2月17日」になっている

 


海とロケットカレー

青い作業服を着たJAXAMHIの職員に混じって私も注文。ここは一般のお客さんも注文できる。食堂の名物?らしい「ロケットカレー」を食べた。ピリ辛で美味しかった。

 

午後も引き続き宇宙科学技術館を見学。

前回来た時には無かった小型月着陸実証機「SLIM」の展示を発見!!SLIMは3週間前に月面軟着陸したばかり。仕事が早い!


右上には小型プローブのLEV-2(SORA-Q)が撮った写真も!

LEV-2が撮ったSLIMの写真ホント好き。

月球儀の軟着陸の展示にもSLIM。

インフォボードやSLIMの展示からもわかるように、ここは不定期に内容が更新される展示施設。前回来た時とは違った展示が楽しめるなんて素晴らしい。今後はGOSAT-GWの観測結果とか、探査ミッション紹介コーナーにMMX探査機の撮影画像が展示されるのだろう。楽しみだ。

 

それと、メッセージボードにH-IIA48号機打ち上げ成功のメッセージを書いた。

祝福のメッセージ

 

宇宙科学技術館の後はセンター内にある「ロケットの丘」へ。


ロケットの丘からの眺め

 

・・・

 

心が静まり返る。

 

VABと射点を眺めて、やっと「ああ、私は種子島に来たんだな」と実感した。

 

白いVAB、そびえる赤と白の鉄塔・・・

 

私にとっての「種子島」はさとうきび畑やエメラルドグリーンの海ではなく、この景色なのだ。

私は再び、この島でロケットの打ち上げを撮ろうとしている。浮ついていた心がシュッと引き締まった。

 

この日の夜は中種子町のラーメン屋「翔」で横浜家系ラーメンを堪能。メチャ旨でした。

 

翌日(2/16)は打ち上げ前日。機体移動が行われる。さあ、H3を記録しよう。

 

次回、機体移動編。

sado-kouta.hatenablog.com

みんなの想い、天空へ H3ロケット試験機2号機 打ち上げ見学旅行記(1)

みなさまこんにちは。

新幹線が大好きな宇宙機ファンのやまごんです。

私は先日種子島に赴いてH3ロケット試験機2号機」の打ち上げを見てきました。

 

その旅の記録と、これからH3ロケットの打ち上げを見ようと考えている人のために、旅行の顛末を打ち上げ見学旅行記に記します。

なお打ち上げ見学旅行記を書くのは今回が3回目過去記事にも打ち上げ見学場や機体移動などのお役立ち情報を載せているので、種子島への打ち上げ見学を検討している方はそちらの記事も合わせてご覧ください。

 

見学旅行記①:2018年2月・H-IIAロケット38号機打ち上げ見学

sado-kouta.hatenablog.com

見学旅行記②:2024年1月・H-IIAロケット48号機打ち上げ見学

sado-kouta.hatenablog.com

それでは参りましょう。

 


みんなの想い、天空へ

H3ロケット試験機2号機 打ち上げ見学旅行記(1)


 


種子島での1コマ

前提条件

今回の旅はこんな感じです。
・4度目の種子島旅行
・旅の起点&終点は新潟
・同行者1名と共に行動
・主目的は「H3ロケットの撮影」
種子島でレンタカーを使用
・宿あり

 

種子島訪問は今回で4度目。打ち上げ予定は2/15なので、2/13夜に新潟を出発、2/14~2/18まで種子島に滞在し、2/19朝に新潟に帰還するスケジュールを組みました。

私は前回の種子島旅行(2024年1月)からわずか1ヶ月で再び種子島へ赴きます。
鹿児島にて宇宙開発ファンのフォロワー(Iさん)と合流し、2人で打ち上げ見学をする。旅の目的は「H3ロケットの撮影」

 

私が種子島のレンタカーを確保し、Iさんが宿を手配してくれました種子島は現在お隣の馬毛島の基地工事で深刻な宿不足なので、宿があるのはとてもラッキーなことでした。

 

以上をふまえて、H3試験機2号機の見学旅行記、スタートです。

 


打ち上げ1年前(2023年2月17日)


 

それは幻のリフトオフだった。

 

この日、日本の新型ロケット「H3」試験機初号機(H3TF1)の打ち上げが行われる…はずだった。

カウントダウンは順調に進み、0になった瞬間、機体はリフトオフ!

すると思いきや、そのまま発射台にとどまった。打ち上げは中止。


+28秒後のH3TF1

 

スマホの画面を見つめながら思った。(打ち上げは中止。しかし失敗するよりはずっといい。)

原因究明と対策が施され、再度打ち上げが実施されるのは翌月のことである。

 


打ち上げ約1年前(2023年3月7日)


 

私はスマホの画面を見て凍り付いた。

 

この日、H3ロケット試験機1号機が遂に打ち上げられた。積み荷は先進光学衛星「だいち3号(ALOS-3)」。だいち3号は災害大国の日本にとって待望の、広範囲の地表を高解像度で撮影できる衛星だった。災害への備えとして私はこの日を何年も前から待っていた。

 

そしてH3ロケットH-IIAロケットに変わる新たな日本の主力ロケットとして、25機以上の衛星打ち上げに使われる予定がある。H3は宇宙への新しい架け橋。宇宙機ファンの私にとって、だいち3号とH3への期待は並々ならぬものがあった。

 

午前10時半ごろ、私はお勤め先の片隅で打ち上げ中継映像を見た。カウント0の瞬間、H3は遂にリフトオフ。私はSRB-3の分離を見届けて仕事へ戻った。軌道投入までが打ち上げだが、峠は越えたはず。あとはお昼休みに朗報を待とう。

 

しかし、お昼休みにスマホを見ると画面には「打ち上げ失敗」の文字が。

 

H3は、試験機1号機は打ち上げに失敗した。待望の衛星だいち3号も失われた。

 

嘘だろ…?

