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宙へ、願い届けて H-IIAロケット48号機 打ち上げ見学旅行記(5)

 

新潟住みの宇宙機ファンがH-IIAロケット48号機の打ち上げを撮影しに単身種子島へ行ってきたお話。

 

旅行記(1)はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

前回(4)はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

 


宙へ、願い届けて

H-IIAロケット 48号機 打ち上げ見学旅行記(5)


 

前回のあらすじ

H-IIAロケット48号機の打ち上げ日当日、長谷展望公園で朝日を眺めた後、宇宙ヶ丘・上里地区で射点に鎮座するロケットを撮影し、長谷展望公園で13時44分26秒の打ち上げを待ちました。

 

今回はその続き、打ち上げ10分前からスタートです。

 

なお長谷展望公園では打ち上げ15分前から電波状況(docomo)が悪くなり始めていました。打ち上げ見学を考えている人は注意してくださいね。

 


宙へ、願い届けて(2024年1月12日13時34分~)


 

カメラ4台でロケットを撮影する。カメラの詳細は見学旅行記(4)にて

 

打ち上げは13時44分26秒に行われる。

打ち上げ10分前 公園の仮設スピーカーから

H-IIAロケット48号機 打ち上げ最終実施判断の結果は"GO"です。」

との宣告が流れた。いわゆる最終GO/NOGO判断というやつだろう。これがGOになった以上、もはや打ち上げは決定的だ。

 

夢にまでみたロケット打ち上げの撮影が間近に迫っているという事実が思考を埋め尽くす。周りの打ち上げ見学者との会話さえままならない。

心拍数は平常時の80-100bpmを大きく超える140bpmに達した。

私は三脚に据え付けたカメラ4台の画角の最終確認をし、動画用カメラの録画ボタンを順次押してゆく。

 

打ち上げ8分前 カウントダウンがスタート。公園の仮設スピーカーから聞きなれた機械音声お姉さんのカウントダウン音声が流れ始める。

機械音声お姉さんのカウントダウン狂おしいほど好き。

2024年1月12日の射点方向の空

このカウントダウンが0になった瞬間「情報収集衛星 光学8号機」を載せたH-IIAロケット48号機が打ちあがる。

 

打ち上げ5分前 静止画用超望遠カメラの最終試写を実施。低速連射モードよし、撮影設定よし。

 

周りを見渡すと、見物客の多くがスマホを手に持って打ち上げを撮影する様子だ。多くの人にとって打ち上げは一生に一度見れるかどうかの貴重な機会。撮らずにはいられないよな。私だってスマホしか無ければスマホを向けるだろう。

でも…ロケットの打ち上げは、スマホ撮影なんかせず全身で体感してほしいという気持ちもある。「カメラ4台も向けてる奴が何を言う」と思われるかもしれないが、これは本心だ。

ロケット打ち上げではエンジン燃焼の強烈な光爆音を体感できる。これをスマホのディスプレイ越しに、撮影に意識を向けて体感するのはあまりに勿体ないと思うのだ。もちろん、思い出を補強する意味でも撮影に意義はある。撮るなとは言わない。なのでこれを読んでいる人で、「打ち上げを見たいけど撮影(記録)もしたい」という人がいたら、ぜひ三脚を持って行ってほしい。三脚にスマホをセットし、動画モードで空を録画する。あとは録画が始まったことを確認し、肉眼と肌で打ち上げを楽しんでほしい。

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カメラを持ち込んでガチで撮影したい(私みたいな)モノ好きは大いに頑張ろう。言っておくがめっちゃ緊張するよ!

さて、私は打ち上げの瞬間は静止画用超望遠カメラのシャッターを押し、自分の目はロケットを見つめることとする。さらに打ち上げ後は撮影しつつ肉眼でもロケットを見ることにする。

 

打ち上げ35秒前 まもなく打ち上げだ。ロケットを見つめながら「頼むぞー」とつぶやいた。「打ち上がってくれ」というよりは「光学8号機を無事に軌道投入してくれ」という想いの方が強かった。

衛星分離までが打ち上げだ。そして私はこの打ち上げを祝う準備までしたのだ。頼むぞ。

 

打ち上げ10秒前 見物客によるカウントダウンが湧く。

 

さあ…打ち上げだ!

