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宙へ、願い届けて H-IIAロケット48号機 打ち上げ見学旅行記(3)

 

新潟在住の社会人宇宙ファンがH-IIAロケット48号機の打ち上げを見に種子島へ行ってきたお話。

 

旅行記(1)はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

旅行記(2)はコチラ

sado-kouta.hatenablog.com

 


宙へ、願い届けて

H-IIAロケット 48号機 打ち上げ見学旅行記(3)


 

前回のあらすじ

1月11日(木)、翌日の打ち上げを前に種子島へ上陸。
打ち上げ見学場(長谷・宇宙ヶ丘)の下見をし、種子島宇宙センターのショップでH-IIAロケット48号機のグッズを購入しました。

 

今夜はH-IIAロケット48号機の機体移動見学&撮影します。私にとって2018年2月のH-IIAロケット38号機以来、6年ぶりのH-IIAロケットとの対面がはじまります。

 


機体移動を見よう! 打ち上げ1日前(2024年1月11日)


 

機体移動見学&撮影の候補地の1つ、竹崎射点へ行ってみると、そこにあったのは「これより先立入禁止」の看板でした。

 

この向こうに見学できるスペースがあるのだが…
6年前は難なく立ち入れたはず。状況が変わっておりしばし困惑。

左側にあるクレーン風の構造物はTR-1Aロケットのランチャー

 

後で知りましたが、どうも機体移動の数時間前になれば写真右端の通路が解放されて奥の見学スペースへ行けるようでした。普段立ち入り禁止なのはランチャーが潮風で錆びていて危険だからでしょうね。

竹崎射点から機体移動は見られそうである。とはいえ竹崎射点からの機体移動撮影はH-IIA 38号機で実施済みなので、今回は別のところにしよう。

 

ということで「ロケットの丘」へ。

種子島宇宙センターの敷地内にあるここは文字通り、ロケットを見渡せる小高い丘にある。良い眺めだ。よし、機体移動はここから撮ろう。

 

と、ここで見知らぬ誰かさんから声をかけられた。「機体移動は何時からありますか?」と。良い質問ですね。

「だいたい打ち上げの13時間から15時間前なので、23時ごろだと思います。」と伝える。機体移動に興味があるらしい。感謝の言葉が心に沁みる。伝えた情報が役立てばうれしいな。

 

案内ボードの比較。よく見るとH-IIBロケットの絵がH3ロケットに変わっている

左:2018年2月   右:2024年1月

 

私は趣味で宇宙機を擬人化しているので、種子島から旅立った宇宙機がこの美しい発射場を背景に記念撮影を撮るところを想像しちゃいます。

この後は中型射点まで行ってみた。さて機体移動までまだ6時間以上ある。

 

機体移動の時刻だが、前述のとおりおおよそ打ち上げ13~15時間前である。ただし例外もあり、商業衛星の打ち上げや探査機の打ち上げの場合、宇宙機側の都合で数時間前倒しになる可能性がある。

48号機の打ち上げは13時44分26秒なので、機体移動の予想時刻は22時44分~0時44分となる。ちなみに38号機の"打ち上げ時刻"は48号機とほぼ同じ(13:30すぎ)で、機体移動は23時30分スタートだった。今回も同じ時刻になると考えられる。

と思いきや、Twitter(現X)のフォロワーさんから「39号機(※13:20打ち上げ)の時は23時に機体移動があったよ」と教えてもらう。早まる可能性もありそうだ

 

余裕を持って、22時前にカメラをセットすることにしよう。
機体移動、そして明日に備えて一度南種子町ファミマへ行き、当座の食料と飲み物を買う。

「↑上空100km 宇宙」 南種子町の1コマ

 

さて、明日の打ち上げ撮影について考える。一筋縄ではいかないな、と思った。

私は新幹線撮影も趣味である。
高速で走り去る新幹線を撮影するときは、お目当ての新幹線、例えばALFA-Xを撮る前には同じ線路を走るE5系撮影の練習をしたり、撮影設定を確認したりしていたものだった。

 

左:練習のE5系。          右:本番のALFA-X!