 

私の心にはパックリと大きな傷が開いた。血が流れ出るといういうよりは冷たい外気が吹き込んでいるような、ものすごい喪失感だった。暗闇の中で経験のない痛みに苦しむ気分。

 

だが私に比べたら、関係者の辛さはもっと大きい。

打ち上げ失敗後、私はH3ロケットを取り上げた番組をいくつも見た。H3ロケットの開発責任者を務める「岡田PM(プロジェクトマネージャー)」は試験機1号機が指令破壊された後、しばらく動けないくらい、落胆していた。H3に携わるすべての関係者も気持ちは同じだろう。

 

そして私を含む多くの宇宙開発ファンも悲しみに暮れた。
私の推しであるロケットアイドルVtuber「宇推くりあ」さんも

www.youtube.com


宇推くりあ氏とH-IIAF48
(2023年の宇宙研コラボのクリアカード)

くりあ氏(リスペクト呼び)は当時、H3試験機1号機の応援サポーターとして打ち上げの模様を配信していた。そしてロケットの異常と打ち上げ失敗の報せをリアルタイムで目撃。

状況を冷静に分析しつつ、今までにないくらい、ものすごく悲しんでいた…

 


打ち上げ4ヶ月前(2023年12月末)


 

あれから9ヶ月が経った。この間JAXA三菱重工(MHI)は打ち上げ失敗の原因究明と対策を進め、遂にH3ロケットの飛行再開のめどが経った
そして12月末、JAXAH3ロケット試験機2号機(H3TF2)を2024年2月15日に打ち上げる」と発表。打ち上げ時間帯はだいち3号と同じく朝から昼ごろを予定。

私はこの報せを聴いて迷った。打ち上げを見に行くべきだろうか?と。

というのも、私はすでに2024年1月12日のH-IIAロケット48号機(H-IIAF48)の打ち上げ見学の日程を組んでいたのである。つまりH-IIAF48からわずか1ヶ月で種子島に再訪することになる。休暇、出費、課題はいくつもある…

 

だが「見られるならH3TF2の打ち上げを見てみたい」とも思った。H3はこれから数多くの宇宙機を打ち上げる。その最初の成功はH3TF2になるだろう。オンリーワンの魅力がそこにはある。さらにH3ロケットの塗装はずっと同じとは限らない。H3の運用は現在JAXAが行っているが、将来的には三菱重工に移管される。機体のJAXAロゴはいつか無くなるかもしれない。であれば今のH3ロケットを撮って記録したい。

 

行こう。H3ロケットの最初の成功を見届けよう!

すぐレンタカーを予約し、見学旅の行程表を作成した。

 


打ち上げ1ヶ月前(2024年1月)


 

私は種子島を訪れた。目的はH-IIAF48の撮影。H-IIAロケットの夜の機体移動と、快晴の中での打ち上げは素晴らしいものでした。

この時、南種子町にはH3TF2の打ち上げの看板があった。


種子島で見かけたH3TF2の打ち上げ予定の看板

私はこの打ち上げを見られるだろうか…

飛行機で種子島を去る際、窓の外を流れる景色に「また来ます。」と約束した。

 

機体移動の記事はコチラ↓

sado-kouta.hatenablog.com

打ち上げの記事はコチラ↓

sado-kouta.hatenablog.com

打ち上げ成功記念アート

 


打ち上げ12日前(2024年2月3日)


 

H-IIAF48の時、私は打ち上げ成功記念アート(上記)を作成した。H3TF2でも同様に打ち上げ記念アートを作成したい。だが今回は積み荷の衛星の擬人化ではなく「宇推くりあ」氏を描くことにした。

 

理由は次の通り。
・くりあ氏はH3試験機2号機の応援サポータをしている。
・成功したときの「喜び」を表現したい。
・自分がくりあ星団※の一員。

※くりあ星団:宇推くりあCh.のファンネーム。

くりあ氏(リスペクト呼び)は応援サポータとしてH3TF2の打ち上げのミラー配信&解説を行う。その頑張りにファンとして何かお礼をしたい気持ちもあり、描くことにした。

打ち上げまでの12日間でコツコツと書き進めた。前にも1度描いたことがあるけど、デザインはデザイナー(ご本人)のこだわりが詰まっているので、線画が一向に終わらなかった(笑)


線画の様子

躍動感ある感じにジャンプ!試験機2号機の「2」と成功のピースサインを添えて

 

ところで、こうしてお祝いの準備をしたところで、打ち上げを見られない可能性もある。しかも打ち上げが成功するとは言い切れない。

そんなことを考えていると手が止まりそうになる。だが…覚悟の上で、描き続けた。

 

今回の旅は打ち上げ延期のマージンを3日間確保してあるし、打ち上げ成功を心から信じていた。

 


お天気チェック 打ち上げ4日前(2024年2月11日)


 

打ち上げは天気が良くないと実施できない。ロケットは空を突っ切って宇宙へ行くので、射点の上空に雷や氷、強風、大雨があると打ち上げに支障が出るのだ。

 

打ち上げ前恒例のお天気チェックでは、打ち上げ予定時間帯の2月15日朝"だけ"雨マークがあるという酷いイジメを見た。しかも雷のおまけつき。打ち上げ延期は必至だ。

 


あのさぁ・・・

 

 


打ち上げ日時発表 打ち上げ2→4日前(2024年2月13日)


 

H3TF2の打ち上げ予定日(2/15)の2日前のこの日、天候を踏まえた正式な打ち上げ日が発表された。

新たな打ち上げ日時は「2月17日(土)午前9時26分55秒~」

 

2月17日。奇しくも、H3ロケット試験機1号機の幻のリフトオフと同じ日となった。
これも何かの運命なのだろうか。

 

打ち上げ日は2日延期となったが、もとより延期を想定していたので驚きは皆無。つくづく慣れたものである…

2月13日夜。冬の寒さに震えながら、私は新潟発の夜行バスに乗って旅を開始。目指すは1か月ぶりの種子島だ。

 

次回、「種子島へ行こう」

 

宙へ、願い届けて H-IIAロケット48号機 打ち上げ見学旅行記(6)

 

新潟住みの宇宙機ファンがH-IIAロケット48号機の打ち上げを撮影しに種子島へ行ってきたお話。今回で最終回です。

 

旅行記(1)はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

前回(5)はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

 