 

打ち上げ0秒前 13:44:26 リフトオフ!

13:44 長谷展望公園から EOS90D 484mm F9 1/1600s ISO400

 

13:44 長谷展望公園から EOS90D 484mm F9 1/1600s ISO400

 

H-IIAロケット 48号機 2024/1/12 13:44」(トリミング・微修正後)

叫ぶ。

行けーーーー!!!!

 

13:44 長谷展望公園から EOS90D 361mm F9 1/1600s ISO400(以下 特筆ない限り同じ)

 

13:44 長谷展望公園から EOS Kiss X5 ビデオ撮影切り抜き

 

撮影しつつ肉眼で直接ロケットを見ると、強烈な光が目に飛び込む。うわー眩しい!直視していいのか戸惑う光だ。
これは写真や映像では決して伝わらない。

雲を突き抜け

青空にふわり浮かぶ雲をかすめ、H-IIAロケット48号機は天空へと昇っていく。

打ち上げ30秒後 6.3km先の射点からゴゴゴ…という音が聞こえてくる。それも大音量だ!

H-IIAロケット 48号機 2024/1/12 13:45」(トリミング・微修正後)

 

打ち上げ40秒後 さらに大きな爆音が長谷展望公園を包み込む。

打ち上げ30秒後の音がメインエンジン(打ち上げ5秒前に点火)の音で、今届いた音が固体ロケットブースター「SRB-A」の音なのだろう。

「うわー!」「すごい!」「やばーっ!」見物客が驚きの声を上げる。

 

H-IIAロケットはグングン加速し、次第に小さくなっていく。衛星を軌道投入するために、重力を懸命に振り切ろうとしている姿に胸を打たれる。

応援か、祈りか。「がんばれ!」と声が出た。 打ち上げ成功を切に願いながら撮影を続ける。

打ち上げから約1分40秒後、固体ロケットブースター「SRB-A」が燃焼を終了。白い煙が薄くなり、肉眼では視認が困難となる。だがこの時間帯こそ、SRB-A分離というハイライトシーン。

SBR-A分離 2024/1/12 13:46」(トリミング後)

ファインダー越しに見るロケットから「白い点」が2つ離れていくのが見えた。SRB-Aの分離だ。
「分離してる!よし!いいぞ!」
周りの人が分離という単語に戸惑う恐れがあると思い、とっさに「いいぞ!」と付け加えた。

(余談:撮影後に写真を見て驚いた。SRB-A分離時の噴射炎やSBR-Aの形状がわかる写真を撮れるとは思わなかったから。良く撮れたものだ。)

SRB-Aが分離されるとロケットはいよいよ見えなくなり、追尾もピント合わせも不能になる。

前の写真と見比べると、真ん中のコア機体が姿勢を変えているのが分かる。宇推くりあさん曰く「ドッグレッグターン」だそうだ!やったぜ!

 

この写真を最後にロケットが見えなくなったので、望遠カメラを三脚に戻す。

打ち上げから2分30秒後 どこからともなく拍手が沸き起こる。打ち上げを見られた喜びが、公園中に響き渡った。

 

ようやく身体から力が抜けた。気が付くと、足ががくがく震えていた。

それもそのはず。打ち上げの瞬間(13:44)、心拍数は172bpmをマークしていた。
観測史上(1/5~)最高値である。それほど緊張していたのだな…。

心拍数は打ち上げの30分前から急上昇し、打ち上げでMAXに。

 

風で消えてしまう前にスマホロケットロード※を撮影。風が強いこともあってか、ロケットロードは10分ほどで空に溶けてしまった。(※ロケットが引いた白い噴射煙のこと。)

