新幹線大好き宇宙機ファンがH3ロケット3号機の打ち上げを見に行ったお話。
前回はコチラ
前回は打ち上げ見学旅行に至る経緯と旅の目的・準備について紹介しました。
今回は種子島への道のり&機体移動編。
新潟から種子島へ移動し、H3ロケット3号機の機体移動を見学&撮影します。
打ち上げ日発表 打ち上げ2→3日前(2024年6月28日)
打ち上げ予定日の2日前は、打ち上げ見学旅行者にとって冷や汗の出る日だ。というのも、この日に天候状況を踏まえた最新の打ち上げ予定日が発表されるのだ。
もしも打ち上げが3日以上延期したら。種子島滞在中の打ち上げは望めなくなり、私の旅は行く前に消失する。
そして、運命の6月28日。JAXAと三菱重工が発表した打ち上げ日は当初予定から1日延期の「7月1日」。
━━━━━━━━━━━#H3ロケット 通信🚀
— 三菱重工業株式会社 (@MHI_GroupJP) 2024年6月28日
打上げ延期のお知らせ
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天候悪化が予想されることから、打上げは7月1日(月)に延期となりました⛈
➣打上げ予定日
7月1日(月)
➣打上げ予定時間帯
12時6分42秒~12時19分34秒
➣打上げLIVE中継
https://t.co/ZEEOY9am67 https://t.co/JHCDoDNlmj pic.twitter.com/gLbmJcqFUA
1日延期は想定通りだったためホッと胸をなでおろす。( -ω-)=3
打ち上げ延期に備えて2日の予備日をとっていたので、旅程に変更はない。
また14時からの「打ち上げ前ブリーフィング」にて、H3ロケット3号機(H3F3)の機体移動が「打ち上げ前日の20:30開始」と発表された。
・H3TF1:打ち上げは「午前10時37分55秒」機体移動は「前日16時00分~」
→機体移動は打ち上げの約18時間前 ※2月17日及び3月7日の打ち上げ共通。
・H3TF2:打ち上げは「午前9時22分55秒」機体移動は「前日15時00分~」
→機体移動は打ち上げの約18時間前
・H3F3 :打ち上げは「午後0時6分42秒」 機体移動は「前日20時30分~」
→機体移動は打ち上げの約16時間前
H3F3の機体移動は打ち上げ前日の夜。そして、機体移動から打ち上げまでの時間が試験機2号機より短くなっている。
その理由については打ち上げブリーフィングで有田PM(プロマネ)から「今回は余裕時間を短くする決心をして、作業者の負担を減らす。」との説明があった。
https://x.com/ohnuki_tsuyoshi/status/1806574080033996944
今後のH3ロケットの打ち上げでは今回と同等の余裕時間か、もっと短くなるのかもしれない。
鹿児島へ行こう 打ち上げ3日前(2024年6月28日)
6月28日(金)夜 種子島遠征スタート。
定時まで仕事をしたのち、この日は①新潟空港から飛行機に乗って福岡空港へ向かう。②福岡空港から博多駅まで地下鉄で移動し、博多駅から九州新幹線で鹿児島中央駅まで移動する。博多駅に着くのは夜22時ごろ。鹿児島中央行の最終列車(22:20発)への乗り換え(博多スイングバイ)に失敗すると、本日中には鹿児島へ行けない。
18時に新潟空港に着いて早々、チェックインカウンターにて「乗る予定の機材の到着が遅れている」と連絡を受ける。まじか。遅延時間は25分。これくらいの遅れなら飛行中に10分遅れくらいに縮まると思っていたので大して気には止めなかった。
が、Twitter(現X)のフォロワーから「福岡空港の門限(22時)に間に合わないと最悪引き返すことになるかもしれません」とコメントがきた。
そうか、門限があったか!
福岡空港は市街地のど真ん中にある空港のため、夜間の騒音対策として離着陸が22時までに制限されている。22時を過ぎて着陸する機は北九州空港等に代替着陸するか、出発空港に引き返すこととなる。
30分遅れで搭乗
結局、IBEX88便は定刻から30分遅れの19:55に出発した。ということは到着時刻は定刻(21:15)から30分遅れの21:45ごろになる。門限までの余裕時間は15分あるから、まだ慌てる時間じゃない。
信じてるぞ、IBEXエアライン!