宙へ、願い届けて

H-IIAロケット 48号機 打ち上げ見学旅行記(6)


 

前回のあらすじ

打ち上げ日当日、H-IIAロケット48号機の打ち上げを長谷展望公園で見学&撮影。
ロケットは無事「情報収集衛星 光学8号機」を軌道に投入し、打ち上げは大成功。

私は準備していた光学8号機のイラストでお祝いをするのだった。

 

今回は打ち上げ後の余韻編。打ち上げ後ならではのお楽しみを紹介。

 


余韻を楽しもう(2024年1月13日)


 

打ち上げの翌日、1月13日は土曜日

宇宙ヶ丘公園に停めた車内で朝を迎えた。今日の予定は特に決めていないが、とりあえず種子島宇宙センターのバスツアーに参加してみたい。H-IIAロケットの「移動発射台」(ロケットと一緒に射点に運ばれた発射台)を見てみたかったが、たぶん昨夜で片づけられただろう。昨日のうちに気付いていればな…

 

宇宙ヶ丘公園にあるロケット打上げのお知らせ看板で記念撮影。なお、ピースサイン撮影の数十分後には日時の掲示がなくなっていた。

ありがとう、H-IIA F48

 

私は元々1月14日(日)の夕方に種子島を離脱する予定だったが、打ち上げを昨日見られたので今日の夕方にも種子島を離脱したいかな…などと考えながら車を出て寝袋をしまっていると、昨日長谷展望公園で一緒に打ち上げを見たお兄さんと偶然再会。さらには昨日上里へ送った学生さんとも再会。学生さんは宇宙ヶ丘公園でテント泊をしていたのだった。

「良い打ち上げでしたねぇ!」「天気も良かったね!」と、3人で打ち上げを見れた喜びを分かち合った。

 

学生さんが上里で撮った写真も見せてもらったが、実に良く撮れていた。

さて学生さんはこれからどうするのか。聞くとバスで移動するそうで、しかも南種子町のバス停までは徒歩で行くと。

…あの巨大極まるスーツケースを持って!?


バス停までは下り坂だが、スーツケースを引いての徒歩30分はなかなか大変だ

 

ということで南種子町の「役場前」バス停まで私のレンタカーで送りました。私もバス停の位置を確認できてWin-Win。ちなみに役場前のバス停は2種類ありました。「空港バス」と「路線バス」でバス停が違うので、利用する方はご注意を。2つのバス停はすぐ見える範囲にあります。

 

この後は近くにあった南種子町「トンミー市場」でお土産を購入。「JALファーストクラスで機内食のお茶菓子に採用された」という芋パイをゲット。

トンミー市場の入口に掲げられた横断幕

 

車の中で今後の予定を考える。明日まで種子島にいるよりは今日鹿児島へ行って明日、やりたいことをやりたい……。スマホを叩くと、運よく1月13日18時種子島空港発のJAL便が1席だけ空いていた。ただし1月14日種子島発のJAL便を予約変更不可の「セイバー」で予約していたため、取り消し手数料がかかる。…と思っていたのだが、なぜか1月13日の便に変更できた。手数料0円で。

なぜ変更できたんだ??

という疑問をTwitterで呟くと、旅行に強いフォロワーさん(Iさん)がJALは羽田での地上衝突事故(2024/1/2)への特別対応として、今月中は手数料を取らないそうです。」と教えてくれた。なるほど。

JAL、3月末までの予約は手数料なし変更・払い戻し

つくづく、フォロワーの情報力には驚かされる!

さて航空便の変更ができたので、今度はレンタカー会社に電話を入れて帰りの便とレンタカー借用期間の変更を伝えた。

さて夕方までどうしよう。宇宙センターのバスツアーに参加したいのだが、宇宙センターの科学技術館に9時から5分おきに電話をかけても一向に通じないんだよなあ…

 

Twitterを眺めていると、種子島に来ているフォロワーさん(Zさん)が今日撮ったと思しきH-IIAロケットの移動発射台の写真を投稿していた。

 

えっ、移動発射台あるの?

 

H-IIAロケットをVABから射点まで運ぶ「移動発射台」がまだ射点にあるらしい。私はてっきり昨晩のうちにVABに戻されたと思い、諦めていたのだが…よし、行こう!ついでにフォロワーさん(Zさん)に会おう!車を走らせ種子島宇宙センターへ。

 

中型射点へ続く道を進むとH-IIA/H3ロケットの射点が見えてくる。おとといには無かった灰色の構造物がそこにはあった。なんだあれは!?

 

左:1月11日撮影     右:1月13日撮影

中型射点に続く坂道から

車を走らせながら笑う。

「なんかあるんですけどwww」

車を中型射点入り口近くの空き地に止め、見慣れぬ灰色の構造物を眺める。これが移動発射台か…

Twitterを見るとZさんが近くにいるようなので連絡し、ついでに私の見た目情報をリプライ(返信)した。そして…中型射点近くから行ける大崎海岸にて無事ランデブー(合流)。

会えたーーー!!

二人で大崎海岸を歩きながら射点近くまで歩きました。

 

※打ち上げ後なので大崎海岸へ行く道が解放されています。
※打ち上げ前~打ち上げ後しばらくは大崎海岸へ行く道は封鎖されているので、行っちゃダメです。
※砂浜なので足元注意!

大崎海岸から見る吉信射点(大型ロケット発射場)

右手には海、前方には青空にそびえる宇宙センターの建造物、そして昨日役目を果たした移動発射台。波の音も相まって最高のロケーションだ。

 


大型ロケット組立棟(VAB)の扉

この扉が「世界一大きなスライド扉」としてギネス世界記録に認定されていることはあまりにも有名。

 

H-IIA用の第1射点。ここまで近づけるなんてエグいな…

まさかこんな近く(約50m)で移動発射台を見られるなんて思わなかった。Zさんが「信じられない」と言うのもうなづける。

 

文字が焦げて真っ黒になっているのもハッキリわかる。SRB-Aを4本使うH-IIA204形態やH-IIBロケットではよく焦げてた印象があるが…H-IIA202形態(H-IIA F48の姿)でも焦げるんだね!?

