新潟住みの宇宙機ファンがH-IIAロケット48号機の打ち上げを撮影しに種子島へ行ってきたお話。今回で最終回です。
旅行記(1)はコチラ
前回(5)はコチラ
前回のあらすじ
打ち上げ日当日、H-IIAロケット48号機の打ち上げを長谷展望公園で見学&撮影。
ロケットは無事「情報収集衛星 光学8号機」を軌道に投入し、打ち上げは大成功。
私は準備していた光学8号機のイラストでお祝いをするのだった。
今回は打ち上げ後の余韻編。打ち上げ後ならではのお楽しみを紹介。
余韻を楽しもう(2024年1月13日)
打ち上げの翌日、1月13日は土曜日。
宇宙ヶ丘公園に停めた車内で朝を迎えた。今日の予定は特に決めていないが、とりあえず種子島宇宙センターのバスツアーに参加してみたい。H-IIAロケットの「移動発射台」(ロケットと一緒に射点に運ばれた発射台)を見てみたかったが、たぶん昨夜で片づけられただろう。昨日のうちに気付いていればな…
宇宙ヶ丘公園にあるロケット打上げのお知らせ看板で記念撮影。なお、ピースサイン撮影の数十分後には日時の掲示がなくなっていた。
ありがとう、H-IIA F48
私は元々1月14日(日)の夕方に種子島を離脱する予定だったが、打ち上げを昨日見られたので今日の夕方にも種子島を離脱したいかな…などと考えながら車を出て寝袋をしまっていると、昨日長谷展望公園で一緒に打ち上げを見たお兄さんと偶然再会。さらには昨日上里へ送った学生さんとも再会。学生さんは宇宙ヶ丘公園でテント泊をしていたのだった。
「良い打ち上げでしたねぇ!」「天気も良かったね!」と、3人で打ち上げを見れた喜びを分かち合った。
学生さんが上里で撮った写真も見せてもらったが、実に良く撮れていた。
さて学生さんはこれからどうするのか。聞くとバスで移動するそうで、しかも南種子町のバス停までは徒歩で行くと。
…あの巨大極まるスーツケースを持って!?
バス停までは下り坂だが、スーツケースを引いての徒歩30分はなかなか大変だ
ということで南種子町の「役場前」バス停まで私のレンタカーで送りました。私もバス停の位置を確認できてWin-Win。ちなみに役場前のバス停は2種類ありました。「空港バス」と「路線バス」でバス停が違うので、利用する方はご注意を。2つのバス停はすぐ見える範囲にあります。
この後は近くにあった南種子町の「トンミー市場」でお土産を購入。「JALファーストクラスで機内食のお茶菓子に採用された」という芋パイをゲット。
トンミー市場の入口に掲げられた横断幕
車の中で今後の予定を考える。明日まで種子島にいるよりは今日鹿児島へ行って明日、やりたいことをやりたい……。スマホを叩くと、運よく1月13日18時種子島空港発のJAL便が1席だけ空いていた。ただし1月14日種子島発のJAL便を予約変更不可の「セイバー」で予約していたため、取り消し手数料がかかる。…と思っていたのだが、なぜか1月13日の便に変更できた。手数料0円で。
なぜ変更できたんだ??
という疑問をTwitterで呟くと、旅行に強いフォロワーさん(Iさん)が「JALは羽田での地上衝突事故(2024/1/2)への特別対応として、今月中は手数料を取らないそうです。」と教えてくれた。なるほど。
つくづく、フォロワーの情報力には驚かされる!
さて航空便の変更ができたので、今度はレンタカー会社に電話を入れて帰りの便とレンタカー借用期間の変更を伝えた。
さて夕方までどうしよう。宇宙センターのバスツアーに参加したいのだが、宇宙センターの科学技術館に9時から5分おきに電話をかけても一向に通じないんだよなあ…
とTwitterを眺めていると、種子島に来ているフォロワーさん(Zさん)が今日撮ったと思しきH-IIAロケットの移動発射台の写真を投稿していた。
吉信第一射場ではクレーンが何らかの作業中 pic.twitter.com/L9z12wdxyh
— ZplusC1Bst (💉x 5) (@ZplusC1Bst) 2024年1月13日
えっ、移動発射台あるの?
H-IIAロケットをVABから射点まで運ぶ「移動発射台」がまだ射点にあるらしい。私はてっきり昨晩のうちにVABに戻されたと思い、諦めていたのだが…よし、行こう!ついでにフォロワーさん(Zさん)に会おう!車を走らせ種子島宇宙センターへ。
中型射点へ続く道を進むとH-IIA/H3ロケットの射点が見えてくる。おとといには無かった灰色の構造物がそこにはあった。なんだあれは!?