CRJ700の機内で打ち上げ記念イラストを描きつつ時間をつぶす。
21:30 九州に近づいた頃合いで、機長からのアナウンス放送があった。大雨の影響で福岡空港上空が混雑して順番待ちが発生しており、当機は8番目に着陸するとのこと。
・・・門限までの30分で、たった1つしかない滑走路に8機とも着陸できるのだろうか。しかし私は思い出す。博多南駅近くの九州新幹線の撮影スポットで、福岡空港に着陸する機が数分おきにやってきたことを。
ギアダウンし、福岡空港に向けて旋回降下するIBEX機
門限までに降りられる可能性は十分ある。あとは管制官とパイロットたちの連携を信じるしかない。
そして、門限の10分前。
Nice Landing!
私の乗るCRJ700は福岡空港に降り立った。やったー!!!!
これでめでたしめでたし。
とはいかず、30分以上遅れて福岡空港に到着したことで新たな問題が浮上する。
博多駅の新幹線発車案内板
「鹿児島中央行きの新幹線がない」のである。
博多駅発鹿児島中央行きの最終列車は22時20分発のみずほ215号。しかし私が博多駅に到着したのは22時25分なので、残っているのは熊本止まりのみ。
博多スイングバイに失敗。さあどうする。
何のことは無い。熊本まで行くだけだ。今日の宿は「ネットカフェ」と決めていたので、熊本駅近くのネカフェで寝て、明日の早朝に新幹線で鹿児島へ行けば良い。
スマホを叩き、スマートEXで熊本行きの自由席を購入する、乗るのはつばめ345号。
この時、正直テンションが上がっていた。鹿児島行きの予定が狂ってヤケクソになったのではなく、急きょ乗ることになった「つばめ345号」のことが楽しみで仕方が無かったのだ。
つばめ345号 800系U001編成(トップナンバー)
というのも、つばめ345号は九州新幹線でも少数派の「800系」での運行。外観はかわいく、車内は自由席でも2列+2列シートでゆったり座れる。気持ちが昂るってもんだ!
「800」を模した独特のマークも見どころの1つ。あと自由席でこの豪華さはヤバイ!
九州新幹線をご利用の際はぜひ800系を。と言いたいところですが、800系が主に使われる「つばめ号」は各駅停車かつ熊本止まりが多く、移動に時間がかかるのでご注意ください。
遅めの夕食
800系に揺られながら、博多駅のコンビニで買った冷やしラーメンを楽しみつつ終点の熊本駅へ。
この日は熊本駅近くのネットカフェで一泊。
種子島へ行こう 打ち上げ2日前(2024年6月29日)
朝6時に起床し、熊本駅へ。
熊本駅前にある「くりあ診療所」
駅への道中に「くりあ診療所」を発見。私の推しのVtuberである「宇推くりあ」氏と名前が同じ。朝から良いものを見た気分。
熊本駅発のつばめ305号(800系)に乗り、鹿児島中央駅に無事到着。天気は雨。
この日の予定は、鹿児島港8:40発のカーフェリー「プリンセスわかさ」で種子島へ行き、西之表市にある「あらきホテル」に一泊する。今回、打ち上げ延期後にホテルのサイトを見ると1部屋だけ開いていたので確保した。
バスと徒歩で「南ふ頭旅客ターミナル」へ向かう。
「南ふ頭旅客ターミナル」はジェットフォイルが発着する「高速船ターミナル」の左手奥にある。様々な乗船記でも語られているが、旅客ターミナルの場所を示す看板がほとんどないため、本当にこの先に旅客ターミナルがあるのか不安になる。GPSとマップアプリを信じて歩こう。
旅客ターミナルに入り、乗船名簿の紙を書いて受付に渡す。運賃を支払い、チケットをゲット。
チケット。なお7月から運賃が5000円に値上げする。
チケットは乗船時に船員に渡すので、チケットと記念撮影をするなら乗船前に済ませましょう。
私は初めてのプリンセスわかさ乗船。既にカーペット敷きのフロアには乗客がくつろいでいたので、椅子席に腰かける。種子島まで3時間半の船旅だ。
8時40分。船は汽笛を鳴らしてゆるやかに出発した。コンビニで買っておいたパンを食べ、船内を見て回る。
船の現在地を示すマップ。航路の半分は湾内だ。
上のマップを見てふと思い出した。プリンセスわかさといえば、デッキからすれ違う高速船(ジェットフォイル)を見られるはず。見たい!
早速、船舶の位置情報がわかる「MarineTraffic」のサイトを開き、本船とすれ違いそうな船が無いか調べる。
…お?