 

海岸を歩きながらしばらくZさんと談笑。お互いのスマホで移動発射台との記念写真を撮ったり、宇宙趣味のお話をしたりした。Zさんはこれまで何度も打ち上げを見た経験があり、さらにアメリカでファルコン9も打ち上げを見たこともあるスゴイ人。今回(H-IIA F48)は私と同じく長谷展望公園で打ち上げを見たとのこと。また、打ち上げ時は撮影には集中せず、Mark I Eyeball (肉眼)での観測に特化していたそうだ。素晴らしい!(五感で打ち上げを楽しめたの、すごく羨ましい…!)

大崎海岸は砂浜で、すぐ近くにはエメラルドグリーンの海。茶色く濁った冬の日本海とは大違いだぜ…Zさん曰く「サンダルを持ってくるといい」とも。流石。その発想はなかった!サンダルで波を体感するのも最高だろう。

 


移動発射台とヤシの実

 

と、砂浜を歩いていると前方から作業服姿の人が近づいてきた。宇宙センターに勤める関係者だろうか。こんにちは~とあいさつをすると、だしぬけに「やまごんさんですか?」と。

ええっ!?

な、なぜ私の事を…ロケットの写真を撮りすぎたか!?怒られる!?と硬直するも、Twitterを見て私に声をかけたと知り破顔。なんと彼も私のフォロワーさんでした。私が宇宙ヶ丘公園で撮った動画に彼が写っていたこともあり、私に声をかけたとのこと。

せっかくなので彼が宇宙ヶ丘公園で撮った写真を見せてもらいました。

良いねぇ!!クッキリハッキリ撮れてるし、宇宙ヶ丘で撮った写真は恵美之江とも長谷ともまた違ったアングルなのも良い!

 

しかも彼は私と同じくH-IIA38号機で初めてロケットの打ち上げを見たそうで、まさかの共通点にびっくり。しかも私と同じく恵美之江展望公園でみたというのだから驚きだ。彼が撮ったF38の打ち上げ写真を見せてもらいましたが、雲一つない青空へ打ち上がる、私の記憶/記録と全く同じ写真でした。まさかの出会いがとても嬉しかったです。

時刻的にお昼なので「今日は宇宙センターの食堂って開いています?」と聞いてみると、土日はやっていないと教えてくれました。ぐぬぬ

それにしてもよく声をかけてくれたものだ。嬉しかった!

 

午後、Zさんが「15時からの宇宙センターのバスツアーが空いてるよ」と教えてくれたので、バスツアー(無料)に参加しました。情報助かる~!


H-IIAの説明が聞けるのもあと1年かもしれない

今回の見学場所はロケットの丘、ロケットガレージ、RCCの3つ。打ち上げ後であれば「射点」の見学もできるはずなのだが、今回は無かった。しかしRCCは打ち上げ後しか見られない見学場所の一つ。見るのは初めてなので楽しみだ。

ロケットガレージ内部

ロケットガレージではH-IIロケット7号機の実機をやや遠くから見学しました。


ロケットのフェアリングと衛星の模型

たぶん初めて見たのが↑写真の模型。見たところ大きい衛星が衛星いぶき(GOSAT)で、相乗りの大きい方がSDS-1、小さい方がまいど1号(SOHLA)だ。JAXAの人からの説明は特にありませんでしたが、宇宙機ファンの私はつい注目しちゃう展示物でした。

ロケットガレージの次はRCCこと「竹崎総合指令棟/指令管制棟(Range Control Center)」へ。内部は撮影禁止なので写真はありませんが、モニタがずらり並んだ管制室を見ることができました。

管制室の一番手前側の右側の席には「NEC Project Manager」の名標がありました。やはり今回の情報収集衛星 光学8号機はNEC製だったのだろうか。

 

バスツアー終了後は種子島空港へ。名残惜しいが、もう種子島を離脱せねば。


種子島宇宙センターへ続く道にて

 

種子島空港は今回初めて使う。そうそう、飛行機に乗る前にぜひ買いたいモノがあった。種子島空港売店で購入したそれは南日本新聞

2024年1月13日号の一面。カラー写真付きの記事が掲載されている

打ち上げの翌日の南日本新聞には打ち上げの記事が載っているのだ。しかも他紙とはことなり、一面に大きく載る。良い記念になったよ!


左:H-IIA38号機(2018年2月)の記事 右:H-IIA48号機の記事(2024年1月)

↑6年前に買った新聞と並べてみた。写真も見出しもほとんど一緒で大笑いしました。

 

鹿児島空港への移動は人生初のプロペラ固定翼機搭乗にて。機内に入ると、JALの搭乗時BGM「I Will Be There with You」が流れていた。

私はこの音楽が大好き。まさか聞けるとは思っていなかったのでびっくりした。

www.nicovideo.jp

腰を落ち着けて、今回の旅を思い返す。

3日間に及ぶ種子島滞在は実に多くの思い出ができた。数多くの出会いもあった。

だがやり残したこともある。

・見学場の下見が忙しくて宇宙科学技術館を見て回れなかった
・竹崎展望台やカーモリの峯展望台に行ってみたかった
・宇宙センターの食堂や種子島のグルメも味わってない
種子島空港の宇宙関連展示やレストランも時間が無くて行けなかった
JAXAの増田宇宙通信所見学も今回はパスした

 

しかし…これでいい。また来ればいいのだから。
むしろ、やり残したことは次来た時のお楽しみにしておこう。

「また来ます。」窓の外を流れる景色に約束した。

 


夕焼けと三日月

種子島→鹿児島の機内では神秘的な光景↑が見えた。

 

この日は鹿児島で一泊。翌日は天気が良かったので、急遽レンタカーを借りて鹿児島にある新幹線撮影地を巡り、九州新幹線を撮影した
もし天気が悪かったら、鹿児島県のもう一つの宇宙基地である「内之浦宇宙空間観測所」に行ってみる予定でした。(天気がいい日は新幹線がよく映えるのだ)


800系新幹線U6編成

 


N700系新幹線S10編成


N700系R7編成 (R7といえばロケットですね!)