左:打ち上げから3分後      右:打ち上げから8分後

心が揺さぶられる3分間だった。

打ち上げが成功したかどうかは、まだ、わからない。
ひとまず撮影した写真をスマホに取り込み、リフトオフの1枚をTwitterにアップする。

その後は打ち上げを見た見学者たちと談笑。撮った写真をシェアするため、私のTwitterアカウントを教えたり、おじさんにはスマホ写真を直接送ったりした。おじさんが「打ち上げは成功?」と聞いてきたので「衛星が分離されれば成功です」と答えた。そう、軌道投入までが打ち上げ。

打ち上げ関係者の母息子さんと打ち上げを見られた喜びを分かち合う。お母様の方が興奮冷めやらぬ様子でした。「写真見させてもらいます!楽しみにしてます!」と言ってもらえた。

仮設スピーカーからは「ロケットは現在、安定して飛行を続けています。」との実況が流れる。

 

そして──打ち上げから18分後、「情報収集衛星 光学8号機の分離が確認されました。」とのアナウンスが聞こえた。

私はよっしゃー!とガッツポーズ。

打ち上げを見に来ていた打ち上げ見学の常連っぽいおっちゃん(バッジだらけの帽子つけてた)と成功を分かち合った。打ち上げ成功だ!やったー!

放心状態のまま、レンタカーに機材を片付ける。打ち上げから30分。スマートウォッチを確認すると、まだ心拍数は130でドキドキ状態を維持。私の心も打ち上がってしまったらしい。

ロケットは天空へ行き、光学8号機も無事宇宙へ行った。私の願いは宙(そら)に届いたのだ。

 

ありがとう、H-IIAロケット48号機。

 

車の中でふぅ、と息を吐く。それでも思考はふわふわ、心臓はドキドキしたまま。
放心状態からか、不幸にも宇宙ヶ丘公園へ向かう途中に道を間違えてしまった。が、そのおかげで「打ち上げ成功祈願」ののぼりが「打ち上げ成功」に変わっているところに遭遇した。

町の人たちがこうして成功をお祝いするとは、なんていい町なんだろう。

その後は宇宙ヶ丘公園でパノラマカメラを回収し、撮影映像をチェックし、問題なく撮れていることを確認。さらに南種子町のファミマでアイスを買って食べた。

気が付くと日没を迎えていた。

 

夕食に「美の吉」で味噌ラーメンをいただく。テレビでは今日の打ち上げのニュースをやっており、成功を改めて噛みしめることができた。

「美の吉」にて H-IIA F48のバッジと一緒に。

そうだ、忘れないうちに…

私にはやりたいことがあった。それは今日の打ち上げ成功のお祝いだ。

車の中で一休みした後、タブレットでお絵描きソフトを立ち上げ、今日撮った写真を取り込んでイラストの背景にする。

やばい、幸せすぎる…

衛星擬人化と、擬人化元の衛星を載せたロケット写真のコラボレーションなんて見たことない。しかも、素敵な擬人化イラストも鮮明なロケット写真も、どちらも私が描いて撮ったものだ。

こんな幸せなことが他にあるか!充実感で胸がいっぱいになる。

Twitterに投稿して、みんなとお祝い。

 

──打ち上げ成功、おめでとう!!

 

打ち上げの時に撮影した写真と動画はまとめてTwitterに投稿した。打ち上げ関係者の母息子さんからも反応があって嬉しかった。写真は予想以上に多くの方々に見てもらえて、嬉しさがバクハツしそうになりました。

 

下の写真はビデオカメラで撮影した動画からの切り抜き。デジタルカメラで撮った写真とは異なり、太陽光の反射がキラリと写っていました。


キラリ輝くH-IIAロケット
13:44 長谷展望公園から HC-VX985M

 

ロケット打ち上げ成功」

 

打ち上げの日の夜は宇宙ヶ丘公園に車を停めて就寝。
明日、1月13日(土)は宇宙センターに行ってみよう。

 

次回、「余韻を楽しもう」

sado-kouta.hatenablog.com