 

だが明日の相手は違う。


打ち上げは1回だけ。撮影設定がおかしくてもやり直しはできない。有休を取って交通機関を予約し、少なくないお金をかけてここまでやってきて、本番1発勝負。

私はなんてものを撮ろうとしているんだろう…。

 

そんなことを考えながら、機体移動の時間まで光学8号機擬人化イラストの最終仕上げを行った。イラストが完成したのは日没から数時間も経った20時49分。

 

車の外へ出て一息つく。空を見上げると、夜空に満天の星が浮かんでいた。
驚いたことに、オリオン座の明るい星々の周りに小さな無数の光が輝いている。星ってこんなにたくさんあったんだね。

 

ロケットの丘からVABと射点を眺めていると、日中にロケットの丘で会った見知らぬ誰かさんと再会。なんと!一緒に星空を見上げて談笑する。旅先で見ず知らずの人と談笑するの大好き。
その方は東京から、私は新潟から来た。どちらも種子島から遠く離れたところから同じ地にきている事実がなんだか不思議だ。新幹線から見る富士山、私も好きです。

九州の北の方から来た子供連れとも談笑し、気が付けば時刻は22時前。

 

21時49分 三脚にカメラをセットし、撮影体制へ。ここ数年は新幹線ばかり撮っていたカメラだが、今回は違う。宇宙へ行く乗り物を撮るのだ。

ビデオカメラと一眼レフカメラ(EOS90D)

38号機の時は小さな一眼レフカメラ1台だけだったけど、今回は一回り大きい一眼レフカメラに2kgもある望遠レンズを装着しているし、ビデオカメラもある。成長を実感して嬉しい。

 

周りを見ると、写真館みたいなごっつい一眼レフカメラやら、ケーブルテレビが持ってそうなデカいテレビカメラやら、長砲身レンズをつけたミラーレスカメラなどがずらり並んでいた。新幹線撮影でもこんな光景みたことないぞ!

 

ここで機体移動(夜)の注意事項を。

種子島宇宙センターの敷地に街灯はほぼありません。
★見学スポットの駐車場に限り、機体移動の数時間前に職員が照明を設置します。
★路上駐車は厳禁です。
★見学スポットも暗いため、機材の運搬や撮影・見学の際は周りに注意しましょう。
★職員の指示に従い、安全に機体移動を楽しみましょう。

 

21時56分、カメラでVAB(大型ロケット組立棟)を撮影。既にVABの扉は開いているみたいだ。

ロケットの丘から EOS90D 221mm F5.6 1.0s ISO400

 

正直この時まで、H-IIAロケットがあのVABの中にいるとは認識していなかった。でも扉が開いているということは、あの中にいるはH-IIAロケットがいて、これから出てくるということ。 緊張してきた。

 

22時30分 VABの方角から「ただいまより機体移動を開始します」との放送が聞こえた。いよいよだ。

ちなみに機体移動は約25分かかる。

 

ここからはロケットの写真を設定付きで公開します。特筆ない限りトリミングは無し。カメラのセンサはAPS-Cサイズ。焦点距離の換算はしていませんのでご注意ください。

22:30 ロケットの丘から EOS90D 361mm F5.6 1/3s ISO2500

移動発射台が現れた。発射台には「H-IIA F48」の文字。F38じゃないぞ、F48だ。本物だ!!

 

22:32 ロケットの丘から EOS90D 361mm F5.6 1/4s ISO800

H-IIAロケットキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 

VAB内の明かりに照らされ、ロケットが静かにゆっくりと移動してゆく。まるでエヴァの世界だ!!