 


800系新幹線U6編成

N700系(水色)に800系(かわいいの)。東の民にとってはどれも新鮮な光景で鉄分が満たされた。

夕方、鹿児島中央駅18:30発の新幹線でいよいよ帰路へ。


非日常から日常への切符

 

乗車前に「しろくまアイス」と「タイムセール300円引きの にく弁当(1000円)」を購入し、新幹線の車内でいただきました。今後鹿児島に来たらお店でしろくまアイスを食べてみたいものだ。

 

その後は関西で新潟行きの夜行バスに乗り換えて翌朝、新潟へ帰還。

無事、旅を終えた。

 

 


 

ここまで読んでくれてありがとうございました。

 

種子島の見学場・機体移動・打ち上げ・撮影設定などなど、これから打ち上げ見学を考えている人の参考になれば幸いです。

種子島での打ち上げ見学は行けば必ず見られるとは限りません。打ち上げの延期や中止は珍しい事ではないからです。

しかし、打ち上げが見られなくても、種子島には見どころがたくさんあります。リベンジに備えるもよし、この記事に出てきた施設に行ってみるもよし。種子島は気軽に来られる場所では無いですが、それでもチャンスはこれから先もきっと巡ってきます。打ち上げを見たいと願い続ける限り。

 

最後に私(やまごん)のTwitter(現X)アカウントを紹介して終わります。

日々いろいろ呟いています。どうぞよしなに!

https://twitter.com/sado_kouta

 

それでは、またの機会にお会いしましょう。

 

宙へ、願い届けて H-IIAロケット48号機 打ち上げ見学旅行記(5)

 

新潟住みの宇宙機ファンがH-IIAロケット48号機の打ち上げを撮影しに単身種子島へ行ってきたお話。

 

旅行記(1)はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

前回(4)はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

 


宙へ、願い届けて

H-IIAロケット 48号機 打ち上げ見学旅行記(5)


 

前回のあらすじ

H-IIAロケット48号機の打ち上げ日当日、長谷展望公園で朝日を眺めた後、宇宙ヶ丘・上里地区で射点に鎮座するロケットを撮影し、長谷展望公園で13時44分26秒の打ち上げを待ちました。

 

今回はその続き、打ち上げ10分前からスタートです。

 

なお長谷展望公園では打ち上げ15分前から電波状況(docomo)が悪くなり始めていました。打ち上げ見学を考えている人は注意してくださいね。

 


宙へ、願い届けて(2024年1月12日13時34分~)


 

カメラ4台でロケットを撮影する。カメラの詳細は見学旅行記(4)にて

 

打ち上げは13時44分26秒に行われる。

打ち上げ10分前 公園の仮設スピーカーから

H-IIAロケット48号機 打ち上げ最終実施判断の結果は"GO"です。」

との宣告が流れた。いわゆる最終GO/NOGO判断というやつだろう。これがGOになった以上、もはや打ち上げは決定的だ。

 

夢にまでみたロケット打ち上げの撮影が間近に迫っているという事実が思考を埋め尽くす。周りの打ち上げ見学者との会話さえままならない。

心拍数は平常時の80-100bpmを大きく超える140bpmに達した。

私は三脚に据え付けたカメラ4台の画角の最終確認をし、動画用カメラの録画ボタンを順次押してゆく。

 

打ち上げ8分前 カウントダウンがスタート。公園の仮設スピーカーから聞きなれた機械音声お姉さんのカウントダウン音声が流れ始める。

機械音声お姉さんのカウントダウン狂おしいほど好き。

2024年1月12日の射点方向の空

このカウントダウンが0になった瞬間「情報収集衛星 光学8号機」を載せたH-IIAロケット48号機が打ちあがる。

 

打ち上げ5分前 静止画用超望遠カメラの最終試写を実施。低速連射モードよし、撮影設定よし。

 

周りを見渡すと、見物客の多くがスマホを手に持って打ち上げを撮影する様子だ。多くの人にとって打ち上げは一生に一度見れるかどうかの貴重な機会。撮らずにはいられないよな。私だってスマホしか無ければスマホを向けるだろう。

でも…ロケットの打ち上げは、スマホ撮影なんかせず全身で体感してほしいという気持ちもある。「カメラ4台も向けてる奴が何を言う」と思われるかもしれないが、これは本心だ。

ロケット打ち上げではエンジン燃焼の強烈な光爆音を体感できる。これをスマホのディスプレイ越しに、撮影に意識を向けて体感するのはあまりに勿体ないと思うのだ。もちろん、思い出を補強する意味でも撮影に意義はある。撮るなとは言わない。なのでこれを読んでいる人で、「打ち上げを見たいけど撮影(記録)もしたい」という人がいたら、ぜひ三脚を持って行ってほしい。三脚にスマホをセットし、動画モードで空を録画する。あとは録画が始まったことを確認し、肉眼と肌で打ち上げを楽しんでほしい。

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カメラを持ち込んでガチで撮影したい(私みたいな)モノ好きは大いに頑張ろう。言っておくがめっちゃ緊張するよ!

さて、私は打ち上げの瞬間は静止画用超望遠カメラのシャッターを押し、自分の目はロケットを見つめることとする。さらに打ち上げ後は撮影しつつ肉眼でもロケットを見ることにする。

 

打ち上げ35秒前 まもなく打ち上げだ。ロケットを見つめながら「頼むぞー」とつぶやいた。「打ち上がってくれ」というよりは「光学8号機を無事に軌道投入してくれ」という想いの方が強かった。

衛星分離までが打ち上げだ。そして私はこの打ち上げを祝う準備までしたのだ。頼むぞ。

 

打ち上げ10秒前 見物客によるカウントダウンが湧く。

 

さあ…打ち上げだ!

 

打ち上げ0秒前 13:44:26 リフトオフ!

13:44 長谷展望公園から EOS90D 484mm F9 1/1600s ISO400

 

13:44 長谷展望公園から EOS90D 484mm F9 1/1600s ISO400

 

H-IIAロケット 48号機 2024/1/12 13:44」(トリミング・微修正後)

叫ぶ。

行けーーーー!!!!