左:1月11日撮影 右:1月13日撮影
中型射点に続く坂道から
車を走らせながら笑う。
「なんかあるんですけどwww」
車を中型射点入り口近くの空き地に止め、見慣れぬ灰色の構造物を眺める。これが移動発射台か…
Twitterを見るとZさんが近くにいるようなので連絡し、ついでに私の見た目情報をリプライ(返信)した。そして…中型射点近くから行ける大崎海岸にて無事ランデブー(合流)。
会えたーーー!!
二人で大崎海岸を歩きながら射点近くまで歩きました。
※打ち上げ後なので大崎海岸へ行く道が解放されています。
※打ち上げ前~打ち上げ後しばらくは大崎海岸へ行く道は封鎖されているので、行っちゃダメです。
※砂浜なので足元注意!
大崎海岸から見る吉信射点(大型ロケット発射場)
右手には海、前方には青空にそびえる宇宙センターの建造物、そして昨日役目を果たした移動発射台。波の音も相まって最高のロケーションだ。
大型ロケット組立棟(VAB)の扉
この扉が「世界一大きなスライド扉」としてギネス世界記録に認定されていることはあまりにも有名。
H-IIA用の第1射点。ここまで近づけるなんてエグいな…
まさかこんな近く(約50m)で移動発射台を見られるなんて思わなかった。Zさんが「信じられない」と言うのもうなづける。
文字が焦げて真っ黒になっているのもハッキリわかる。SRB-Aを4本使うH-IIA204形態やH-IIBロケットではよく焦げてた印象があるが…H-IIA202形態(H-IIA F48の姿)でも焦げるんだね!?
海岸を歩きながらしばらくZさんと談笑。お互いのスマホで移動発射台との記念写真を撮ったり、宇宙趣味のお話をしたりした。Zさんはこれまで何度も打ち上げを見た経験があり、さらにアメリカでファルコン9も打ち上げを見たこともあるスゴイ人。今回(H-IIA F48)は私と同じく長谷展望公園で打ち上げを見たとのこと。また、打ち上げ時は撮影には集中せず、Mark I Eyeball (肉眼)での観測に特化していたそうだ。素晴らしい!(五感で打ち上げを楽しめたの、すごく羨ましい…!)
大崎海岸は砂浜で、すぐ近くにはエメラルドグリーンの海。茶色く濁った冬の日本海とは大違いだぜ…Zさん曰く「サンダルを持ってくるといい」とも。流石。その発想はなかった!サンダルで波を体感するのも最高だろう。
移動発射台とヤシの実
と、砂浜を歩いていると前方から作業服姿の人が近づいてきた。宇宙センターに勤める関係者だろうか。こんにちは~とあいさつをすると、だしぬけに「やまごんさんですか?」と。
ええっ!?
な、なぜ私の事を…ロケットの写真を撮りすぎたか!?怒られる!?と硬直するも、Twitterを見て私に声をかけたと知り破顔。なんと彼も私のフォロワーさんでした。私が宇宙ヶ丘公園で撮った動画に彼が写っていたこともあり、私に声をかけたとのこと。
せっかくなので彼が宇宙ヶ丘公園で撮った写真を見せてもらいました。
宇宙が丘公園から撮影したH-IIA F48
— 青い日向夏蜜柑 (@xtz125_blue) 2024年1月12日
#H2AF48 pic.twitter.com/1DRxKOVLlH
良いねぇ!!クッキリハッキリ撮れてるし、宇宙ヶ丘で撮った写真は恵美之江とも長谷ともまた違ったアングルなのも良い!
しかも彼は私と同じくH-IIA38号機で初めてロケットの打ち上げを見たそうで、まさかの共通点にびっくり。しかも私と同じく恵美之江展望公園でみたというのだから驚きだ。彼が撮ったF38の打ち上げ写真を見せてもらいましたが、雲一つない青空へ打ち上がる、私の記憶/記録と全く同じ写真でした。まさかの出会いがとても嬉しかったです。
時刻的にお昼なので「今日は宇宙センターの食堂って開いています?」と聞いてみると、土日はやっていないと教えてくれました。ぐぬぬ。
それにしてもよく声をかけてくれたものだ。嬉しかった!
午後、Zさんが「15時からの宇宙センターのバスツアーが空いてるよ」と教えてくれたので、バスツアー(無料)に参加しました。情報助かる~!
