探査機大好き宇宙ファンの学生が単身種子島に渡り、初めてのロケット打ち上げ見学と撮影を試みたお話。 前回はコチラ
前回、種子島に渡り、打ち上げ見学場や宇宙科学技術館などを見てきました。島での滞在期間は残り二日。27日13時34分の打ち上げを見て帰るのはもちろん、打ち上げの半日前くらいに行われる機体移動も見てみたい。さてどうしようか…。
今回はいよいよ最終回。H-IIAが出てきます。写真も多数掲載。設定付きです。それではどうぞ!
4日目(2月26日)天候:晴れ
起床して今日どうするかを考える。特に予定は考えていなかったので、初めに「千倉の岩屋(ちくらのいわや)」という観光スポットに行ってみることにした。洞窟の中から海が見えるとかどうとか。
駐車場に車を止めて100mほど歩くと海岸にたどり着く。強烈な風が吹く中、さらに砂浜を100mほど歩くとそこには立派な洞窟があった。干潮時だったおかげか、洞窟内に入って中から海を見ることができた。波が長い年月をかけて作り出した不思議な光景に波のBGMが合わさって、とても良い雰囲気でした。
千倉の岩屋を見たあとは再び「長谷展望公園」に行ってみることにする。おととい来たときは日没間際で暗かったので、明るい時の様子を見に行きたくなった。
やっぱり広い。なだらかな坂道になっているので、どの場所からも射点を見ることができそうだ。
公園には遊具があった。ロケットと人工衛星がとてもかわいい。後ろにあるのは桜かな 2月末でもう咲いているなんてさすが種子島…
見学場の様子を確認した後は少し早いけど「美の吉(みのきち)」でお昼。11時すぎに行ったので割と空いていた。ここはメニューが超豊富。今回は無難(?)にインギー丼を注文。
美味しかった。毎回ここに来たいな。
さてお昼を食べた後は、昨日雨でできなかった種子島宇宙センター周辺の散策をしに行く。
※月曜日は宇宙科学技術館が閉館しているので注意
種子島宇宙センターの施設マップ。徒歩でH-IIロケット実物大模型を見に行き、車で「ロケットの丘展望所」と「中型ロケット発射場跡」、「竹崎射場」に行ってみた。ロケットの丘展望所は施設案内ツアーで見学したけど、一般車でも行けるんだね。
ロケットの丘展望所からの眺め。少し見下ろすような形で射場を見ることができる。しかしいい眺めだ。ここで高さ50mを超えるロケットが組み立てられ、数多くの宇宙機が旅立っていったんだな。しずく、こうのとり、Telstar 12 VANTAGE、はやぶさ2、つばめetc…
中型ロケット発射場跡は大型ロケット発射場にかなり近づけることができる場所とのことなので行ってみた。VABを間近で見ることができた。
あとは竹崎射場近くの海岸から「サーバル岩」を撮影。わりとマジで耳の形に似ていてJAXA
竹崎射場周辺からH-IIAの射点を眺めながら、今夜行われる機体移動をここから見たいなぁと思った。だが恵美之江展望公園の駐車場が気になるところ。恵美之江で見るか、竹崎で見るか…
夜までまだ時間があったので宇宙センターからほど近い「宝満神社」で打ち上げの実施と打ち上げ成功を祈願。何事もなく打ちあがりますように…!おみくじ(100円)の結果は末吉だった。「美の吉」で夕食(ラーメン)を食べ、南種子町のファミマで夜食と明日の朝ごはんを購入。この時点で弁当類は豊富に置いてあった。ありがたい。陳列されていたおにぎりが温かかった気がする。
機体移動の見学場所は熟慮の結果、宇宙センターの竹崎射場に決定。たいてい13時間前(12~15時間前?)に機体移動が行われるが、早めに行くことにした。現地到着は21:30。早すぎたかな。Twitterで情報収集していると宇宙センターの職員らしき人に機体移動の時間(23:30)を告げられ、車をレールのある場所へ移動するように言われた。
22時前後に射場が見渡せるエリアへ行くとすでに何人か先客がいたので、空いたスペースに三脚を立ててカメラをセット。周りの撮影者たちのカメラを見ると、写真館の人が使っているようなごついカメラに大口径長砲身のレンズが装着されている。一方マイカメラは家電量販店仕様だからその差がすごい(笑)
ちなみにマイカメラは「Canon EOS Kiss X5」というデジタル一眼レフ。高校の写真部へ入部する際に家電量販店で購入したもの。望遠レンズ(250mm)はキットレンズ(買った時についてくるレンズ)である。信頼できる愛機だ。
<これからロケットの撮影画像に設定を載せるので、撮影設定の参考にどうぞ。全て望遠レンズで撮影してます>
風は昼間と比べるとかなり弱まっている。2月の夜だがそれほど寒くはない。冬コミ待機列装備で十分だ。
あ、そうそう 旅行に出る前、「カメラで撮影した写真をいち早くTLにお届けしたい!」ということで、Amazonでスマホ用カードリーダーを購入。カメラで撮った写真を素早くスマホからTwitterに投稿してました。
Amazon:エレコム カードリーダー microUSBコネクタ搭載 ケーブル一体タイプ
23:30 機体移動開始。VABの中から本物のH-IIAロケットが現れる…!