 

13:44 長谷展望公園から EOS90D 361mm F9 1/1600s ISO400(以下 特筆ない限り同じ)

 

13:44 長谷展望公園から EOS Kiss X5 ビデオ撮影切り抜き

 

撮影しつつ肉眼で直接ロケットを見ると、強烈な光が目に飛び込む。うわー眩しい!直視していいのか戸惑う光だ。
これは写真や映像では決して伝わらない。

雲を突き抜け

青空にふわり浮かぶ雲をかすめ、H-IIAロケット48号機は天空へと昇っていく。

打ち上げ30秒後 6.3km先の射点からゴゴゴ…という音が聞こえてくる。それも大音量だ!

H-IIAロケット 48号機 2024/1/12 13:45」(トリミング・微修正後)

 

打ち上げ40秒後 さらに大きな爆音が長谷展望公園を包み込む。

打ち上げ30秒後の音がメインエンジン(打ち上げ5秒前に点火)の音で、今届いた音が固体ロケットブースター「SRB-A」の音なのだろう。

「うわー!」「すごい!」「やばーっ!」見物客が驚きの声を上げる。

 

H-IIAロケットはグングン加速し、次第に小さくなっていく。衛星を軌道投入するために、重力を懸命に振り切ろうとしている姿に胸を打たれる。

応援か、祈りか。「がんばれ!」と声が出た。 打ち上げ成功を切に願いながら撮影を続ける。

打ち上げから約1分40秒後、固体ロケットブースター「SRB-A」が燃焼を終了。白い煙が薄くなり、肉眼では視認が困難となる。だがこの時間帯こそ、SRB-A分離というハイライトシーン。

SBR-A分離 2024/1/12 13:46」(トリミング後)

ファインダー越しに見るロケットから「白い点」が2つ離れていくのが見えた。SRB-Aの分離だ。
「分離してる!よし!いいぞ!」
周りの人が分離という単語に戸惑う恐れがあると思い、とっさに「いいぞ!」と付け加えた。

(余談:撮影後に写真を見て驚いた。SRB-A分離時の噴射炎やSBR-Aの形状がわかる写真を撮れるとは思わなかったから。良く撮れたものだ。)

SRB-Aが分離されるとロケットはいよいよ見えなくなり、追尾もピント合わせも不能になる。

前の写真と見比べると、真ん中のコア機体が姿勢を変えているのが分かる。宇推くりあさん曰く「ドッグレッグターン」だそうだ!やったぜ!

 

この写真を最後にロケットが見えなくなったので、望遠カメラを三脚に戻す。

打ち上げから2分30秒後 どこからともなく拍手が沸き起こる。打ち上げを見られた喜びが、公園中に響き渡った。

 

ようやく身体から力が抜けた。気が付くと、足ががくがく震えていた。

それもそのはず。打ち上げの瞬間(13:44)、心拍数は172bpmをマークしていた。
観測史上(1/5~)最高値である。それほど緊張していたのだな…。

心拍数は打ち上げの30分前から急上昇し、打ち上げでMAXに。

 

風で消えてしまう前にスマホロケットロード※を撮影。風が強いこともあってか、ロケットロードは10分ほどで空に溶けてしまった。(※ロケットが引いた白い噴射煙のこと。)

左:打ち上げから3分後      右:打ち上げから8分後

心が揺さぶられる3分間だった。

打ち上げが成功したかどうかは、まだ、わからない。
ひとまず撮影した写真をスマホに取り込み、リフトオフの1枚をTwitterにアップする。

その後は打ち上げを見た見学者たちと談笑。撮った写真をシェアするため、私のTwitterアカウントを教えたり、おじさんにはスマホ写真を直接送ったりした。おじさんが「打ち上げは成功?」と聞いてきたので「衛星が分離されれば成功です」と答えた。そう、軌道投入までが打ち上げ。

打ち上げ関係者の母息子さんと打ち上げを見られた喜びを分かち合う。お母様の方が興奮冷めやらぬ様子でした。「写真見させてもらいます!楽しみにしてます!」と言ってもらえた。

仮設スピーカーからは「ロケットは現在、安定して飛行を続けています。」との実況が流れる。

 

そして──打ち上げから18分後、「情報収集衛星 光学8号機の分離が確認されました。」とのアナウンスが聞こえた。

私はよっしゃー!とガッツポーズ。

打ち上げを見に来ていた打ち上げ見学の常連っぽいおっちゃん(バッジだらけの帽子つけてた)と成功を分かち合った。打ち上げ成功だ!やったー!

放心状態のまま、レンタカーに機材を片付ける。打ち上げから30分。スマートウォッチを確認すると、まだ心拍数は130でドキドキ状態を維持。私の心も打ち上がってしまったらしい。

ロケットは天空へ行き、光学8号機も無事宇宙へ行った。私の願いは宙(そら)に届いたのだ。

 

ありがとう、H-IIAロケット48号機。

 

車の中でふぅ、と息を吐く。それでも思考はふわふわ、心臓はドキドキしたまま。
放心状態からか、不幸にも宇宙ヶ丘公園へ向かう途中に道を間違えてしまった。が、そのおかげで「打ち上げ成功祈願」ののぼりが「打ち上げ成功」に変わっているところに遭遇した。

町の人たちがこうして成功をお祝いするとは、なんていい町なんだろう。

その後は宇宙ヶ丘公園でパノラマカメラを回収し、撮影映像をチェックし、問題なく撮れていることを確認。さらに南種子町のファミマでアイスを買って食べた。

気が付くと日没を迎えていた。

 

夕食に「美の吉」で味噌ラーメンをいただく。テレビでは今日の打ち上げのニュースをやっており、成功を改めて噛みしめることができた。

「美の吉」にて H-IIA F48のバッジと一緒に。

そうだ、忘れないうちに…

私にはやりたいことがあった。それは今日の打ち上げ成功のお祝いだ。

車の中で一休みした後、タブレットでお絵描きソフトを立ち上げ、今日撮った写真を取り込んでイラストの背景にする。

やばい、幸せすぎる…

衛星擬人化と、擬人化元の衛星を載せたロケット写真のコラボレーションなんて見たことない。しかも、素敵な擬人化イラストも鮮明なロケット写真も、どちらも私が描いて撮ったものだ。

こんな幸せなことが他にあるか!充実感で胸がいっぱいになる。

Twitterに投稿して、みんなとお祝い。

 

──打ち上げ成功、おめでとう!!