プリンセスわかさの右前方に水色のアイコンの船がある。水色のアイコンは私の好きな「護衛艦」や「巡視船」などの特殊船のアイコン。なんの船かタップしてみると
「MAYA」と出た。
えっ?
MAYAってまさか護衛艦「まや」か?
MarineTrafficの画面。進行方向にMAYAがいる
まさか。護衛艦まやは海自の最新鋭のイージス艦、まや型の1番艦。それが錦江湾にいるのか?!
デッキへ走り、右舷前方にカメラを向ける。
霧の中から
いた!!あの艦影はまさしくイージス艦!
まや様~~!!!!
スーツケースからH3ロケットの撮影用に持ってきた望遠レンズを取り出し、カメラに装着。デッキから右舷を反航する「まや」を撮影する。
護衛艦まや(DDG-179) 鹿児島・錦江湾にて(2024/6/28)
霧の中から現れたイージス艦!カッコいいなあ!護衛艦の航行シーンを撮影できてめちゃくちゃ興奮しました。
さらには巡視船「おおすみ」や高速船「ロケット」ともすれ違うことができました。フネ好きでもある私の脳内はフロア熱狂でヤバかったです。プリンセスわかさ最高だぜ!!
巡視船おおすみ(PL202)、高速船ロケット 鹿児島・錦江湾にて(2024/6/28)
デッキでの撮影後は椅子席で睡眠。目が覚めるとそこは種子島・西之表港。実に快適な船旅だった!
西之表港に到着したわかさ姫
種子島も雨模様。下船して予約したレンタカー会社の看板を持った人を探すと、ちゃんと看板を持った人がいた。レンタカーの料金を支払い、カギを受領。
西之表港のロケットモニュメント
この日は西之表港近くの「あらきホテル」に泊まる。打ち上げが延期にならなければ見学場所の下見をする予定だったが、1日延期になったので下見は明日にして、ホテルで記念イラストを仕上げることにする。
お昼時(12:30)だったので港近くの「らーめん 濱商」でラーメンでも食べようと思ったが、店内にぎっしりお客さんが並んでおり、断念。
早めにホテルにチェックインし、新しい雰囲気が漂う「キャビンルーム」へ。
大広間を改装して24室の個室を用意している模様
打ち上げ見学者のために情報を共有する。
・キャビンルームは男性のみ利用可
・ネット予約が可能
・部屋はベッドとテレビ、冷蔵庫、机とイス、ハンガーがあるだけの狭い部屋
・部屋の上部は間仕切りが無く、他の部屋と空間が共用
・業務用クーラーがガンガン聞いて涼しい。冷蔵庫の中にいるようだ
・ドアにカギは無い。ドアはぶっちゃけカーテンです
・イメージとしてはベッドと冷蔵庫のあるネットカフェ
・キャビンルームのあるフロアの外にはトイレ、電子レンジ、電気ポットがある
あらきホテルの隣には温泉があり、キャビンルーム利用者は無料で利用できる。さらにホテルから徒歩1分にファミリーマートがある。利便性はピカイチだろう。
五目ラーメン
西之表市にある「東天紅」で遅めのお昼を食べた。
店内には昨年打ち上げの「ALOS-3」ともうすぐ打ち上げの「ALOS-4」のポスターが貼ってあった。
だいち姉妹のポスターの並び。
だいち3号(ALOS-3)は打ち上げに失敗してしまったから、今度こそはうまくいってほしい。
ラーメンを堪能した後はキャビンルームで打ち上げ記念イラストの仕上げを数時間かけて行った。
ALOS-4の色塗り中
しかし、夜に重大な問題が発生。
ベッドの中で目が覚めると、身体が熱っぽい。体感温度は38度。
…クーラーの冷気で風邪をひいてしまった。
まずいまずいまずい。明日は下見と機体移動、明後日は打ち上げがあるというのに。こんなときに風邪なんてひいていられない。
上着を着こみ、首にタオルを巻いて身体を温め、回復に専念する。
機体移動を見よう? 打ち上げ1日前(2024年6月30日)
起床して体調を確認する。夜中よりはマシになったが、身体はまだだるく、風邪気味。とはいえ今日は打ち上げ見学場所の下見と、夜には機体移動撮影をせねばならん。
ホテルをチェックアウトして車に乗り込んだが、身体はまだ本調子ではない。このままでは夜の機体移動や翌日の打ち上げ撮影もままならないかもしれない。なにより旅先で全力で行動できないもどかしさがあった。
藁にもすがる思いで、中種子の「ドラッグイレブン」で総合かぜ薬とinゼリーを購入した。旅先で買うような代物とは思えず「私は何しに来たんだろう」と落胆が頭の中を渦巻く。