竹崎射点から Canon EOS Kiss X5 250mm F10 1/3s ISO1600
おほーっ!!H-IIAだ〜!(Twitter投稿文ママ)
本物のロケットが、ゆっくりと射点へ移動してゆく…素晴らしい。
竹崎射点から Canon EOS Kiss X5 250mm F5.6 0.6s ISO3200 ストロボ禁止モード トリミング済み
VABから出た直後は明るく照らされているロケットだが、VABから離れるととたんに暗くなる。カメラの設定をいろいろいじったものの、結局ストロボ禁止モードでそれなりの写真が撮れた。手振れを防ぐため、タイマーを10秒セットして撮影。(安物の三脚だからカメラがブレやすい)Twitterに写真をUPしつつ、移動を見守る。
25分ほどで射点への移動が完了。意外と早い。
竹崎射点から Canon EOS Kiss X5 250mm F5.6 1/15s ISO1600 トリミング済み
マニュアルに切り替えて撮影を続けた結果、H-IIA F38の文字が識別できる写真を撮れた。(画像クリックで拡大)溢れる充実感に胸を躍らせながら車へ戻る。
さあ…いよいよ明日は打ち上げだ。
24:40 恵美之江展望公園に到着。駐車場には15台ほどの車があった。思ったより少ないな。恵美之江から発射場の写真を撮影してみた。
恵美之江展望公園から Canon EOS Kiss X5 250mm F5.6 1/15s ISO1600 トリミング済み
ここからだとH-IIAロケットは鉄塔に隠れてしまっている。
正面から見れば、鉄塔に邪魔されることなく、日の丸と「NIPPON」の文字が見えるのだが…。
…撮りに行くか
車のエンジンをかけて、H-IIAを正面から見れる撮影スポットに向かった。
眠気を気合いでこらえてご視察所、その次に長谷・上里地区路上に車で移動。撮影を試みた。周りには誰もいないうえ街灯もない。月明りを頼りに発射台が見えるひらけたところで三脚とカメラをセット。めいいっぱいズームして撮影。
長谷・上里地区路上から Canon EOS Kiss X5 250mm F9 1/15s ISO1600 右はトリミングしたもの
今度はブレの少ない写真が撮れたので、ロケットの「NIPPON」の文字がはっきりとわかる写真が撮れた。闇夜に淡く照らされるH-IIAロケット…最高です。
満足したので恵美之江に戻り、寝袋に入って睡眠。流石に疲れた。
5日目(2月27日)天候:晴れ
8時ごろ のそのそと起き上がり、準備を始める。というのも打ち上げを見たら16時45分の高速船で帰るから、荷物をまとめておく必要があった。寝袋や衣類をスーツケースに収納。
9:30 柵のところに三脚をセット。リュックサックからパンとココアを取り出し朝食をとる。日差しが温かい。冬コミの待機列より10倍快適である。打ち上げまであと5時間!
しばらくすると、宇宙グッズを売るショップや、定食屋さんの出張販売、飲料水・カップ麺・中華まんの販売、お湯を入れるポットの設置など、屋台も出てにぎわってきました。
天気は快晴。良いコンディションになってきた!