 

22:34 ロケットの丘から EOS90D 361mm F5.6 1/4s ISO800

 

おおお・・・


ホワイトバランスを手動から自動に切り替え、撮影を続ける。肉眼だとややオレンジがかって見えるのだが、フェアリングの色がちゃんと白い方がロケットとしては美しい。

なお二段目の燃料タンク(白いフェアリングと黒い段間部の間)はオレンジ色だ。

 

ロケットがVABから出だ後の数分間はVABの明かりに照らされているため、撮影しやすい。

だがVABから離れるにつれてロケットは暗くなっていき、撮影が困難となる。シャッター速度を遅くしたいがロケットはゆっくりとはいえ動いているので難しい。ISO感度を上げつつ撮影を続ける。

 

22:37 ロケットの丘から EOS90D 347mm F5.6 1/4s ISO5000

 

暗闇を纏うH-IIAロケット。美しい…

 

それにしても、カメラの性能の高さも相まって良く撮れている。

左:38号機(KissX5 F5.6  0.6s 214mm ISO3200) 右:48号機(90D F5.6 1/4s 347mm ISO5000)

 

38号機の時と比べて違いは一目瞭然だ。ちなみに38/48号機は積み荷が情報収集衛星ということもあり、ロケットはミッションデカールのないシンプルなデザインをしている。

 

22:41 ロケットの丘から EOS90D 347mm F5.6 1/8s ISO8000

 

機体移動開始から10分~15分の間はロケットはうんと暗くなってしまう。シャッター速度とISO感度を変えつつ撮影。

 

22:46 ロケットの丘から EOS90D 347mm F5.6 1/8s ISO3200

 

第2射点を過ぎてH-IIA用の第1射点に近づくと、また明るく照らされる
※↑ 22:46の画像の左端にある赤いライトが第2射点で、右に見える赤白の鉄塔が第1射点。

 

22:48 ロケットの丘から EOS90D 347mm F6.3 1/8s ISO800

 

22:52 ロケットの丘から EOS90D 403mm F6.3 1/8s ISO800

 

22:52、H-IIAロケットは射点に到着。経過時間は22分。意外と早い!
ロケットの丘からみるとH-IIAロケットは紅白の多目的鉄塔に隠れてしまう。後で別の場所でも撮ろう。

 

しばし撮影した写真を見返す。好きなロケットの本物を撮影でき、とても嬉しい。

Twitterに上げた写真は多くの人に見てもらえたのでさらに嬉しい!

 

一緒に星空を見上げた見学者の方々とお別れし、私は竹崎射点へ。

 

竹崎射点へ行くと、ランチャーの右側の通路が解放されている。宇宙センターの職員が照明で照らしくれているおかげで、闇夜でも安全にアクセスできる。

 

23:27 竹崎射点から EOS90D 600mm F6.3 1/60s ISO4000

 

大望遠の600mmで撮影。この日は風がクッソ強く、シャッター速度を遅くするとブレてしまうのでやむなくシャッター速度を上げてISO感度を犠牲にした。それでもいい写真が撮れた。

 

待って、三菱重工まで読める!スリーダイヤもクッキリ、F48の8だけ色が違うのも分かる!8だけ変えたんだね!良い写真が撮れたものだ。

 

せっかくなので38号機の写真と比較。

左:38号機(EOS KissX5 トリミング済み)  右:48号機(EOS 90D トリミングなし)

 

48号機のほうがクッキリ鮮明に撮れている。2kgもする望遠レンズを持ってきて良かった。

 

 

このロケットの先端、白いフェアリングの中に光学8号機がいる。

打ち上げは明日だ。

 

さて、長谷展望公園で車中泊する前に、上里地区でも撮影を敢行する。ここはロケットをほぼ正面から撮れるスポット。ロケット撮影ファンならここを撮らずして夜は越せんよな。

 

左:EOS90D 150mm F5.6 1/8s ISO640  右:EOS 90D 600mm F6.3 1/8s ISO640

上里地区から H-IIAロケット 48号機

 

H-IIAロケット 48号機 2024/1/12 0:16」(トリミング・微修正後)

 

H-IIA」と「NIPPON」の文字がちゃんと読める。素晴らしい。感無量だ。
このために種子島へ来たと言っても過言ではない。

 

長谷展望公園の駐車場に車を停め、寝袋に入る。

 

さあ、明日は打ち上げだ。願いはただ一つ。光学8号機が無事に宇宙へたどり着く事。

 

 

 

次回、「打ち上げを見よう」

sado-kouta.hatenablog.com