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宙へ、願い届けて H-IIAロケット48号機 打ち上げ見学旅行記(1)

みなさまこんにちは。やまごんです。

 

先日、私はH-IIAロケット48号機の打ち上げを見に種子島へ行ってきました。

その時の体験と写真が何かの役に立てばと思い、旅行記にまとめました。

私の経験や打ち上げ見学&撮影のお役立ち情報をいくつも盛り込んでいますので、種子島で打ち上げを見たいと考えている方々の参考になれば幸いです。

 


宙へ、願い届けて

H-IIAロケット 48号機 打ち上げ見学旅行記(1)


 

前提条件

今回の旅は次のような特徴があります。
・3度目の種子島旅行
・4泊4日の社会人一人旅
・旅の起点&終点は新潟
・主目的は「H-IIAロケットの撮影」
種子島でレンタカー使用
・宿なし、寝袋あり、車中泊

まず、種子島に行くのはこれが3度目となります。打ち上げを見られたのは1度目のH-IIA38号機のみで、2度目(H-IIB 7号機)は打ち上げの1週間延期で見られず仕舞い。1度目で得た経験をフル活用して旅支度および行動をします。

 

打ち上げ予定日が木曜日でしたので、木曜・金曜に有休を取り、水曜日夜に行動開始。木~日の4日間が行動日で、打ち上げ延期に備えた予備日は金・土・日の3日間を設定。

 

新潟から出発し、撮影用のカメラ機材を抱えて種子島へ。スーツケースの中身の半分がカメラ用機材でした。島ではレンタカーを借りて行動しますが、宿はありません。種子島は新潟と比べたら天国みたいに暖かいので、冬でも車中泊で夜を越せるため。

 

以上を踏まえた上で旅行記を参考にしてくださいね。

 


打ち上げ4ヶ月前(2023年9月)


 

私は思った。

H-IIAロケットを撮りたい」

と。

 

私は12年来の宇宙開発ファンである。宇宙機が特に好きだが、ロケットも好き。中でもH-IIAロケットは私の大好きなロケットの1つ。
しずく、はやぶさ2、Telstar 12 VANTAGE、ひとみ、つばめ etc.
H-IIAはいくつもの名宇宙機を宇宙へ送り出してくれた。そして私はその光景をネット中継で何度も見てきた。

 

私は1度だけ、種子島H-IIAの打ち上げを見たことがある。2018年2月。…もう6年も前のことだ。私はH-IIAロケット38号機が青空に吸い込まれていくのを現地で見て、感じて、撮影した。

 

その時の見学旅行記はコチラに詳細を載せています。ぜひご覧ください。

sado-kouta.hatenablog.com

sado-kouta.hatenablog.com

sado-kouta.hatenablog.com

その時撮った写真がこちら。

H-IIAロケット38号機の打ち上げ 2018年2月27日、恵美之江展望公園から

あれから5年が経った。

今、私の手元には5年前には無かった高性能のカメラ・三脚がある。
これでもう一度、もう一度だけでいい。H-IIAの雄姿を写真に収めたい。

 

思いと共に焦りも募る。というのも、H-IIAの引退まであと1年しかないのだ。

なぜあと1年だと分かるのか。
実は内閣府が公開している「宇宙基本計画工程表」にロケットの打ち上げスケジュールが書かれており、H-IIAの運用が2024年度で終了することが見てとれるのだ。

宇宙基本計画工程表 (令和5年度改訂案)

リンク:宇宙基本計画工程表 (令和5年度改訂案)

つまり、宇宙基本計画工程表を見れば、いつ、何が、何のロケットで打ち上げられるかがざっくり分かる。なお工程表は毎年改訂されるので、常に最新の工程表を確認することをお勧めします。(宇宙計画は延期しない方が珍しいので。)

 

さて表の左下には「X線分光撮像衛星/小型月着陸実証機」とあるが、これは2023年9月にH-IIAロケット47号機で打ち上げられた。

とすると、残るH-IIAの打ち上げは「情報収集衛星光学8号機」「同レーダ8号機」「温室効果ガス・水循環観測技術衛星」の3機だ。

そして打ち上げ時刻についてだが、38号機の見学旅行記に書いた通り、情報収集衛星の打ち上げ時間帯は推測できる。2024年現在は10時半前後か13時半すぎの二択だが、光学/レーダ8号機は13時半すぎに打ち上げられた光学/レーダ6号機の後継機。なので打ち上げ時間帯も同じ13時半すぎと考えられる