12:00 屋台でインギー炊き込みご飯を購入。打ち上げ迫るロケットを眺めながらしばしお昼。お気に入りの写真です。
12:50 打ち上げ記念バッヂの無料配布があった。
打ち上げ日が当初予定の2月25日になっているが、38号機の打ち上げを見に来た証としてこれ以上ない記念になった。
13:19 打ち上げ15分前 最前列から眺める人、カメラやスマホを構える人、レジャーシートの上で談笑する人など、それぞれ思い思いの形で打ち上げを楽しむ様子だ。
自分にとっては初の打ち上げ見学だが、旅行での撮影がなにより好きなので、打ち上げの撮影に挑戦してみる。カメラはマニュアルモードにし、調べて選定したロケット撮影設定を適用。何枚か試し撮りを行い、ホワイトバランスを調整。連射、MFよし。ズームは控えめで。
打ち上げの瞬間は自分の眼で打ち上げを見守る。点火1秒前からカメラのシャッターを押し続けて、あとは設定とカメラを信じるだけ。
13:26 打ち上げ8分前 カウントダウン開始。展望公園のスピーカーからいつものカウントダウン音声が聞こえる。機械音声お姉さんのカウントダウン狂おしいほど好き。
H-IIAロケットの打ち上げ"中継"をこれまで10回くらい見てきたが、カウントダウンは毎回ドキドキの時間だった。だが今回は現地でカウントダウンを聴いている…心臓バックバクだ。
空を見上げると雲一つない青空が広がっている。今まで天気に悩まされ続けていたことが嘘のようだ。
13:30 打ち上げ4分前 動画も撮りたい!と思ったがスマホを置く装備がないので、スマホの録画ボタンを押し、地面に傾けて置く。うまく撮れるといいな。
13:33:30 打ち上げ30秒前 カメラのシャッターに指を置き、自身の眼は射点を見つめる。
恵美之江展望公園から Canon EOS Kiss X5 163mm F9 1/2000s ISO200 以降7枚とも同じ
13:34:00 リフトオフ!
アンビリカルケーブル分離!
タワークリア!
おおっ おおおおおおおー!!! すげー!!!!!
眩しい光と轟音を放ち上昇するH-IIAロケット38号機。直視していいのか戸惑うレベルの眩しさと、ものすごいエネルギーを感じる爆音が印象的だった。現実とは思えない光景をしばらく見つめた後、居ても立っても居られず、三脚ごとカメラを持ち上げ、飛行するロケットの撮影を行なった。撮らなきゃいけない気がした。
三脚ごと持ち上げたがために最初は照準が合わず見切れたりした。ロケットとファインダーを交互に見て打ち上げを見る。すげぇ…。
うまく撮れた写真をトリミングしたもの。マニュアルフォーカスのままだけどなんとか写った。
H-IIAロケットは青空の中をゆっくり移動しながら次第に小さくなっていく。最大望遠とオートフォーカスで撮影し続ける。SRB-A分離のアナウンスが聞こえるが、肉眼だと…うーんわからんな…
打ち上げから5分がたち、見えなくなったロケットの代わりにロケットロードを眺める。
生で見るロケットロードはとても素敵でした。
カメラで撮影した画像を確認してみると、ちゃんと打ち上げの瞬間の撮影に成功していた。
恵美之江展望公園から Canon EOS Kiss X5 163mm F9 1/2000s ISO200 トリミング済み
自分で撮ったとは思えないくらい良く撮れていた。感無量だ。
恵美之江展望公園から Canon EOS Kiss X5 250mm F5.6 1/1600s ISO200 スポーツモード トリミング済み
分離の時間に撮った写真をズームしてみると、SRB-Aの分離が写っていた。やったぜ!
天候には散々悩まされたが…この日、快晴での打ち上げとなって、本当に良かった。
写真をTwitterに上げたり打ち上げ後の射点を撮ったりしていると、情報収集衛星光学6号機が分離されたとのアナウンスがあった。打ち上げ成功だ!おめでとう!