 

打ち上げの時に撮影した写真と動画はまとめてTwitterに投稿した。打ち上げ関係者の母息子さんからも反応があって嬉しかった。写真は予想以上に多くの方々に見てもらえて、嬉しさがバクハツしそうになりました。

 

下の写真はビデオカメラで撮影した動画からの切り抜き。デジタルカメラで撮った写真とは異なり、太陽光の反射がキラリと写っていました。


キラリ輝くH-IIAロケット
13:44 長谷展望公園から HC-VX985M

 

ロケット打ち上げ成功」

 

打ち上げの日の夜は宇宙ヶ丘公園に車を停めて就寝。
明日、1月13日(土)は宇宙センターに行ってみよう。

 

次回、「余韻を楽しもう」

sado-kouta.hatenablog.com

宙へ、願い届けて H-IIAロケット48号機 打ち上げ見学旅行記(4)

新潟在住の社会人宇宙ファンがH-IIAロケット48号機の打ち上げを見に種子島へ行ってきたお話。

 

旅行記(1)はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

前回(3)はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

 


宙へ、願い届けて

H-IIAロケット 48号機 打ち上げ見学旅行記(4)


 

前回のあらすじ

2024年1月11日(木)深夜 打ち上げを明日に控えるH-IIAロケット48号機の機体移動見学&撮影しました

 

さらに光学8号機のイラストも完成し、打ち上げ成功を祝う準備もOK。
これから打ち上げ当日の朝から打ち上げ10分前までの動きを記します。天気予報は曇り!

 


打ち上げを見よう! 打ち上げ当日朝~(2024年1月12日)


 

6:30すぎ 起床。もっと寝ていたかったが興奮のせいか身体が目覚めてしまった。長谷展望公園の芝生へ行ってみると、誰も場所取りをしていなかった。拍子抜けするくらい平和な朝だ。

空を見上げると、昨日は見られなかった厚い雲が空の半分を覆っている。

打ち上げ当日の朝。写真右上に金星が見える

 

射点がある東の空には一番星、つまり金星が浮かんでいた。きっといい1日になる。そんな気がした。
7:00 長谷展望公園の駐車場を撮影。

車中泊勢の車が十数台停車している程度で駐車場はガラガラ。歯を磨きながら朝日を待つ。

 

7:30 分厚い雲を昇り切った朝日が、種子島を照らす。

なんという神々しさだ…

日も出たことだし、朝のH-IIAを撮影しておこう。カメラに望遠レンズをセットして射点へ向ける。
気が付けば東の空は朱鷺色に染まっていた。

7:24 長谷展望公園から EOS90D 244mm F6.3 1/160s ISO800 

 

朱鷺色のベールに包まれたH-IIAロケット48号機
7:35 長谷展望公園から EOS90D 600mm F6.3 1/320s ISO800 

 

朝っぱらから一人ロケットを撮影していると、おじさんたちがやってきて「ロケット見える?」と声をかけてくれたのでしばし談笑。彼らは大阪や埼玉からきて、種子島で知り合ったそうな。みんな、遠くからよくきたものだ。

 

素敵な朝を堪能した後は宇宙ヶ丘公園へ向かう。目的はパノラマカメラのセットである。

8:10 10分ほどで宇宙ヶ丘公園に到着。さて射点の方角を見てみよう…とする私の視界に、テレメータ施設のパラボラアンテナが入った。

ヒエッ…

左:1月11日13:36撮影(どちらもトリミング済)右:1月12日8:20撮影

 

パラボラアンテナが、ロケットの方を向いている!!初めて見た!
そう、あのアンテナはロケットを追尾し、ロケットからの電波を受信するためにある。だからロケットを向いている…
頭では理解しているのだが、あのアンテナが真上を向いているところしか見たことが無かったのでかなり驚いた。

 

宇宙ヶ丘公園から第一射点にいるH-IIAロケットを撮影。

左:芝生エリアより撮影   右:展望台の屋上より撮影

8:30 宇宙ヶ丘公園から EOS90D 600mm F6.3 1/1600s ISO200 

 

なるほど機体の下半分は山陰に隠れてしまうのな。

 

9時 打ち上げ5時間前の段階では宇宙ヶ丘公園に車・人影はまばらだ。パノラマカメラをセットし、後は撮影出来ていることを祈りつつ長谷展望公園へ戻る。

 

情報収集衛星光学8号機 1月12日(金)」 「H3ロケット試験機2号機 2月15日(木)」

道中、打ち上げ予定の書かれたモニュメントを撮影。裏側には来月のH3ロケット打ち上げ予定も書かれていた。2つのロケットの記載があるのはけっこう珍しいかも?

 

9時半 打ち上げまでまだ4時間もあるので、朝にあったおじさんたちと談笑を再開。みんな遠くからはるばる打ち上げを見に来るだけあって、愉快な方たちでした。

 

談笑しつつロケットを撮影していると、そこに20kgはありそうな巨大なスーツケースを引っ張った学生さんがやってきて、大きな三脚、そしてカメラをセットし始めた。

その学生さんが私にロケットへの光の当たり方や使用レンズについて聞いてきたので、ロケット撮影ファン同士、情報交換をした。彼は撮影機材としてテレコンやらダットサイトを持っていた。すごい装備だ…

聞くと、彼は徒歩と公共交通機関、そしてタクシーで長谷展望公園までやってきたという。レンタカーは無し(マジかよ!)。宿はどうしたのかというと、野宿だという。なるほどスーツケースにはしっかりとキャンプグッズが入っていた。

すごい学生さんがいるもんだ、彼は将来立派になる、などと談笑した。

11時ごろの長谷展望公園の様子 まだ人は少な目。

 

10時半ごろ 学生さんがカメラを片付け始めたので何事かと聞くと、これから上里地区へ行き、そこで打ち上げを撮るのだという。

なんとまあ。

しかも徒歩で行くという。…あの巨大極まるスーツケースを引っ張って、数キロの道のりを歩くと。

 