 

さらに温室効果ガス・水循環観測技術衛星ことGOSAT-GWは衛星いぶき(GOSAT)と同様の軌道をとることから、打ち上げもGOSATと同じ13時前後になると予想できる。

 

よって、推測は下記の通りとなる。

H-IIA 47号機:2023年9月 XRISM/SLIM ★打上済
H-IIA 48号機:2023年度後半 情報収集衛星光学8号機 13時半すぎ打ち上げ?
H-IIA 49号機:2024年度前半 情報収集衛星レーダ8号機 13時半すぎ打ち上げ?
H-IIA 50号機:2024年度後半 温室(略)衛星GOSAT-GW 13時前後打ち上げ?? ★ラストフライト

 

2023年9月時点で、H-IIAロケットの引退まであと1年、残り3機。

次の打ち上げは今年度後半にある48号機だ。打ち上げ実施の発表があった時にすぐ動けるよう、私は種子島見学旅行の行程表を準備した。

 


打ち上げ2ヶ月前(2023年11月13日)


 

ロケットの打ち上げ実施は、打ち上げ2か月前に発表される。

11月13日、H-IIAロケットの打ち上げを担う三菱重工H-IIAロケット48号機を打ち上げると発表

 

打ち上げる衛星は「情報収集衛星 光学8号機」
打ち上げ日時は「2024年1月11日(木) 13時00分~15時00分」

 

私はTwitterでその報せを見て身体中に電流が走った。ついに来た!

すぐ打ち上げ見学に行くか否かの判断をする。機体移動(後述)は水曜の夜に行われるから、水~金で有休をとれば日曜まで島に居られる。見学可能性は大。行くしかあるまい。

 

私はH-IIA 38号機でレンタカー確保に遅れた戒め反省から、その日のうちにレンタカーの確保に動いた。レンタカーを借りる期間を仮設定し、レンタカー会社に電話をかける。担当者への取次ぎの待ち時間でさえもどかしい。緊張で心臓がバクバクしている。

ふと窓の外を見ると、雨上がりの空に虹がかかっていた。…その後無事にレンタカーの予約に成功。よっしゃー!

 

お次は行程表の具体化だ。事前準備していた行程表に日付を入れる。

1月09日(火):往路日1(新潟→京都)
1月10日(水):往路日2(京都→種子島)深夜に機体移動を見学
1月11日(木):打ち上げ予定日
1月12~14日(金~日):予備日・復路日

 

1月9日に夜行バスで京都まで移動し、1月10日の早朝に新幹線で鹿児島中央まで移動したのち、港から高速船で種子島へ行く計画だ。10日夜にH-IIAの機体移動を見学し、11日昼に打ち上げを見学する。打ち上げ延期を考慮して予備日を3日間確保した。

※機体移動とは

大型ロケット組立棟(VAB)から射点までロケットを移動させる作業のこと。打ち上げの13~15時間前に行われる。

H-IIAロケット38号機の機体移動の様子 2018年2月26日

 

有休も申請したので一安心。いけるぞ!

 

ちなみに宿の予約だが、私は種子島がお隣の馬毛島の基地工事とやらで深刻な宿不足であることを知っていたので、何もしなかった。
寝袋と車中泊で2月の種子島の夜を越せることは38号機で実証済みだしね。宿があるに越したことはないが、車中泊でも全然いける。

 

 


打ち上げ40日前(2023年12月5日)


 

なんてこった・・・
勤め先の都合で、1月10日(機体移動見学日)が仕事日になった。
社会人はこれがつらい。

 

スマホを叩き、往路のプランを再検討する。幸いにも1月10日夜に新潟空港発の福岡便に乗って新幹線で鹿児島へ行けば、1月11日朝に種子島入りできることが分かった。お昼の打ち上げは見られそうだが、10日夜の機体移動見学&撮影は諦めるしかない。残念だ…

しかも冬に新潟空港を使うというのは、大雪による欠航のリスクを背負い込むということ。不安だ…

 

 


打ち上げ2週間前(2024年12月28日)


 

ここでH-IIA 48号機で宇宙へ行く情報収集衛星衛星「光学8号機」について触れておく。

情報収集衛星はカメラやレーダーで宇宙から地表を撮影し、隣国や被災地の情報収集を担う衛星である。「光学8号機」は光学6号機の後継機という位置づけ。そして光学6号機は私が初めて種子島で打ち上げを見た、H-IIA38号機で宇宙へ行った。