H-IIAの説明が聞けるのもあと1年かもしれない
今回の見学場所はロケットの丘、ロケットガレージ、RCCの3つ。打ち上げ後であれば「射点」の見学もできるはずなのだが、今回は無かった。しかしRCCは打ち上げ後しか見られない見学場所の一つ。見るのは初めてなので楽しみだ。
ロケットガレージ内部
ロケットガレージではH-IIロケット7号機の実機をやや遠くから見学しました。
ロケットのフェアリングと衛星の模型
たぶん初めて見たのが↑写真の模型。見たところ大きい衛星が衛星いぶき(GOSAT)で、相乗りの大きい方がSDS-1、小さい方がまいど1号(SOHLA)だ。JAXAの人からの説明は特にありませんでしたが、宇宙機ファンの私はつい注目しちゃう展示物でした。
ロケットガレージの次はRCCこと「竹崎総合指令棟/指令管制棟(Range Control Center)」へ。内部は撮影禁止なので写真はありませんが、モニタがずらり並んだ管制室を見ることができました。
管制室の一番手前側の右側の席には「NEC Project Manager」の名標がありました。やはり今回の情報収集衛星 光学8号機はNEC製だったのだろうか。
バスツアー終了後は種子島空港へ。名残惜しいが、もう種子島を離脱せねば。
種子島宇宙センターへ続く道にて
種子島空港は今回初めて使う。そうそう、飛行機に乗る前にぜひ買いたいモノがあった。種子島空港の売店で購入したそれは「南日本新聞」。
2024年1月13日号の一面。カラー写真付きの記事が掲載されている
打ち上げの翌日の南日本新聞には打ち上げの記事が載っているのだ。しかも他紙とはことなり、一面に大きく載る。良い記念になったよ!
左:H-IIA38号機(2018年2月)の記事 右:H-IIA48号機の記事(2024年1月)
↑6年前に買った新聞と並べてみた。写真も見出しもほとんど一緒で大笑いしました。
鹿児島空港への移動は人生初のプロペラ固定翼機搭乗にて。機内に入ると、JALの搭乗時BGM「I Will Be There with You」が流れていた。
私はこの音楽が大好き。まさか聞けるとは思っていなかったのでびっくりした。
腰を落ち着けて、今回の旅を思い返す。
3日間に及ぶ種子島滞在は実に多くの思い出ができた。数多くの出会いもあった。
だがやり残したこともある。
・見学場の下見が忙しくて宇宙科学技術館を見て回れなかった
・竹崎展望台やカーモリの峯展望台に行ってみたかった
・宇宙センターの食堂や種子島のグルメも味わってない
・種子島空港の宇宙関連展示やレストランも時間が無くて行けなかった
・JAXAの増田宇宙通信所見学も今回はパスした
しかし…これでいい。また来ればいいのだから。
むしろ、やり残したことは次来た時のお楽しみにしておこう。
「また来ます。」窓の外を流れる景色に約束した。
夕焼けと三日月
種子島→鹿児島の機内では神秘的な光景↑が見えた。
この日は鹿児島で一泊。翌日は天気が良かったので、急遽レンタカーを借りて鹿児島にある新幹線撮影地を巡り、九州新幹線を撮影した。
もし天気が悪かったら、鹿児島県のもう一つの宇宙基地である「内之浦宇宙空間観測所」に行ってみる予定でした。(天気がいい日は新幹線がよく映えるのだ)
800系新幹線U6編成
N700系新幹線S10編成
N700系R7編成 (R7といえばロケットですね!)
800系新幹線U6編成
N700系(水色)に800系(かわいいの)。東の民にとってはどれも新鮮な光景で鉄分が満たされた。
夕方、鹿児島中央駅18:30発の新幹線でいよいよ帰路へ。
非日常から日常への切符
乗車前に「しろくまアイス」と「タイムセール300円引きの にく弁当(1000円)」を購入し、新幹線の車内でいただきました。今後鹿児島に来たらお店でしろくまアイスを食べてみたいものだ。
その後は関西で新潟行きの夜行バスに乗り換えて翌朝、新潟へ帰還。
無事、旅を終えた。
ここまで読んでくれてありがとうございました。
種子島の見学場・機体移動・打ち上げ・撮影設定などなど、これから打ち上げ見学を考えている人の参考になれば幸いです。
種子島での打ち上げ見学は行けば必ず見られるとは限りません。打ち上げの延期や中止は珍しい事ではないからです。
しかし、打ち上げが見られなくても、種子島には見どころがたくさんあります。リベンジに備えるもよし、この記事に出てきた施設に行ってみるもよし。種子島は気軽に来られる場所では無いですが、それでもチャンスはこれから先もきっと巡ってきます。打ち上げを見たいと願い続ける限り。
最後に私(やまごん)のTwitter(現X)アカウントを紹介して終わります。
日々いろいろ呟いています。どうぞよしなに!
https://twitter.com/sado_kouta
それでは、またの機会にお会いしましょう。