よし、私が車で送ろう。私はレンタカーを持っているし、上里地区の場所も知っている。私がやらねば誰がやる。私の三脚と機材の一部をおじさんたちに見てもらい、私は学生さんと一緒にレンタカーへ。

車内で「H-IIAロケットはカッコいい。だけどH3ロケットはちょっと太いね」などと談笑しつつ上里地区へ。

上里地区へ行くと鹿児島県警の車両が止まっており、お巡りさんが路上駐車をしないよう見張っている様子だった。お巡りさんから「駐車されますか?」と聞かれたので「彼を下ろすだけです」と答え、彼とスーツケースを下ろす。

 

10:52 上里地区から EOS90D 484mm F6.3 1/1600s ISO200

ついでに私も上里地区から手持ちでロケットを撮影した。2枚だけ。

昼間のH-IIAロケットをほぼ正面から撮れた…実にいい写真だ。あの学生さんが居なければこの写真を撮ることは無かっただろう。

全く幸運だったな。彼も、そして私も。

去り際、彼が手を振ってくれた。お互い良い写真を撮ろうな。

 

長谷展望公園に戻っておじさんたちと合流。上里はどういう写真が撮れるのかと聞かれたので、撮った写真↑を見せると「お~」と喜んでいた。嬉しい!

 

12時 気が付けば打ち上げまであと1時間44分となった。H-IIBロケット7号機の時は打ち上げの1時間50分前に打ち上げ中止を知らされたから、一つ壁を超えた気分だ。だが、まだ打ち上げがあるかは分からない。

当時の心境だが、いたって冷静だ心拍数は100程度(徒歩と同じくらいの心拍数)なのがその証拠。ちなみにランニング後の心拍数は150とかになる。

時間もあるし、やりたかったことをして過ごす。例えば…

推しのVtuber「宇推くりあ」ちゃんと推しのロケットの2ショットv('ω'v)。

 

推しのロケットアイドルVtuberH-IIAロケットを一緒に撮影。たまらん2ショットだ!
この写真をTwitterに上げているとご本人に反応いただけた。嬉しい!

 

そんなことをしているとおじさん2人がニコニコで戻ってきた。何をしていたのか聞くと、屋台のうどんを食べていたそうだ。2人が閑古鳥が鳴く屋台の近くでうどんを食べているといつのまにか行列ができ、店主に感謝されたそうな。ほー!

うどんあるのか!食べたい!

行列に並び、1杯500円の暖かいうどんをゲットした。

左:38号機(2018.2.27)        右:48号機(2024.1.12)

 

38号機と同じ構図で撮影してみた。強い風が吹く中で食べる暖かいうどんはとてもおいしかった!
そうそう、種子島滞在中はとにかく風が強かった。毛糸の帽子じゃなかったら耳が冷えて大変だったと思う。空にはまだ雲が多くあるが、それでも日差しのおかげで暖かかった。

 

12:44 打ち上げ1時間前 振り向くと、いつの間にか大勢の見物人が芝生に座っていた。ついさっきまでおじさんたちと「あんまり人来ないね」などと話していたのがウソのようだ。

打ち上げ1時間前の長谷展望公園の様子

 

打ち上げ近し。ここで撮影に使うカメラについて紹介しよう。
今回、私は宇宙ヶ丘公園に設置したカメラを含め、全5台体制で撮影に臨んだ。

1:超望遠静止画:Canon「EOS 90D」+SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM Contemporary
2:超望遠動画:Panasonic 4Kビデオカメラ「HC-VX985M」…H-IIBF7用に購入
3:中望遠動画:CanonEOS Kiss X5」+Canon EF-S 55-250mm …H-IIAF38で活躍
4:広角動画:スマホ
5:広角動画:パノラマカメラ@宇宙ヶ丘公園

 

1~4は長谷展望公園で使う。1人でカメラ4台。バカげてると思うかもしれないがマジである。

カメラの上にカメラを結合させ、三脚2台で組む。

 

あまりの異様な光景さゆえか、見学に来ていた打ち上げ関係者の母息子から「(この光景を)撮ってもいいですか!?」って言われましたw(もちろん快諾
聞くと、父親が種子島宇宙センターで打ち上げの責任者の一人をやっているそうで、熱心なファンがいた様子を見せるのだそうだ。ウケるwww

 

こんな調子で打ち上げを待っていると、打ち上げまであと30分に迫った。

・・・マジで?

Twitterを確認するが、打ち上げ中止の情報はない。これはもしかして、本当に打ち上がるのではないか。期待しすぎると中止になった時に心が折れるので「もしかしたら打ち上がるかも」程度に思っていたが…

脳がX-30分前と認識するや否や、心拍数は80から一気に120に上昇

半信半疑で撮影準備をしていた心がざわつき始める。これは…

 

打ち上げ25分前。射点の周りで恒例の散水が始まった。

 

打ち上げ10分前になると、公園の仮設スピーカーからアナウンスが流れてきた。

「竹崎総合司令棟より、打ち上げ作業関係者に向けて、打ち上げ準備状況の報告をいたします。」

 

H-IIAロケット48号機 打ち上げ最終実施判断の結果は"GO"です。」

 

 

頭がフリーズした。

飛ぶのか。本当に飛ぶのか。

 

夢にまで見た光景が本当にやってくるぞ、という緊迫感が思考を埋め尽くした。

CPU使用率100%の頭でカメラの録画ボタンを押す。
心拍数は140をマーク。過去最高にドキドキしてきた。

 

深呼吸をし、落ち着こう…と空を見上げると、そこには……

青空が広がっていた。

 

6年前のH-IIAロケット38号機打ち上げで見た、あの空。

 

6年前と同じ言葉を思った。「青空へ行ってこい!」

 

さっきまであった雲は風が運び去ったらしい。

 

さあ、舞台は整った。全神経を集中させ、H-IIAロケットの雄姿を、情報収集衛星 光学8号機の旅立ちを撮ろう。

 

 

次回「宙へ、願い届けて」

sado-kouta.hatenablog.com