 

つまり私は光学6号機の旅立ちのあと、後継機の旅立ちにも立ち会おうとしている。…なんという運命のめぐりあわせだろうか。

 

前述のとおり私は宇宙機のことが好きな宇宙ファンで、宇宙機を解説したり、擬人化イラストを描いたりするのが趣味。

光学8号機の打ち上げ成功した暁には、盛大にお祝いしたい。
私は情報収集衛星 光学8号機」の擬人化イラストを制作することにした。

 

画像

光学8号機の擬人化ちゃんの線画

光学8号機はNEC製らしいので、NEC製衛星であるGCOM衛星と同じ衛星バス(NX-1500L)にWorld View衛星のような大型の光学センサを載せたデザインにしてみた。

願わくば…宙(そら)へ打ち上がるロケットを見てみたい。打ち上げに成功してほしい。

もし打ち上げを見られたら、ロケットの写真を背景に光学8号機ちゃんの打ち上げ記念イラストを投稿しよう!!と心に誓った。

 

ただ打ち上げを見に行けない&見られない可能性もある中でのイラスト制作は心理的に大変でした。無駄に終わる可能性もあるわけで…

そこはもう"宇宙機愛"で頑張りました。

 

 


打ち上げ10日前(2024年1月1日)


 

元日の北陸を烈震が襲った。
私が居た新潟も震度5以上の揺れに見舞われた。幸いにして家に被害は無かったが、普段通りの日常に戻ろうとする心に追い打ちをかける報せが届いた。

 

新潟空港が終日欠航になった。

 

やめてくれ・・・

翌日には運航を再開するも、もし1月10日に大きな余震が起これば、私の旅は始まる前にご破算になるだろう。

余震が極めて多い地震だっただだけに、私の心はひどく動揺した。

 

さらに不安要素として、新潟空港のある新潟市の天候が気になる。天気予報を確認すると1月10日の新潟市の天候は「雪時々曇り」。雲行きが怪しくなってきた…

 

 


打ち上げ9日前(2024年1月2日)


 

ロケットの打ち上げは毎回ドキドキの時間である。38号機の打ち上げの時も心臓バックバクだったのは今でも覚えている。

そこで、正月のセールをしていた家電量販店でスマートウォッチを購入。
これで打ち上げ時の心拍数を測ってみるのだ。

 

平常時の心拍数は70~100。さてどうなるだろうか

 


打ち上げ3日前(2024年1月8日)


 

打ち上げ一週間前になると、種子島宇宙センターの週間天気情報で打ち上げ日の予報が見られるようになる。
リンク:種子島宇宙センター 気象情報

 

ここで問題です。この天候で1月11日13:00~15:00の打ち上げは予定通り行われるでしょうか!?

1月8日時点の種子島宇宙センターの週間気象情報

 

 

 

 

答えはNO。

打ち上げ時間帯の天候は曇りで打ち上げに支障は無いが、打ち上げ13時間~15時間前に行われる機体移動の時間が雷と強風の予報になっているため、機体移動ができず打ち上げは延期となる。

 

翌日。翌々日の天候は良好なので、打ち上げは1日延期になるだろう。

 


打ち上げ2→3日前(2024年1月9日)


 

打ち上げ2日前になると、天候事情も踏まえた打ち上げの正確な日時が発表される。
この日、三菱重工が発表した打ち上げ日時は当初予定から1日延期の1月12日

 

まあ、そうなるな。延期は想定の範囲内なのでショックはさほど大きくはなかった。

 

1月9日時点の種子島宇宙センターの週間気象情報

 

なお1月12日の天候は曇り。ロケットが雲に突っ込む、いわゆる「雲ズボ」になると予想される。打ち上げを見られないよりはいい。

 

運命の打ち上げ時間は13:44:26。カウントダウンが止まらない限り、この時間に光学8号機を載せたH-IIAロケット48号機が宇宙へと旅立つ

 

スーツケースにデジタル一眼レフカメラ2台、ビデオカメラ1台、パノラマカメラ1台、三脚2台、そしてレンタルした超望遠レンズ(150-600mm)と寝袋を詰めて、荷造りは万端。

 

私は1月10日の夜に出発する。気になる新潟空港の天候は曇り。欠航の可能性は無い。
打ち上げ見学旅行、GOします。

 

次回、種子島上陸&見学場下見へ。

旅行記(2)へ続く

sado-kouta.hatenablog.com