薬を服用後、駐車場で30分ほど寝ていると身体が軽くなってきた。これならいける。
最初の目的地は南種子の「広田漁港」へ。ここは打ち上げ見学場所ではないが、射点が見える(らしい)ということで一度来てみたかった場所だ。
強風で飛ばされそうになる
突堤の上を慎重に歩く。この日は南から強風が吹きつけており、台風並みの風で身体が飛ばされそうになる。帽子はつけてこない方が賢明だろう。
なお私は新幹線撮影用に買ったひも付きの帽子↓をつけていたので問題はなかった。
突堤の先まで向かうと、見たかった光景が姿を現す。
もはや何も言うまい。
ボーっとする頭にVABと赤白の鉄塔が「ここは種子島だ、ここが種子島なのだ」って語りかけてくる、そんな気分がした。
なおここは射点から半径3km圏内にある為、打ち上げ時に立ち入ることはできません。
あと夜間に来るのはやめましょう。危ないです。
広田漁港の次は打ち上げ見学場所の下見として、南種子の「茎永」へ。事前調べ通り、射点の方角に田んぼがある開けた場所があった。打ち上げはここで撮ろう。
近くに咲いていたアジサイ。綺麗。 ロケットが出てくるあたりを指さす
ところで、田んぼの色がやけに黄色く感じるんだが。
南種子にて
まさかと思って近寄ってみると、イネはたわわに実って黄金色になっていた。…まだ6月だよね?!
頭がボーっとしているのも相まって、8月末にタイムスリップしたかと思ってしまうが、これは現実の光景。
実は、種子島の稲作は日本一収穫が早い。なので種子島ではこれが普通なのだ。
え! もう稲刈り? 炎天下、コンバインが大活躍 「日本一早いコシヒカリ」収穫始まる 南種子 | 鹿児島のニュース | 南日本新聞 | 373news.com
ちなみに田植えは3月らしい(新潟では5月)
種子島らしい景色をもう一つ。
"先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4) 7月1日(月)"
長谷展望公園の近くにあるロケットのモニュメントを撮影。これを見るとロケットの打ち上げを撮りに来た実感が湧く。
下見を終え、お昼に南種子のファミマで豚汁を買って食べた。梅雨+風邪気味のコンボでたくさん汗をかいたので、豚汁の塩気が身体に染みた。さあ、これから長い24時間が始まるぞ。
かぜ薬のおかげで熱も下がり、だいぶ動けるようになった。薬の力に感謝しつつ、種子島宇宙センターで夜の機体移動に備える。
宇宙センターへ続く道にて
機体移動の撮影場所は前回(H3TF2)と同じく「ロケットの丘」にした。前回は日中の機体移動だったので、同じ場所で夜の機体移動を撮ってみるのだ。
機体移動は20:30開始だ。
機体移動開始1時間前(19:30)のロケットの丘
機体移動開始まであと1時間。すでにロケットの丘の駐車場には機体移動見学者の車がずらりと並んでいる。それでも混乱はなく、ロケットの丘ではロケットファン同士で会話しながら機体移動開始までの時を過ごした。
20時 カメラをセットし、機体移動に備える。
カメラ3台構成。腕が3本欲しくなる
ここからは機体移動の写真を撮影設定付きで公開します。焦点距離は35mm換算していませんのでご注意ください。(カメラはAPS-C機です)
20:30 機体移動開始。風向きが良くないためか、VABからのアナウンス放送などは聞こえなかった。
さあ、H3ロケット3号機を記録しよう。
20:34 ロケットの丘から EOS90D 361mm F5.6 1/8s ISO3200
ゆっくりと、H3ロケットを載せた移動発射台(ML5)が出てきた。
20:35 ロケットの丘から EOS90D 361mm F5.6 1/8s ISO2500
続けてH3ロケット3号機が姿を現した。
太いコア機体に黄色の段間部。まぎれもなく、あれはH3ロケットだ。
撮るのに夢中で写真をほとんど見ていなかったが、今見て、思う。夜のH3ロケットは格段に美しいと。
H3ロケットもH-IIA同様、光源であるVABから離れると途端に暗くなる。
H3ロケット3号機
EOS90D 313mm F5.6 1/8s ISO5000(トリミング済)
どこか厳かな雰囲気が漂う。