14:20ごろ、車で西之表港へ向かう。あっという間に皆さん帰ってしまったようだが、15時の便で帰る人たちだろうか。
西之表港近くのガソリンスタンドでガソリンを満タンにする。レギュラー1リットル165円!新潟の1.3倍だ。4日間で266km走ってガソリン代は2614円でした。
港近くのお土産屋さんでお土産を購入。燃えるごみと燃えないゴミはフェリー乗り場にあったゴミ捨て場に捨てる。レンタカー会社の人に延長した分の料金を支払い、車は指示通り港からすぐ近くのレンタカー共用駐車場に乗り捨てる。車内に忘れ物が無いか入念にチェックし、鍵をサンバイザーに挟んで降車。4日間ありがとう。
帰りの高速船の搭乗券を引き換えるために乗り場に行くと、さっきの打ち上げのニュースをやっていた。流石は地元テレビ、やることが早い。次のH-IIA39号機の打ち上げは5~7月だそうだ。あのアカウントだと6月に予約が埋まっているなあ。と、ここで自分も打ち上げの動画を撮っていたことを思い出し、録画を見てみる。よく撮れているではないか!とっさの試みだったけど成功してよかった。
Twitter:撮影した動画へのリンク
帰りの高速船の名前は「ロケット3」。ロケットか。これで陸海空宙4つ制覇したことになる…ならない?
高速船内ではお隣に座った親子と会話が弾んだ。九州から来た方々で、打ち上げが延期したためそれぞれ小学校と会社を(風邪をひいたと連絡して)休んできたという。良いお父さんだなぁ。
港でお別れした後、自分は鹿児島市内のネカフェで一泊。撮った写真を追加でTwitterに上げる。反応がすごく嬉しかった。
6日目(2月28日)天候:くもり
昔種子島を旅行した同級生に勧められた「鶏飯」を鹿児島市内で食べて帰りたかったが、今日中に新幹線で新潟に帰りたかったので断念。また今度、種子島か内之浦に行く機会があればそのときに食べたいな。
新幹線に乗る前、売店で「南日本新聞」を購入。毎回ロケットの打ち上げがあるとTwitterにこの新聞の一面があげられていたっけ。
一面にカラーの打ち上げ写真と、ロケット・衛星の詳細が書かれている。27面にも記事がある。打ち上げの記念に良いですね!(朝食は買い忘れた)
情報収集衛星光学6号機は設計寿命を迎える4号機の後継として運用される。2023年に光学6号機の後継の光学8号機が打ち上がるまでが任期かな。そのあとは寿命が尽きるまで運用されたのち、近いうちに大気圏に突入して燃え尽きてしまう。どうか長生きして日本とその周辺の情報収集任務を全うしてほしい。
九州新幹線、山陽/東海道新幹線、上越新幹線で新潟へ。10時間近い乗車時間の末、無事に帰還。
久しぶりの布団に入ってすぐ寝落ち。疲れたけどとても楽しかった…
ラストの写真は宇宙科学技術館で購入したH-IIA38号機の打ち上げ記念グッズで。
おわり
今回の打ち上げ見学旅行では、種子島との往復に成功し、現地で打ち上げを見ることができたうえ、撮影にも成功。文句なしのエクストラサクセスでした。2度の打ち上げの延期があったものの、余裕を持った日程に救われました。
また行きたいですね...休みと打ち上げのスケジュールが合えば皆さんも是非、打ち上げを観に行ってみてはいかがでしょうか。
5,6日も休みを取るのは難しく、3日くらいの日程だと延期に対応できないこともありますが、仮に打ち上げを見られなかったとしても、宇宙科学技術館や売店、見学場から見る宇宙センター、海や鉄砲に関する施設など、種子島の数々の観光スポットはとても魅力的なので、種上げを生で見てみたい方はぜひ、見学旅行に挑戦してみて欲しいですね。
質問などあれば、コメントにて気軽に聞いてください。答えられる範囲で具体的に回答してみたいと思います。
さて、この旅ではTwitterで多くの情報を得ることができました。次回打ち上げられる衛星、気象予報から予測される打ち上げ日、打ち上げ延期の報せ、機体移動の見学場所と時間、H2AF38のグッズ販売、ロケット撮影設定、観光スポット、打ち上げ後に地元テレビが打ち上げの報道をすること、南日本新聞の一面の魅力等々、TLから得た情報のおかげで充実した旅にすることができました。 これらの情報発信に携わった方々にお礼申し上げます。
最後に、ここまで読んで下さり、ありがとうございました。