(左)20:47 ロケットの丘から EOS90D 293mm F5.6 1/8s ISO10000
(右)フェアリング部拡大・画像修正済み
ゆっくりと画像右側へ、H3ロケットは移動する。フェアリングには「JAXA」のロゴと「H3」の文字がみえる。
機体移動開始から20分。H3ロケットを載せた移動発射台が第2射点に近づく。
20:49 ロケットの丘から EOS90D 275mm F5.6 1/8s ISO10000
移動発射台の柱の間には把持機構が見える。把持機構はH3-24形態で使用されるため、今回(H3-22形態)は使用されない。
20:56 ロケットの丘から EOS90D 275mm F5.6 1/8s ISO1600
機体移動開始から約25分でH3ロケットは射点に到着。あとは15時間後に打ち上げを迎えるのみ。
撮影しているうちは気づかなかったが、足首が蚊に刺されていた。夏場の夜は虫よけスプレーが必須だと学んだ。( ..)φ__メモメモ
ロケットの丘での撮影後は、例によって宇宙センターと南種子町の撮影スポットでロケットを撮影する。
①ロケットの丘
上記。
②中型射点(へ続く坂道)
21:24 中型射点の坂道 EOS90D 150mm F5 1/4s ISO400
この場所からはフェアリングのデカールを間近かつ正面で撮影可能だ。
ALOS-4/だいち4号 600mmの超望遠画像をトリミング。
私は道路わきに三脚を立てて望遠レンズを向ける。フェアリングのデカールが試験機2号機の「RTF」ではないのを見て、「このロケットは3号機なんだなあ」と感慨にふける。
この場所には私以外にも多くの見学者が来ており、みんなスマホやカメラをロケットに向けていた。すると私のそばで女性が「えっ岡田さん!?」と驚きの声を上げた。
まさかと思いつつ声のする方を見ると、なんとH3ロケットの前プロマネの岡田さんがいらっしゃった!なんでここに?聞くと「この後飛んでっちゃうロケットだから」と。機体移動の現場は撮影NGなので、中型射点へ続く坂道まで撮りに来たそうだ。
岡田さんはスマホをロケットに向けるが、ブレて上手く撮れない様子。すると岡田さんは私に「ちょっと三脚借りていい?」と聞いてきた。私が快諾すると、岡田さんは私の三脚にスマホを保持し、H3ロケット3号機(H3F3)を撮影した。
あの岡田さんが、私の三脚でロケットを撮っているなんて!嬉しくもドキドキしました。岡田さんは壁を感じない、フレンドリーな方だなあとつくづく思うひと時でした。
それにしても、「この後飛んでっちゃうロケットだから」の言葉に私はハッとなりました。私にはその認識が抜けていたことに自分で驚きました。眼前にあるあのH3ロケット3号機は、打ち上がってしまえば、もう2度と、見ることはできない。きっと、あのH3F3にとって、これが最後の夜なのだな。
③第4光学入口
21:56 第4光学入口 EOS90D 76mm F5.6 1/25s ISO5000
21:58 第4光学入口 EOS90D 283mm F5.6 1/25s ISO5000
④竹崎射点
22:20 竹崎射点 EOS90D 500mm F6.3 1/8s ISO5000
風が強すぎる
竹崎射点は海岸に近いため、海風が容赦なく吹き付ける。望遠レンズが風で揺れて揺れて撮れたもんじゃない。(シャッター速度を1/25に、ISOを10000にすれば撮れる。一応)気象状況にもよるが、夜の撮影には向かない場所といえる。
なおこれまで紹介した撮影場所①~④は全てロケットから3km圏内にあるので、打ち上げ時には例外なく立ち入り禁止になります。
⑤南種子町上里
23:07 南種子町上里 EOS90D 600mm F6.3 1/6s ISO800
こちらも風が強く、カメラが揺れて撮るのが大変でした。粘りに粘って撮れた執念の1枚です。
「H3ロケット 3号機 2024/6/30 23:07」(トリミング・微修正後)
この後は長谷展望公園に車を停めて車中泊。広い駐車場には車中泊勢の車が10数台止まっている。
今日は病み上がりの身体に鞭をうった。やりたいことができて満足だが、正直なところ、命を削ったかもしれないとも思う。
明日は打ち上げ。どうか打ち上がってくれますように。
次回「天光高らかに」